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【AI小説】 猫  第2話

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休日の昼下がり。特にすることもないので、部屋でぼんやりとしていた。
外では子供たちの声が聞こえる。
アパートの錆びた窓を開けると気持ちの良い空気が流れ込んできた。
ベランダに出て大きく深呼吸をする。

雲一つない青空を見上げていると、なんだか無性に泣きたくなってきた。
こんな生活を続けていて良いのだろうか。

月曜から金曜まで働いて、土日はぐったり家で寝ている。
休日の予定は溜まった洗濯物とスマホ代など各種請求書に目を通すくらい。
スマホでおもしろ動画を見ていると、あっという間に日曜の深夜だ。
月曜からその繰り返し。

『80歳まで生きるとしても人生はたったの4000週間しか無い』
と誰かが言っていた。

僕はもう既に30代も半ば。
定年まであと1500週間ほど働いて、800週間余生を楽しんだら天に召される、と言ったところか。
結婚もしていないし、当然子どももいない。

畳に寝転がって思い返せば、
僕は幼少期から「主体性」と言う言葉に無縁だった。
なんとなく親や周りの言う通り、自分の学力で行ける高校、大学に進学した。
これといってやりたい事も得意な科目もないけど、
なんとなく就職の幅が広そうな商学部に進んだ。
幸い就職氷河期直前だったので、親の縁故で一部上場企業の経理部に就職出来た。
メーカーだから給与は安いし都内の本社勤務ではないけど、
名刺を見せれば、同年代の女の子達が喜んで寄ってきた。
でも、別に何かすごく大恋愛や大失恋をしたという訳ではなく
この歳まで一生一緒に暮らしたいと思える人に出会えなかった。

ヘビースモーカーだった父は2年前に喉頭癌で亡くなり、
その直後、母親はアルツハイマー型認知症を煩い、60代半ばとまだ比較的若いのに会話不可能になった。
今は施設で生活している。
トイレに行くことすら出来ない母の介護をめぐってふたりの姉妹と揉めに揉めたが、結局僕が父の墓の管理と母の介護などの責任者になった。

サラリーマンでありながら不動産バブルで成功して1億円近くあった父の遺産は、
それぞれ子供のいる姉妹が子供達の幼稚園受験やらマイホームの購入やら
何かしら理由をつけては認知症の母の口座から引き出してほとんど使ってしまい、今は400万円ほどしか残っていない。

母があと20年ほど生きるとしたら、施設の入居費用等がこんな金額で足りるわけがない。
強欲な姉と妹に「お前らが母さんの介護費用払えよ、金を使い込んだんだから当然だろう。」と
ガツンと一言言うなり、弁護士に相談するなり、何かアクションを起こせたらいいのだが、
流されやすい自分にそんな波風を立てる行動を取る勇気はなかった。

今日が人生で一番若い日、とも誰かが言った。
何かを変えないといけないのだ。それはわかっている。
80歳で僕がこの世を去るときは、きっとため息をつきながらこう思うだろう。
「つまらない人生だったなぁ。」

自分をどうにかして変えないといけないと言うことは、他ならぬ僕が一番わかっている。

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