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『殺しの左腕にマリッジリング』-2-君が僕を見つけた日

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(これまでのあらすじ)
男:家出少女と出会ったらガトリング重サイバネ巨漢に襲われた。左腕をクローム色のサイバネアームに換装し反撃に出た。
家出少女:地球最大マフィアボスの娘。持ち出した家宝の指輪とともに賞金がかけられており、揃って連れ帰った相手と結婚させられる。男にクローム色のサイバネアームを持ってきた。
ガトリング巨漢:家出少女を狙って襲撃。男の反撃を受ける。

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柱の影から、男が飛び出す。

男の左腕はクロームに輝くサイバネアーム。
その指は揃ってピンと伸び、ガトリング巨漢へ向かっていく。

指先が重装甲に触れ、

砕き、

貫いた。

「ガフッ!」
「まだ息があんのか。タフだな。いや、俺が鈍ったか」
「そのクローム腕…!この貫手の破壊力!てめえムサシだな!生きてやがったか!」
「その名前で呼ぶんじゃねえよ。今はイオリだ」
ムサシと呼ばれた男の目が不機嫌に細まり、ガトリング巨漢に刺さったままの左腕をさらに捻じ込み、
「覚えなくていいけどな」
引き抜いた。致命的部位を破壊されたガトリング巨漢は内側から爆発し、死亡した。

「お疲れ様でした、イオリ」
少女が笑顔で近づいてくる。白を基調に青を配した優美なワンピースは、この騒動の中でも一切の汚れがない。よほど高級なコーティングが施してあるのだろう。
「お前」
「アンジェリカ。アンジェと呼んでいいですよ」
「ああ、うん、アンジェ」
イオリは疲れた声を絞り出す。
「お前、もう指輪持って帰れ。何がしてえのか知らねえが、このまま家出を続ければどうなるか、これで分かったろ?」
「ええ、そうします。どうなるか、とてもよく分かりましたから」
そう言ってアンジェはイオリの左腕と手を繋ぐ。
「おい、話聞いてたか?なんで手繋ぐ?」
アンジェはにっこり笑ってイオリの左手を持ち上げる。その薬指には優美な指輪がはまっていた。
「は!?指輪なんで!?あっ畜生!取れねえ!え!?本当に取れねえ!?どうなってんだこれ!」
アンジェの手を振りほどき、イオリは指輪と格闘するが、外れる気配はまるでない。
「イオリの言うとおり、指輪と一緒に帰ることにします。怖い人が来ても、あなたがちゃんと守ってくれるということがよく分かりましたから」
「おい待て。つまり……俺が?お前と指輪と一緒に?お前んちへ?」
それは、はたから見ると俺が娘と指輪を連れ戻したってことになるんじゃないのか?つまり……
イオリの混乱した思考を読んだかのように、アンジェは自分の左手にきらめくもう片方の指輪を見せつけ、笑顔で宣言した。
「さあ、一緒に参りましょう、未来の旦那様 」

>>>続く>>>


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