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短編まとめ

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#短編小説

【短編】獣頭症の治しかた

私は、愚かだった。無知でどうしようもなく馬鹿だった。ただ幼かった。幼さ故の持て余し気味の…

Uさん
2年前
2

【短編】泳ぐ理性

 金はあればあるだけ良いらしい。 そうだな、とも思うし、そうかな、とも思う。それが事実か…

Uさん
2年前
3

【短編】旧宇宙エレベーターに乗ってみた

 宇宙エレベーターが閉鎖される記事は新聞の片隅にひっそりと載っただけだった。  それより…

Uさん
3年前
1

【短編】宇宙展望デッキより

 さすがに今回ばかりは男が最低だと、春子はなんのためらいもなく思った。 『俺、三半規管が…

Uさん
3年前
1

【短編】宇宙感

 金を貯めたら、宇宙旅行に行こうと決めていた。  今やエレベーターで宇宙へ行ける時代だ。…

Uさん
3年前
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【短編】白い箱

 地元を出るとき、母と祖母が言っていた。お金は貸さないこと、ハンコはむやみに押さないこと…

Uさん
4年前
2

【短編】飛ばなくなった熱帯魚

 空中熱帯魚の泳ぐ姿を「飛ぶ」と最初に表現したのは、誰だっただろうか。  泳いでいるのか飛んでいるのか、どちらの表現が好きかと聞かれれば「飛ぶ」方だ。でも今はどちらでも構わない。  私の空中熱帯魚は、もう飛ぶことも泳ぐこともない。  寿命だと皆は言った。思ったより長く生きたじゃないかと。空中熱帯魚にしては。  つい癖で上を向いてあの優美な空色のひれを探すが見当たるはずもない。  こちらがどれだけ可愛がろうと世話をしようと当然懐くこともなかった。人間と同じ思考で生きていたと

【短編】獣頭症の見えた過去

 目に入る情報は常に更新され、それも凄まじいスピードで更新されている。  いつでも世界と…

Uさん
4年前
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【短編】獣頭症の見えない未来

 ある日突然、体の一部が動物化する奇病。主にその症状は首から上に出るため、一般に「獣頭症…

Uさん
4年前
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【短編】熱帯魚の消費期限

 熱帯魚を買った。それも、空中熱帯魚だ。 品種改良が進み、今では延びた寿命もやはり短命と…

Uさん
4年前

【短編】妖精飛蚊症B

妖精飛蚊症 五十万人に一人が発症する奇病。 それを知ったのは十二のときだった。 「しかし、…

Uさん
4年前

【短編】妖精飛翔症

 十三のときに、突然私の視界は幸せに満ち溢れた。  降り注ぐ太陽光は優しく笑い、鮮やかに…

Uさん
4年前

【短編】本日はあめ

 東京に来て五日目の朝。初めて飴が降った。最近の天気予報はえらいもので、昨日の予報通り。…

Uさん
4年前

【短編】空中熱帯魚

「へえ、最近の熱帯魚って飛ぶんですね」  空中をまるで水槽の中みたいに浮遊する熱帯魚を見ながらつい漏らしてしまった。  しかし、店員は言われ慣れているのだろう。 「最近出た新種なんですよ。この辺で扱ってるのはまだうちだけです」  と応えた。  値段を見ると一匹、七万八千円。ゼロの数を数え間違えたかと目を凝らすが、そんな客の反応にも店員は慣れているようだった。 「いやでも、他の熱帯魚は水槽やポンプ、電気代なんかも掛かる訳じゃないですか。長い目で見ると空中熱帯魚の方がお得