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【NYSE】イェクスト、ネット情報 最大の弱点克服

イェクスト【NYSE:YEXT】はインターネット上の情報を正確な一次情報にするサービスを提供する企業です。

吉野家もクライアント

国内では吉野家がクライアントになっています。吉野家の牛丼は中国人観光客に人気があります。旅行に来た中国人は百度という検索エンジンのマップで吉野家の場所を調べるわけですが、すべての店舗が正確にマップ上に登録されているわけではありませんでした。イェクストのサービスを使うことで、吉野家は百度のマップ上に店舗の正確な位置情報を掲載できるようになったのです。

インターネット検索とは便利なものですが、正確な情報ばかりではありません。イェクストの調査によれば、ネット上では企業名は37%が誤りなのだそうです。また住所の誤記載率は43%、電話番号は18%。そもそも存在していない企業の情報が15%あるそうです。誤った情報や古い情報が掲載されているのがインターネットです。生活の最も重要なインフラの一つとなったインターネットですが「正確性」は最後に残された最大の弱点と言えます。

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検索結果に自社の正確な情報

この弱点を克服するのがイェクストといえます。ここに、この会社の中長期的な成長の可能性を私は感じます。イェクストはGoogleや百度など検索サイトから、フェイスブックなどのSNS、イェルプなどグルメサイトまで、あらゆる情報サイトとパートナーシップ関係にあります。吉野家などイェクストのクライアントは、ワンストップでこうした情報サイトに自社の正確な情報を載せることができます。

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飲食店の開店時間をネットで調べて訪れると閉まっていて腹が立った経験のある人も多いのではないでしょうか。情報が正確でないことで、客を取り逃がすだけでなく、その企業のブランド価値を毀損する結果にすらなります。また、ネットで開店時間などを調べてからわざわざ電話で直接店舗に問い合わせる方もいるのではないでしょうか。

イェクストのハワード・ラーマンCEOは2020年3月に開かれた電話による決算カンファレンスで、米ネット銀行BBVA社の例を挙げています。5万のATMや600の支店に関する正確な情報がインターネットに載っているため「カスタマーサポートに対する電話が減り、コストを抑えられたほか、顧客の満足度も上がった」と述べています。

アマゾン・エコーの応答は「正確な1つの答え」

今後は音声検索の需要が高まってきます。「Smart Speaker Consumer Adoption Report 2018」によれば、米国ではアマゾン・エコーやグーグル・ホームなどスマートスピーカーの普及率がすでに20%近くに達しているようで、今後さらに普及するとのことです。調査会社IHSマーキットによると、インドに至っては普及率は20%をわずかながら超えているそうです(ただし調査対象は英語を話すインド人のみ)。

「ハーイ、アレクサ」と質問した時、アレクサは1つの答えしか返しません。1つの正しい答えが求められる時代がやってきているのです。これは文字検索も一緒で、たとえばグーグルでどこかの会社の社名を検索すると、パソコンの右側に四角く囲われたスペースが出てきて、そこには電話番号や住所が載っています。だらだらと並んだ検索結果を見るのではなく、このスペースで住所などをチェックする方も多いのではないでしょうか。当然このスペースに正確な情報を提供するのも、イェクストのサービスの1つです。

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イェクストのクライアントはアディダスからマクドナルド、エールフランス航空まで一流企業がずらりと並んでいます。日本では吉野家のほか、三井住友銀行や丸亀製麺などがクライアントになっています。日本は正確性に対するニーズが強いのか、イェクストは日本でビジネスを拡大することを表明しています。虎ノ門ヒルズに入居し、今後100人規模を雇うと発表しています。

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「40%ルール」には届かず

2020年1月期の売上高は2億9883万ドルと前期比30%増加。粗利率は74%と、IT起業らしく高い水準ですが、営業損益はまだ赤字です。また、営業キャッシュフローも赤字です。赤字のSaaS企業の評価基準として広く使われている「40%ルール」からは漏れてしまいます。すなわち「売上高の増加率+売上高フリーキャッシュフロー・マージン」が40%以上であれば投資に値する企業であるという基準には達していません。しかし、顧客が幅広く拡大していることも確かです。

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時価総額は14億ドル(1500億円)ほどとまだ小粒です。しかし、ビジネスモデルのユニークさや、インターネットの弱点を埋める企業として、マルチバガーを期待する投資家も少なくありません。

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