カット、コピー、ペースト、アンドゥをX,C,V,Zに割り当てたのは誰なのか
結論から言うとこれはLarry Teslerだそうなのですが、C=Copyはわかるにしろ、XとVがなぜCutとPasteに結びつくのか疑問に感じていました。Zもよくわかりません。これについて、都市伝説的に語られている言説にはこのようなものがあります。
これは間違いですが、それらしくも聞こえます。
カーネギーメロン大学のBrad Myers教授によると、XCVZの4種類のコマンドとキーアサインは、Larry Tesler本人によるものだそうです。彼はTeslerのメールメッセージを引用する形で次のように紹介しています。
びっくりして叫びそうになったのですが、Xは日本でいう「バツ」のような意味合いだったと読み取れるので、Apple Lisaの時代にはすでに米国でも削除をバツで表す習慣があったことが伺えます。VはGypsy以前のテキストエディタ(おそらくBravo)の挿入記号に似ているから、ペーストも本質的には挿入なのでそれを使おう(しかもCの隣で都合が良い)、と発想したことも興味深いです。Zは冒頭の都市伝説で挙げたスイッチ説とわりかし近かったですね。
XCVZのテキスト編集四人衆は同じ文脈でLarry Teslerが決めたシンボルだったんだ……。
“Origins of the Apple Human Interface”
LisaやMacのインターフェイス設計を語るLarry Teslerの講演動画資料。(sumimさん共有ありがとうございます☺️)
ちなみに件のメールではZ=Undoについてはこうも書かれています。
BravoとはXerox Altoに搭載された最初のWYSIWYGテキストエディタです。開発に関わったCharles Simonyiという人が後にMicrosoftに移籍し、Microsoft WordやExcelを開発しました。ちなみにハンガリアン記法の由来になったその人だそうです。Larry Teslerが関わったGypsyテキストエディタはBravoの後継です。
そういえばAdobe系の一部のアプリケーションでRedoコマンドにY (Mac: ⌘Y / Win: ^Y) が割り当てられているのは、この辺りの歴史が関係しているのでしょうか。
また、件のメールには「『^ZはXerox PARCのプログラマーがアサインした』というNY Timesの記事(Wikipediaにも引用されている)は間違いである」との指摘もあります。
それからVのシンボルがキャレットの逆向きという逸話について、実際にBravoのデモを見ると、確かに挿入モードのキャレット「^」を確認できます。逆さまにするとVにも見えますね。
デモの登壇に立っている左の人物がCharles Simonyiです。
こういうその時々の発想がその後数十年にわたって広く使われるデザインのイディオムとして定着する(そして流派も派生していく)のは、本当に面白いことですね。
最後にDouglas EngelbartのMother of All Demosも貼っておきましょう。
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