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🇫🇮 等身大のフィンランドvol.3 春を待つ

人生の半分近くを雪国で生まれ育った私にとって、東京の春は忙しなくやってきます。今年は特に桜の開花が例年よりも早かったので、気持ちが追いつかないまま、この記事を準備している間に花は盛りを迎えました。

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雪国の春は静かに、ゆっくりと始まります。その冬最後の雪を見送っても、灯油ストーブを物置にしまうのはもう少し暖かくなってから、東京が新緑の季節を迎えるころになってようやく、私の故郷では、ぽつりぽつりと桜が花開きます。

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情報が容易く消費され、善悪じゃなくて損得で誰かの何かがはかられる時代に、桜の季節を見送る寂しさをうまく消化できず、なんとなく、世の中から置いてけぼりにされた焦りを感じていたときに、ふと谷川俊太郎さんの「朝のリレー」という詩を思い出しました。


花びらが散ったから終わりじゃなくて、どこかに春がリレーされる。そんな風に考えたら気持ちが楽になったし、私の走路はスピードや効率を競うものではなくて、ゆっくりと時間をかけて消化した気持ちや物事を未来に繋ぐものでもいいと思えるようになりました。

昨日はフィンランドで暮らす友人から、庭一面に積もった雪景色の写真が送られてきました。厳冬期の終わりが見えてきて言葉の端々に見え隠れする心の余裕が、私の気持ちまで明るく照らしてくれて、はやくバトンを繋ぎたいとすら思えます。

等身大のフィンランド第3回のテーマは「春になったらやりたいこと」。胸を弾ませ、春を待つ、5人の声をお届けします。


オリエンテーリング / suunnistus


ヒンメリづくりが得意なヴィルピさんは、外で体を動かすことも好きで、オリエンテーリングの季節を心待ちにしています。

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ヴィルピさん:
私が暮らすフィンランド南西部の町では、雪解けとともにオリエンテーリングのシーズンが始まります。オリエンテーリングとは、地図とコンパスをもって、森の中に隠されたチケットを探す「森のスポーツ」です。 この季節、森は素晴らしい匂いがします、まだ蚊やメクラアブが姿を現さないので、思いっきり深呼吸を楽しめます。


2月の終わりに、ヴィルピさんは自宅の庭を覆う真っ白な雪の中からひょっこり顔を出したスノードロップを見つけました。先週は、昨年5月に鉢植えしたセントポーリアの蕾がついに花開いたと声を弾ませました。

ハイキング / patikkaretki


旅行が趣味のサイックさん。先日、パートナーの誕生日をお祝いするために、フィンエアーのバーチャルフライトを楽しんだそうです。彼女のSNSには日本のお菓子やキャラクターグッズが度々登場します。安心して往来できるようになったら、また日本にも旅行にいらしてくださいね。

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サイックさん:
こちらはまだ雪がたくさん残っていますが、 春はまもなくやってくるでしょう。そしたら、自然のなかをハイキングして、お弁当を食べるのが楽しみです。群島や海沿いの町がいちばんのお気に入りで、よくそのあたりの森へハイキングに出かけます。いつか大きな庭を手に入れて、桜の木を植えることを夢見ています。

アイスフィッシング / Pilkkiminen


フィンランドと日本にルーツをもつマッティさんは、フィンランド語のフレーズや文化をオリジナルコンテンツ「Moi Suomi」を通して伝えています。冬のアクティビティとして、アイスフィッシングの体験動画を紹介してくれました。七十二候にも「魚氷にあがる」とあるように、太陽の日差しで川面の氷が薄くなる雪解けの季節こそがベストシーズンのようです。

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マッティさん:
暖かくなったらアイスフィッシングに行きます。この季節には、川にパーチがやってきます。パーチは食用としても人気の白身魚でとっても美味しいんですよ。釣りは何が釣れるかわからないことが楽しいです。まだ雪が残っている時期はそり / pulkka があると荷物の運搬に便利です。

愛犬と川岸をジョギング / lenkkeilyä koiran kanssa Kymijoen rannassa

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リーサさん:
雪が溶けてむき出しになった地面のあちらこちらから、クロッカスが芽吹く季節はとても素晴らしいです。草木がゆっくりと成長して、鳥はさえずり、 白夜に向かって陽が伸びます。やりたいことがたくさんありますが、まずは庭を夏の状態にして、愛犬と一緒にキュミ川でジョギングします。 川岸の景色が本当に美しいんです。

リーサさんが暮らすミュッリュコスキはフィンランド南東部に位置し、フィンランドで最も大きな河川の一つキュミ川のほとりにあります。私もこの町で暮らす友人を訪ねたことがありますが、真夏の太陽が反射してキラキラ光る川面の美しさが印象的な場所でした。リーサさんや愛犬のイータくんにもいつかお会いしたいです。

春の奇跡 / kevään ihme


最後にご紹介するマイレさんは、ご自宅の庭に日本の桜を植えています。ある日、私が投稿した桜の写真にこんなコメントを残してくれました。

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マイレさん:
私の庭の桜は日本からやってきました。その枝をリビングにも飾っています。春の奇跡が咲いています。




春の奇跡はまもなく東京を出発し、北の国へと向かいます。新学期や新生活で気負ってしまう場面があるかもしれませんが、そういうときこそ Hidasta elämää!うららかな季節をひねもすのんびりと過ごしましょう。

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