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漫画で古典!

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平安時代の古典文学とそれにまつわるアレコレを漫画と記事で紹介します^ ^
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記事一覧

【漫画】『枕草子』ってどんな話? ー 定子の最期と清少納言が残したかったもの ー

辛く悲しいことには触れず、中宮(のち皇后)定子さまとの華やかな日々を描いた『枕草子』。当然、定子の最期の瞬間は記されてはおらず、亡くなる7ヶ月前の端午の節句について書いた「三条の宮におはします頃」という章段が最後の姿となっています。 この頃定子は、一条天皇との3人目の子・媄子を妊娠中(長保2年(西暦1000)年の2月、長男・敦康親王の百日の儀のために参内しているので、そのとき身籠ったのでしょう)。 この章段で清少納言が「籬越しに」と言って”青ざし“を出したのは、つわりで食の

七夕の夜は水面に星を映して ー 平安時代の七夕と男女を結ぶカササギの羽根 ー

7月7日は七夕の日。いまでは願い事を書いた短冊を笹に吊るすのが一般的ですが、昔の人々はどのようにこの日を過ごしたのでしょう。 今回はいつもの古典シリーズの番外編として七夕についてお話ししたいと思います。 日本の七夕の由来 ー 三つの行事が合わさった 七夕、七夕と言いますが、そもそもなぜ「七夕」と書いて「たなばた」と読むのでしょうか。 その理由は諸説あるうようですが、日本の七夕は、中国の乞巧奠と日本の棚機が合わさってできたためと言われています。 乞巧奠は、女性達が機織りや

【漫画】『枕草子』ってどんな話? ー 雪山の賭けと定子の復帰 ー

内裏を退出してから1年後、中宮職の御曹司に住むこととなった定子。 中宮職の御曹司というのは中宮に関わる公務を司る役所のことで、内裏の外・大内裏の内にありました。長徳の変で髪を落とした定子は、倫理的・政治宗教的な理由で内裏に戻ることが許されず、不安定な立場に置かれます。 史実では夫である一条天皇も定子のもとに通うことはなかったようで…公卿たちから厳しい批判があったのでしょう。 しかしそのような中でも定子サロンは華やかさ保ちつづけ、ある”賭け“を始めました。その様子を描いた「

【漫画】『源氏物語』ってどんな話? ー 唐物に囲まれた醜女・末摘花 ー

長く垂れた鼻先が赤いことから”末摘花”と呼ばれたこの女性。 『源氏物語』随一の醜女として有名ですが、実際どんな人なのでしょう? 醜女で不器量だった末摘花 『源氏物語』では登場人物の要望が詳細に書かれていることがあまりないのですが、末摘花に関してはかなり詳しく描写されています。 第6帖「末摘花」より該当部分を抜き出してみましょう。 源氏は、前年に夕顔を亡くして以来、「どうかしてたいそうな身分のない女で、可憐で、そして世間的にあまり恥ずかしくもないような恋人を見つけたい」と

【漫画】“外国“が舞台の平安文学 ー 『うつほ物語』ってどんな話? ー

かな文字が広がり、多くの物語が生まれた平安時代。 唐との正式な外交がなくなったこの時期に生まれた日本の風土や感性を重視する文化を「国風文化」といいますが、その頃にも外国を舞台とする物語がありました。 そのうち最も古く、『源氏物語』にも影響を与えたと言われているのが『うつほ物語』です。 “うつほ“で育った貴族の秘琴伝授の物語 『うつほ物語』は親子4代にわたる秘琴伝授の物語。3代目にあたる藤原仲忠を主人公とし、貴族の求婚譚や皇位継承をめぐる対立を絡めながら話が進んでいきます。

【漫画】清少納言ってどんな人!? ー 長徳の変と里居の悩み…安定か夫か、定子さまか!?ー

996(長徳2)年の1月に始まった「長徳の変」は、関白・藤原道隆亡きあと勢いの衰えていた中関白家の没落を決定づけるものでした。 道隆の娘で、清少納言の主人でもある中宮・藤原定子は、兄弟たちが地方に左遷されたことで後見を失い、宮中で孤立。自身も内裏を退出し、謹慎生活を送ります。 敬愛する定子の危機に清少納言はどうしていたかというと…自宅にこもり長期の里居に入っていたのです! その理由について『枕草子』の「殿などのおはしまさで後」では次のように書かれています。 一種のいじめ

【漫画】『枕草子』ってどんな話? ー 辛い事実を隠して明るく! 長徳の変と藤原斉信出世の秘密 ー

千年前に清少納言によって書かれた随筆『枕草子』。その内容を聞かれたとき、悲劇的なことが描かれていると答える人はいないでしょう。読んだことのある方もない方も『枕草子』に対し明るく雅なイメージを抱いているのでははないでしょうか。 実際その通りで、『枕草子』には基本的に暗いことは書かれておりません。 清少納言の描く後宮はいつも明るい笑いと華やかさであふれており、主人である藤原定子が一条天皇と仲睦まじく微笑む姿が印象的です。 世の無常や生きることの難しさなどを「あはれ」の感覚で描い

【漫画】『枕草子』ってどんな話? ー 猫、あてなるもの、香炉峰の雪 ー

清少納言の随筆『枕草子』。「春はあけぼの…」以外にはどんなことが書いてあるのでしょう? 清少納言の『枕草子』は中学・高校の古文の授業で必ず取り上げられる教材です。 「春はあけぼの…」が有名ですが、『枕草子』全体の内容は季節や自然にとどまりません。風物、風習、人物スケッチ、生活風景、宮中の日々、天皇や中宮、殿上人・公卿らとの交流等々、実に多くの人々が登場し様々なことが描かれています。 まだ“随筆“というジャンルのなかった時代に、清少納言が思いのままにつづった文章の集合体が『

【漫画】清少納言、慣れない職場での狼狽ぶり ー 平安時代の女房の仕事 ー

大河ドラマ『光る君へ』では、清少納言を演じるファーストサマーウイカさんがイメージにぴったりと話題になってますね。 『枕草子』を読んだことのない方でも、清少納言に対しては「明るく社交的でセンスが良いけど、ちょっと勝気で気が強い人」というイメージを持っているのではないでしょうか。 ところがそんな清少納言も、新人の頃はうまくいかないことだらけだったようで、その様子はまるで別人かと思うほど。 今回はそんな彼女のエピソードを紹介しつつ、平安時代の女房の仕事についてお話したいと思います

【漫画】定子の清少納言と彰子の紫式部 ー 2人の中宮と女房の関係 ー

なにかと比較される清少納言と紫式部。しかしそれは当時の時代背景によるものだったのかもしれません。 清少納言と紫式部はともに平安時代を代表する作家で、同時代に生きた人物です。どちらも中流階級の出身で結婚・出産経験もあり、女房として中宮に仕えていた…と共通点も多いのですが、出仕の時期は異なり、互いに面識はなかっただろうと言われています。 にも関わらず、紫式部は『紫式部日記』に清少納言に対するかなり辛辣な批評を残しています。それは何故なのか、当時の時代背景を見てみましょう。

【漫画】平安時代の結婚て? ー 『蜻蛉日記』にみる妻、妾から召人まで ー

平安時代は一夫多妻の妻問婚。 実際女性たちはどのように“正妻“となるのでしょうか? 諸説ありますが、どうも平安貴族の“正妻“は、結婚当初から決められたものではなく、そのときどきの関係性の中で「正妻になっていく」もののようなのです。 結婚の順番や儀式の有無、身分の釣り合い、子どもの存在など、“正妻“となるのに有利な条件は多々ありますが、それが絶対というわけではなかったようで…。 『 蜻蛉日記』を例に当時の婚姻関係をみてみましょう。 『蜻蛉日記』にみる“道綱母の"正妻“への

【漫画】『源氏物語』ってどんな話? ー 夕顔の物語における源氏の悲しみと紫式部の皮肉 ー

古典シリーズ第7弾!『源氏物語』より夕顔のお話です。 このとき夕顔の暮らしていた五条のあたりは庶民が暮らす下町風の町で、身分の高い源氏にとっては物珍しいところです。 源氏は、その住まいから判断して夕顔を「下の品の女だろう」と思うのですが、素性を隠し、牛車も使わず、わざと粗末な格好をしてまで彼女のもとに通い続けます。 夕顔を「自分にふさわしくない身分の女だ」と考え世間の目を気にしながら、それでも彼女を自宅に迎えようと考えるほど、この“非日常の恋“にはまってしまう。その様子は

【漫画】『源氏物語』ってどんな話? ー 空蝉の物語にひそむ催馬楽の意味 ー

世界最古の長編小説『源氏物語』。今回は着物を脱いで源氏から逃れたことで有名な、空蝉の物語の紹介です。 なんとも評価し難い源氏の行為ですが…この「空蝉の物語」、最近読み返して驚いたことがありました。 それは、人妻の略奪とも言えるこの行為が源氏の単独犯ではなく、紀伊守との共謀の中で行われたのでは、ということです。 このあたりの解釈は、物語内の歌をどう読む解くかということも絡んでいて、現代語訳を読むだけではちょっと気づけない箇所なのですが…とても興味深いので詳しく紹介していきた

【漫画】『源氏物語』ってどんな話? ー 「雨夜の品定め」にみる紫式部の2つの“仕掛け“ ー

知れば知るほどおもしろい『源氏物語』。今回は有名な「雨夜の品定め」についてのお話です。 「雨夜の品定め」は『源氏物語』の第2帖「帚木」のエピソードなのですが…これがとってもおもしろい!4人の男性たちの会話が活き活きとしていて、それぞれのキャラクターが際立ちます。 会話の中で女性観、結婚観、恋愛体験談などが語られるのですが、「完璧な女などいない」「深く嫉妬せず、ちょっとヤキモチ妬いてくれるくらいがいい」「賢すぎる女を妻にするもんじゃない」といった内容は現代でもありそうな「都合