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『殺しの左腕にマリッジリング』-3- I Feel Pretty

<<<前回<<<

(前回のあらすじ)
イオリ:左腕がクロームに輝くサイバネアームの男。必殺の貫手で襲撃してきたガトリング巨漢を返り討ちにした。外れない指輪のせいでアンジェと結婚することになりそう。
アンジェ:マフィアボスの娘。家出中。彼女と彼女が持ち出した指輪を連れ戻した相手と結婚することになっている。イオリを連れ帰りたいらしい。

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ガトリング巨漢の死亡から10分後、イオリはアンジェを連れて路地を辿っていた。
一緒にアンジェの実家、シチリア島まで行くかどうかはさておき、戦闘のあった現場からは早々に立ち去るべきだという点で意見が一致したからだ。
だが、イオリの足取りは重い。
「どうしたんですか?早く行きましょう」
「いや、なんか脚の調子が……」
「……そんなに私と一緒なのが不満なのでしょうか」
「そうじゃねえんだ。マジで脚がな、あ」
バキン!という破壊音とともに、イオリは右膝をついた。

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「中身がガタガタです。よくここまで歩けましたね」
イオリは路地のビル壁にもたれ、サイバネ化された両脚を投げ出していた。
その外装を開けて中身をチェックしているのはアンジェだ。
隣に広げられたトランクには、工具一式が詰まっている。
「貫手のときだろうな。1発でこれか。こいつも安物じゃねえんだが……やっぱりそこらのサイバネじゃ耐えきれねえか」
「?左腕で撃ったのに脚が壊れるんですか?」
「ああいうのは全身を使うもんなんだ。踏ん張らなきゃパンチは打てねえだろ?」
特に今は左腕が特別製だ。左腕が壊れない分、反動が脚に来たのだろう。
「そういうものですか」
分かったような分からないような顔で頷いて、アンジェは脚のチェックと応急処置に戻る。

カチャ……カチャ……
「……」
「……」
カチャ……カチャ……

「あの」
顔を上げないまま、アンジェが沈黙を破る。
「何だ」
「その、ですね。左腕の調子はどうでしょうか。動きがおかしいとか、接続部の違和感とか」
「あ?ああ、そういや久しぶりに付けたってのに全然違和感ねえな」
そう言ってイオリは左腕を肩からぐるんと回す。
「よく整備されてるし、接続もいい調子だ。あんな短時間で換装したってのにな。いい腕してるぜ」
「そうですか。それは良かったです」
アンジェはそっけなくそれだけ言うと、脚の応急処置に戻る。
終始顔を伏せたままで表情は伺えないが、イオリから見えるアンジェの耳は赤らんでいた。
(褒められて照れてる?)
アンジェが現れてから、イオリはロクな目にあっていない。その上さらに面倒に付き合わせるつもりでいる。
なのに、だ。
(畜生。それはずるくないか?)

>>> 続く>>>


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