アニメに敗けた甲子園

 「邪神ちゃんドロップキック」というアニメをご存じでしょうか。三期を作るために、クラウドファンディングを実施したところ、丸一日で目標額の2,000万をクリアして、最終的には3,600万余りを集めたそうです。

 返礼品もデータ化された歌や台本、描きおろしイラスト、エンドロール記載、サブタイトル命名権など工夫を凝らしていて、「好きな人だったら、お金を出すだろうな」と納得します。

 ここからが本題。高野連も無観客になった夏の甲子園の運営費を捻出すべく、クラウドファンディングを実施していますが、開始三日間(7/30時点)で、達成額(1億円)の2%に当たる270万余りしか集まっていません。そう、甲子園はアニメに敗けたのです。

 まず、高野連の返礼品ショボいんですよね。感謝のお手紙(おそらく高野連の職員が直筆ではなくワードで作るんでしょうね)とクラウドファンディングのページに参加者の名前を書くだけ。これでクラウドファンディングに参加する人がいるんでしょうか?

 来年以降有観客開催になったときは試合チケットの送付、今夏の甲子園出場校のタオル、ボール、キーホルダーなどのグッズ、甲子園の土、江川から根尾、藤原、吉田輝星までの甲子園レジェンドのサインなどを着ければ、かなり参加者が増えると思うのですが。

 これはアニメの制作会社は「資金がないとアニメは作れない。魅力的な返礼品を用意しないと、誰もクラウドファンディングに参加しない」という危機感があるのに対して、高野連は「甲子園は日本のスポーツ文化の象徴なのだから、黙っていても目標額は達成できる」という殿様商売なのだろうとしか思えません。

 だからスポーツに文化という言葉を使うのが大嫌いなのです。文化という言葉を用いると、「いざとなったら国や企業が助けてくれる」という根拠なき楽観論を持つので、詰まれて初めて「あのとき動けばよかった」と思うからです。プロアマ問わず、スポーツを行うにはお金が必要で、どう資金を稼ぐか?を考えた方がいいでしょう。

 話を戻すと、過去の文藝春秋に鷲田康の「DAZNが高額な放映権料を高野連に提示したが、高野連が断った」という記事を読んだことがあります。あのときDAZNの契約を受けておけば、クラウドファンディングに頼ることはなかったのにと残念な気持ちになるというか、ブラックジョークとしても笑えないですね。

 その記事には高校野球関係者が「DAZNと契約したら、弱小校に道具を送ったり、指導者を派遣するなどして、競技振興ができたのに」と悔しく思っていたらしいです。競技振興もですが、天災、疫病などの有事に備えることもできたと思うと、高野連の判断には虚しささえ感じます。

 とにかく、高野連はアニメに甲子園が敗けたという現実を受け止めて、返礼品に工夫を施したらいかがでしょうか。

 余談ですが、「邪神ちゃんドロップキック」は健気でかわいいぺこらが好きです(笑)

 

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