殺しの左腕(さわん)にマリッジリング
「ああ!畜生!何でこんな目に!」
地下駐車場。ガトリングの弾を浴び、背中を預けるコンクリート柱は端からじわじわと削られていく。
「おじさまがスケベだからじゃないかしら」
「まだ20代だ!畜生!写真じゃボインだったのに!騙された!」
家出少女の助けてメッセージ(ボインの写真付き!)を受けて、親切にも車で迎えに来たらこのザマだ。待っていたのは身なりはいいが貧相な少女とガトリングガン。車はとっくにお釈迦になった。
柱が3割ほど痩せたところでが弾丸の雨が止む。
「おい!誰だか知らねえがその女を寄越しな!俺の結婚相手だぜ!」
重サイバネ巨漢が叫ぶ。
「痴話喧嘩か?俺を巻き込むな」
「違います。私と、この家宝の指輪に賞金がかけられているんです。報酬は私との結婚」
「誰がそんな」
「父です。ヌオヴォ・ノストラのボス」
「よし、お前を引き渡そう」
地球で最大勢力のマフィアだ。これっぽっちも関わりたくない。
「その場合、私あの方のお嫁さんになってしまいますが」
「……」
「構いませんか?」
「……」
苦虫をダース単位で嚙み潰し、少女と野蛮なガトリング野郎を交互に見る。
BLAM!
……BLATATATATATA!
俺の撃った9mmは重装甲にあっけなく弾かれ、嵐のような銃撃が再開。
「俺が紳士なばっかりに畜生!」
「ふふ、そういうところは変わりませんね」
「あ?」
少女は微笑み、答えの代わりに持っていたトランクを開いて見せた。
中身はクロームに輝くサイバネアーム。
「お前、それ」
「懐かしいでしょう?生憎、左腕だけなのですけど」
BLATATATATA!
「ぎゃっ!!」
拳銃を握った男の左腕を吹き飛ばし、ガトリング巨漢は射撃を止める。
観念したのか、少女が姿を現した。歩み寄る。手が届くまであと一歩。
柱の影から、男が飛び出した。
男の左腕はクロームに輝くサイバネアーム。
その指は揃ってピンと伸び、ガトリング巨漢へ向かっていく。
指先が重装甲に触れ、
砕き、
貫いた。
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