学歴論
日本で生きる以上、学歴という論点から逃れることはできません。
学歴はありとあらゆるマウントで使えますし就職転職の際も重要な指標になってきます。
ビジネス・プライベート限らず初対面の人の学歴はどうしても気になってしまうのではないでしょうか。
しかし、人々は「学歴とは何か?」「学歴が高いということは何を意味するか?」ということをなかなかあまり考えたりはしません。
学歴に関しては下記のようなことが一般に言われていますが、どれも解像度が低く一概に正しい正しくないは言い切れません。
「学歴が高いのと頭が良いのとは違う」
「学歴が高い奴が仕事できるとは限らない」
「いつまでも学歴について語るな」
直感では、どれも半分正しく半分間違いなような気がします。
本稿では、学歴が高いとはどういうことか?を明らかにした上で、上記のような言説が正しいかどうか、検証していきたいと思います。
私自身、東大出身ですので、多くの高学歴な人たちを見てきましたので、その知見も踏まえて語りたいと思います。
なお、本稿でいう学歴とは、どちらかというと学校歴を指します。
グローバルな文脈では、学歴とは高卒 or 大学卒 or 大学院卒というようなものを指しますが、
一般に日本国内で学歴というと、東大卒 or 東工大卒 or 早慶卒 or MARCH卒というような学校歴を指すかと思います。
ここは日本ですので、本稿では後者の方の定義で語りたいと思います。
学歴が高いとは(総論)
学歴が高い人、低い人は脳の中身が違う、というのは異論はないでしょう。
しかし、脳の中身と言ってもさまざまな機能を持っているので、機能別に細かく見ていく必要があります。
ここではPC の機能に例えると非常に分かりやすいかと思います。
人間の脳は下記のように機能別に定義できるのではないでしょうか。
それでは、上記の定義に照らし合わせて、高学歴の人の脳はどんな特徴を持っているでしょうか。
結論から言うと、私の解は下記の通りです。
それぞれ詳細を見ていきましょう。
高学歴の人の脳の特徴
CPU:処理速度(頭の回転の速さ)
大学にはよりますが難易度の高い大学の入試問題において求められるのはまず情報処理能力です。
難関大学の入試問題では、単位時間当たりにどれほどの情報量を処理できるが問われます。
難関大学では国語・数学・英語・理科・社会全ての科目において時間内で解ききることが非常に困難です。
東大を例に取ってみると、
英語では合格者の中でも全部時終わらない人がいますし、
数学では難易度の高い大問が出題され、時間内に正しい解法を用いて複雑怪奇な問題を構造化して煩雑な計算を処理するのは困難です。合格者の中でも時間内に終わる人は少ないです。
(東大の入試問題を見たことがない人は一度見てみてそして実際に解いてみるかといいと思います)
これらの入試を突破するには脳の処理速度(CPU)が重要です。
1問1問じっくり時間をかけて解いている暇はありません。
入試本番では与えられた問題を素早く処理する能力が求められています。
したがって、このような入試を突破してきた高学歴の人は、そうでない人よりも優れたCPUを持っているということができると思います。
OS:思考回路
次に、難易度の高い入試で問われるのが論理的思考能力です。
難関大学の問題は、教科書に載っているような典型問題は少なく、一捻り蓋ひねりもしたような応用問題が出題されます。
(なお、応用問題ほど物事の基本的な原理原則がわかっていないといけないので、教科書に掲載されている内容の深い理解が必要だったりします)。
なお、論理的思考能力というと仰々しく聞こえてしまうかもしれませんが、
私の理解では、論理的思考能力とは単に物事の因果関係を正しく把握する力(というより習慣)だと思っています。
事象Aと事象Bがあった場合、それらの関係は4種類しかありません。
A=B(AはBの必要十分条件である)
AならばB(AはBの十分条件であるが、必要条件ではない)
BならばA(AはBの十分条件ではないが、必要条件である)
AとBは全く関係ない(AはBの必要条件ではないし、十分条件でもない)
この4種類しかないので、
問題で与えられた複数の事象を上記のどれに当てはまるのか考えながら、論理構造を展開していくだけです。
(このように書くと非常に単純なのですが、意外とこれを実践できる人間は少ないので、入試によってその能力が問われることとなります。)
これが問われるのは主に理系科目(特に数学)ですが、難関大学だと社会系の科目でも問われます。
難関大学の入試突破にはこの論理的思考能力が必要なので、
高学歴な人の脳は、論理的思考能力を搭載しているということができるでしょう。
ストレージ:脳の容量
高学歴の入試問題は膨大な量の知識量が問われます。
東大を例にとると、文系だと、共通テストの受験科目数が8、個別試験の科目数が4となっています。
これだけの分量を学び、試験本番まで長期期多くとして蓄えなければならないので、並大抵の脳の容量では合格することができません。
社会人になってからも、高学歴の人の方が、知見・知識の量が多いと感じることがよくあります。
単純に勉強量が多いということもあるかもしれませんが、一度見た・聞いた内容を長期的に保管しておく能力に長けている人が多いように感じます。
おしなべて高学歴の人は脳の容量が大きいということができるでしょう。
RAM(メモリ):タスクの同時並行処理能力
次にRAM(メモリ)です。 これは複数のタスクを同時並行処理する能力を指します。
この能力は大抵の入試問題ではほぼ全く問われません。基本的に入試問題は目の前の問題を1問1問解いていけば良いものです。
このため、高学歴の人はこの能力が優れているわけではありません。むしろ、他の人に比べてこの能力は劣っている傾向にある気もします。
おそらく、目の前の一つの物事に集中する力とトレードオフなのでしょう。
このRAM(メモリ)については、「学歴が高い奴が仕事できるとは限らない」の論点に大きく関わってきますので、後半部分で詳細を書きます。
アプリケーション:スキル・知識(脳にインストールされているもの)
次に、アプリケーションです。
これまでは脳のハードウェアとしての性能を見てきました。
これまで述べてきたように、高学歴の人は脳のハードウェア性能はかなり高い傾向にあります。
一方で、ソフトウェア(脳にインストールされているスキル・知識)の方は全体的に他の人と比べて高いわけではないです。
高校までの教育要領の内容は他の人より高いですが、それはたかが知れています。ちょっと歴史上の人物の名前を多く知っているとかその程度です。
しかし、優れたハードウェアを持っているので、高学歴の人は大学生・社会人になってから何か新しいものを学んだときの吸収力は凄まじいです。
また、弁護士資格・会計士資格等、大学入学後に受ける人が多い試験において高学歴が無双している理由はそもそもハードウェアが優れているからです。
あくまでも、大学入学時点では周りの人と比べて多くのアプリケーションがインストールされているわけではないですが、その後の学習によって知識・スキルの定着度は高いと思います。
バッテリー:脳の体力
最後にバッテリーです。脳をどれほど長い時間稼働させられるか、についての指標です。
これについては、高学歴の人は、
起きている時間は脳の稼働時間が長い
ただし、起きている時間は短い傾向がある(睡眠時間が長い傾向にある)
という傾向があるように思います。
とにかく集中力が高いので、受験期の勉強時間は長いです
(だから大学受験に成功して高学歴になったのです)。
私は脳の体力があんまりなくて受験勉強期も1.5時間に10分程度の休憩をとっていましたが、体力のある人は10時間ぶっ続け(昼食以外)で勉強していた友人もいました。
一方で、人にはよりますが、傾向としては睡眠時間が長い人が多い気がします。
学んだことを脳に定着させるために睡眠を多くとっているのだと思います。
学歴について言われている言説の検証
ここで、冒頭で述べた学歴について言われているいくつかの言説について検証してみましょう。
「学歴が高いのと頭が良いのとは違う」
これについては、「頭が良い」の定義を考えないといけないですね。
これまで述べてきたように、高学歴の人は脳の一部の機能が優れています。
なので、脳の機能が優れていることを「頭が良い」と定義するのであれば、この言説は一部正しいですね。
「学歴が高い奴が仕事できるとは限らない」
RAM(メモリ)のところで述べましたが、難関大学では複数タスクを同時に処理する能力を問われているわけではないので、RAM(メモリ)は高学歴の人はあまり優れていません(むしろ劣っている傾向があります)。
したがって、複数のタスクを同時並行処理しないと行けない仕事では高学歴は仕事ができない傾向があると思います。事務職などがこれに該当すると思います。
大企業に入った人が若手の時に経験する事務職の仕事は苦手かもしれません。
大企業に入ったものの、最初の段階でつまづく高学歴の人は多いです。
一方で、社会人としての経験値を積めば積むほど高学歴は有利になってくる(仕事ができるようになってくる)傾向があると思います。
もちろん職種や業界にもよりますが、どんな仕事でもある程度経験を積むごとに自分の専門性・スキルが磨かれていきます。
そのため、だんだんと(複数ではなく)単一のタスクを品質高くこなす能力が重要になってきます。
専門性・スキル(ソフトウェア)を身につけて活用するには、高性能のハードウェアを持っていることが大事です。
上記で述べたように優れたCPUやOSを持っている高学歴が有利となるのです。
大企業に入った人も、最初は多くのタスクを同時並行処理する仕事がメインになりがちですが、年次が上がるにつれてスキル・知識を身につけて専門的な仕事をやるようになるので、そうなればむしろ仕事ができる人材に変わっていくと思います。
「いつまでも学歴について語るな」
これまで述べたように、高学歴は脳の一部の機能が優秀です。
そして、この脳の機能の優秀さが直結するような仕事などでは、一定程度のポテンシャルを測る上で有効な指標になっていると思います。
例えば、私は、同僚やクライアントと初めて知り合った時、学歴がわかっていれば、それを考慮に入れて話をします。
高学歴はOSが論理的思考能力で動いてるのでそれなりにロジカルな話が通じるでしょうし、RAMは優れていないでしょうからマルチタスクの優秀さはあまり期待しません。
しかし、もちろんこれは初対面〜最初の数ヶ月程度に有効な指標であり、その後は日頃の接点などでその人となりがわかってくるものです。
最初の段階だけ人をフィルタリングするための指標として使うイメージです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
高学歴の人の特徴について脳の機能別に記述しました。
ここまでの分解して語っている論説はあまりないのではないでしょうか。
皆さんの今後のご参考になれば幸いです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?