太陽が降る、あの南の空へ

あの日、気付いたら高知県にいた。

逃げ出したかった、現実から。
どこでもよかった、ここでさえなければ。

人生に疲れ果て、思うようにならない体を引きずるようにして、高知まで来たのに太平洋も見ないで、ホテルのベッドの上に死んだように横になった。

翌日、高知駅前の観光案内施設で高速バスの出発時刻を待つようにぼんやり座っていた私に、声をかける人がいた。

その声に導かれるようにして見たステージ。南国の青空の下でキラキラと輝く歌とダンス、笑顔。
高知の観光PR隊によるステージだった。その日までまったく存在を知らなかった彼らに、私は完全に心を掴まれてしまった。

太陽が心に落ちる。突然に、偶然に。

あの日生まれたささやかな夢。
もう一度、高知へ行こう。

あれから数年。ステージを再び見る夢は叶わなかったけど、夏の瀬戸大橋を、私は友人の車で渡る。夢にまで見た、途立つ日。私の心に太陽をくれた、あの高知へ。

#旅する日本語 #途立つ

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