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忘病記 第四章 平日の眼科と女医さん

平日の山を拓いた新興住宅街の古びたショッピングモールの一角にある眼科の待合室は年配の患者で賑わっていた。
壁掛けのテレビの画面はワイドショーのコメンテーターが深刻な顔で何か喋っていた。

ランニング中に発症した眼瞼下垂は、しばらくは治まっていたが、数日経つとまた再発して、この時は左眼は半分以上閉じた状態だった。

早く、診察を終えて、目薬でも処方されて、お昼は妻とどこかで平日ランチでもするか。
そんな事を考えていた。
恐らく、コロナ禍で好き勝手に走り回って、疲れが目に来ただけだろう。
そうたかを括っていた。

しかし、診察室で対峙した妙齢の女医さんは俺のそんな甘い予想を打ち砕いた。

ひとしきり何やら検査をしたあと、告げられた一言。
「これは目の病気では無いかもしれません。あくまで可能性ですが、、脳の病気、、脳腫瘍か、それとも重症筋無力症かも知れません。」
何?脳腫瘍??
それと、、なんとかむりょくしょう??
なんやねんそのオドロオドロしい病名は?

近くの市民病院に紹介状を書きますので、そこで診てもらってください、という女医さんの言葉もうわの空で、まるで呪文のようにその聞き慣れない病名を頭の中で繰り返していた。

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