先生教えて!何で0では割れないの?
0で割ることはできません。
こんな計算のルールを小学校の算数で教えてもらったことを、ぼんやりと覚えている方も多いのではないでしょうか。
では、もしテストで次のような問題が出てきたら、あなたは何と答えますか。
10÷0=
はじめまして!民間企業を経て、私立高校で数学教師をしているうさぎ先生(@usagi_teacher)と申します。この夏から全国の先生や数学好きの方と繋がりたくてTwitterを始めてみました。どうぞよろしくお願いします!
さてさて、話を本題に戻します。
本日は、算数・数学の世界で大切なルールとされる「0で割ることはできない」というルールについて、皆さんと一緒に吟味していきたいと思います。
ここでは生徒やお子さんから「なぜ0で割ることはできないの?」という質問をされたとき、ズバッと答えられる直感的な回答を小学生向けと中学生向けに分けて解説していこうと思います。
小学生に0で割れない理由を聞かれたら
小学生に「なぜ0で割ることはできないの?」と聞かれたときは、次のように聞き返してみてはいかがでしょうか。
0×( )=10 の ( ) に入る数は何だろう?
さて、この質問の答えは何でしょうか。
はい、その答えは・・・
そんな数はない!
です。
この質問をすることで、0に何かをかけて10になる数が存在しないことが分かってもらえると思います。
そして、このことが理解できれば、10を0で割った答えも存在しないということにもつながっていきます。
もう少し詳しく解説していきます。
まず大切なことは、わり算という演算は、かけ算と表裏の関係であるということです。
どういうことかというと、「 6÷2= 」という問題は「6は2の何倍ですか?」ということを問うており、これに答えるためには「2を3倍すると10になる」という考え方(これはかけ算の考え方)が必要になります。
このように、わり算はかけ算と対応している演算になっています。
つまり、冒頭の問題「10÷0=?」は、「0を何倍したら10になるの?」という質問と同じことを聞いていることになります
同じことを聞いている質問でも小学生の多くは、わり算で考えるよりもかけ算で考えることを得意としている児童が多いため、このように、問題をかけ算の世界に変換しなおしてあげることで、0で割ると答えが無くなってしまうという感覚に触れることができます。
つまり、冒頭の問題
10÷0=
に対する答えも
そんな数はない!
ということになるため、「0で割ることはできない」という計算のルールを定めたわけです。
中学生に0で割れない理由を聞かれたら
小学生の段階では「0で割った答えが存在しない」ことを"感覚的"に訴えたわけですが、中学生の知識を使えば「0で割った答えが存在しない」ということを"視覚的"に捉えることができるようになります。
もし、中学生の生徒やお子さんに「なぜ0で割ることはできないの?」と聞かれたときは、次のように答えてみてはいかがでしょうか。
反比例のグラフで変数 x に 0 を代入するとどうなる?
中学1年生では反比例のグラフを描けるようになります。
そして、その反比例のグラフにおいて、変数 x に 0 を代入するということが、まさに0で割ることを考えることになります。
ここで、変数 x に 0 を代入するということは x を 0 に近付けていくと捉え、反比例のグラフを眺めてみると何か気付くことはありませんか。
そうです。x を 0 に近付けていくときに
右から近付くのか、左から近付くのかでグラフは違う方向に進んでいる
ということに気付きます。
反比例のグラフで x を右側から0に近付けていくと、どんどん大きな数(+∞)になっていき、左側から0に近付けていくと、どんどん小さな数(-∞)になっていくことがグラフから視覚的に確認できます。
左右のどちらから近付いていくかによって到達する場所が違う(すごく大きな数とすごく小さな数)わけですから、ここで聞かれている質問
反比例のグラフで変数 x に 0 を代入するとどうなる?
に対して、1つの数で答えることができないことが分かってもらえるはずです。
以上が、中学生の生徒やお子さんに「なぜ0で割ることはできないの?」と聞かれたときに、グラフというツールを使って"視覚的"に示した説明方法になります。
中学生になると小学生では扱わない関数という世界が広がっていきます。
中学生は、関数を用いることで様々な現象を視覚的に捉えることができるようになるため、非常に便利です。
関数の重要性を認識させるためにも、0で割ることについて取り上げてみてはいかがでしょうか。
高校生に0で割れない理由を聞かれたら
ここまで「0で割ることができない理由」について、小学生には"感覚的"に、中学生には"視覚的"に説明してきました。
これが高校生になるといよいよ"数式的"に説明することができるようになります。
高校数学では、数学Ⅱの微分積分で「極限」という概念を扱います。そして、数学Ⅲでは「右極限・左極限」という内容に発展します。
この考え方を用いることで、先ほどの中学生への説明が数式として示すことができます。
数学Ⅲでは、値が存在する定義(数学的な決めごと)として、この右極限と左極限が一致しなければならないことを学びます。
この右極限と左極限を用いて、先ほどの反比例のグラフで変数 x に 0 を代入した値を計算してみると次のようになります。
つまり、右側から0に近付いていった値と左側から0に近付いていった値が異なるため、0で割った数は存在しないということになるわけです。
算数・数学は面白い!
ここまで長々と「0で割ること」について解説をしてきました。
私ならこう教えるという教え方をここでは紹介してきましたが、まだまだ数学のことを勉強中の新米教師ですので、「もっとこんな教え方があるよ!」とか「この考え方間違っているよ!」などがあれば、ぜひぜひ教えてください。
この記事を読み終えてくださった方は余程根気がある方か、算数(数学)が好きな方でしょうか。
そうでなくても、この記事を読んで少しでも算数や数学は面白い世界だと感じてくれた方がいたらこれほど嬉しいことはありません。
数学ができるようになると、素晴らしい世界が待っていることを私は仕事上痛感してきました。
数学ができる人の職業は、決して学者や教師だけではありません。
数学力を磨いていくことで、きっと仕事の幅は広がり、仕事をすることを楽しめるようになるかもしれません。
そして、もし、このような質問をしてきた生徒やお子さんがいたらぜひとも褒めてあげてください。すごく数学的なセンスがあります!
最後になりますが、民間企業で働く中で感じた「数学の実用性」と、高校教師として伝えたい「数学の面白さ」を融合した数学の授業をこれからもこうしてnoteを通じて発信していけたらいいなと思っています。
ということで、本日の授業はこれで終わり!