明日が始まるとき(詩集『季節の手のひら』より)

明日が始まるとき


夕焼けで 街が絵本に色づく頃
オレンジ色の雲は 早足で仕事をしていて
明日を果実にしようと 忙しい


日給七千円で
ワーキング・プアーをやっている僕は
手に夕日で熟れた金貨はないけれど

ふと 夕焼けが運んできた
絵本を 手にする
そして
「遠くまで行くんだ」と 
君につぶやく


  *


星空がやって来て
やがて宇宙が 呼吸をはじめ
やっとそこで 本当の呼吸が始まる
  ☆
無重力に解き放たれ
膝を抱えて 月の軌道を
クルクルと回転しながら
メルクリウスの碧い金属の涙を流す
決して凍らない涙
 
 
自分の涙のために
舌の剣で 屈辱を組織するのではなく
明日のために 
出来ることを探そう
(愛を組織しなければならない)


  *


『あの頃は 僕らが夏だった』
そう言える 日々のために


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