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【NASDAQ】マッチ、巨大マッチングアプリ株の潜在力

マッチングアプリで知り合って結婚したという人が珍しくなくなりました。日本ではPairsが有名ですが、世界でメジャーなのはTinderです。アプリで出会うという新しい習慣が世界で普及期にあり、そのデファクトスタンダードとなりつつあるのがTinderであることは、多くの人が同意するのではないかと思います。運営会社のマッチ・グループ【NASDAQ:MTCH】はTinderのほか高齢者向けマッチングアプリなども運営していて、売上高のCAGR(平均成長率)は20%、営業利益のそれは28%と、成長を続けています。

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米国の出会いの場はオンラインがトップ

電話番号などで本人確認をして、本人の写真付きで登録するマッチングアプリは、かつてのような怪しい雰囲気がありません。運営会社も様々な安全策を講じ、「アプリによる出会い」の爆発的な普及につながっています。米スタンフォード大学の研究"How Couples Meet and Stay Together 2017"によれば、すでに米国では男女の出会いの場のトップはオンラインです。

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日本でもマッチングアプリをやっている人は男女ともに珍しくなくなりました。あらかじめ登録した趣味や嗜好、スペックが合致する人と出会えるため、効率的と考える人も多いようです。生物誕生以来続いてきた男女の出会いは、まさに過去最大の変化の渦中にあり、その変化の中心にいる企業には大きなビジネスチャンスがあるように思えます。

日本で人気の高いマッチングアプリPairs(ペアーズ)は2019年に200万弱のダウンロード数で、前年比44%増でした。Tinderも150万弱と、Pairsには届かないものの、前年比では53%と、激しく追い上げています。実はPairsは2015年にマッチ・グループに買収されているので、PairsもTinderもマッチ・グループのアプリです。2つを合わせると日本国内で圧倒的なシェアを占めます。

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同業買収で時価総額2兆円の巨大企業に

マッチ・グループは自らが手薄な地域については、同業の買収により一気に市場の主導権を握る戦略で、190か国40言語以上に展開する巨大マッチングアプリ企業になっています。時価総額はおよそ2兆円。2019年5月には「日本・台湾」「インド」「韓国・東南アジア」の3エリアに統括責任者を置き「アジアの4億人のシングル市場」で成長を目指すと表明しています。

マッチ・グループのマッチングアプリの利用者は約1000万人に上ります。そのうち、およそ600万人をTinderが占めています。一般にマッチングアプリは利用者数が多い方がマッチングしやすくなるため、普通に考えると大手に利用者が集約される可能性が高いと思います。Tinderも、たくさんの利用者が新規利用者を呼ぶという好循環に入っているかもしれません。2019年10月~12月には利用者が北米で前年同期比9%、北米以外で30%、全体では19%伸びています。

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課金方式は米国企業らしく秀逸で、「いいね」やメッセージを送ったり、自分が検索上位に表示されるようにするのに課金されるほか、たとえば自分が「いいね」した異性にのみ、自分の写真などのプロフィールが見られるようなシークレット設定にするのに課金されます。こうしたサイトに登録していることが知人にばれるのが嫌な人もいるでしょうから、上手な課金ですね。

PLは綺麗でBSは不格好

2019年10~12月期の売上高は5.47億ドル。その半分を北米、残り半分を他の地域から稼ぎ、収益源は地域的に分散されています。営業利益は安定成長期に入っていて、前年同期比19%増の1.8億ドルでした。フリーキャッシュフローは2019年の年間ベースで6.2億ドルの黒字と、現金のインフローも潤沢です。売上高の成長を優先し赤字を続けるというIT企業にありがちな初期の局面は脱していると言えるでしょう。

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ただし買収を繰り返しているため、負債の額が資本の4倍もあり、バランスシートは少し見た目が悪い。PLは綺麗でBSは不格好という、典型的なM&A成長型企業の財務状況です。返済原資はPLでしっかり稼いでいるので、問題はないと思います。利用者数が最も重要な参入障壁であるというマッチングアプリの性質上、М&Aで「利用者を買う」というのは正統な戦略ではないでしょうか。

米国市場では、新型コロナウイルスが同社の業績を押し下げるのではないかと言われていますが、むしろ家の中でマッチングアプリに精を出す若者が増えるのではないかと私は思います。

S&P採用も

マッチ・グループは現在インターネット企業IAC (NASDAQ:IAC)傘下です。2020年の4月~5月には独立する予定と親子両社が発表しています(2019年12月19日)。81%の株式を握るIACが、IAC株主にマッチ株を割り当てるとのことです。これにより期待されるのはマッチ・グループのS&P500への採用。採用基準は「時価総額53億ドル以上」「浮動株比率が50%以上」「4半期連続で黒字」の3つですので、いずれもクリアしていますね。もし採用されれば、指数買いの対象になるなど、需給面の改善に期待が持てますが、どうなるか。PERは36倍と、高成長企業にしてはそれほど高くない水準に入っているように感じます。



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