見出し画像

「太陽電池のさらなる高効率化のために新素材を探索」研究室紹介Vol.5

名古屋大学大学院2年生の大河内君に研究についてインタビューをしました。

「新素材!シリコンナノシートの作製」

<研究テーマ>
「太陽電池応用に向けたシリコンナノシートに関する研究」

現在、結晶シリコン太陽電池の中で最も変換効率の良いのは、水素化アモルファスSiと結晶Siといった異なる種類のシリコンを組み合わせた太陽電池であると言われています。
しかし、アモルファスSiの光の吸収量が多く、結晶Si(光吸収層)に届く光量が減ることによるエネルギー損失や、水素化アモルファスSiと結晶Si のへテロ界面の価電子帯に存在するポテンシャル障壁により光生成した正孔の移動を妨げることによるエネルギー損失があります。(下図)

そこでエネルギー損失を解決するため、アモルファスSiに代わる材料となりうる「シリコンナノシート(SiNS)薄膜」に関して研究を行うことにしました。

「2つの成膜方法の特徴に着目して、最良の成膜方法を探る」

このSiNS薄膜は、二ケイ化カルシウム(CaSi2)薄膜と塩酸を反応させることにより生成できます。
CaSi2薄膜は、簡便で大規模展開可能な真空蒸着法によりシリコン基板上に成膜することが可能です。しかし、量産向きではないが高品質な膜を得られるMBE法よりも膜質が劣ることが課題となっています。

膜質改善のためには、不純物や欠陥の減少が重要であると考えました。
真空蒸着法において変えることのできるパラメータとして「シリコン基板温度」「原料加熱電流」「原料の量」などがあります。その中で最も不純物や欠陥に影響しそうな「シリコン基板温度」に着目し実験に取り組みました。
実験を進める中で、原料加熱電流が以前の実験条件では作製できない問題がおこりました。
しかし、CaSi2薄膜の層構造が原因と突き止め原料加熱電流を調整することで、塩酸との反応後に水素終端したシリコンナノシート層を作製することに成功しました。

今後は太陽電池応用に向け、作製したシリコンナノシート層の電気的・光学的特性の評価を進めることによって、太陽電池に最適なシリコンナノシート作製に向けた研究をしたいと考えています。

「納得いく就活ができたのは、困ったときに相談できる環境だったから」

研究室の魅力は、優秀な学生が多いので自分も研究成果をしっかり出そうという前向きな気持ちになれるところだと思います。
また、就職活動でも仲間に支えられることが多くありました。
私は修士1年の7月頃に就活を始めて、メーカーを中心に活動しました。行き詰まることもありましたが、困ったときに相談できる仲間が多かったため、相談しながら活動した結果3月に承諾となりました。
自分がやりたいと考えていた仕事内容に出会うことができ、納得いくまで取り組むことができました。

<研究実績>
2023年11月 材料フォーラムTOKAI(愛知)
2024年7月 次世代の太陽光発電システム シンポジウム(広島)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?