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平日休み1日じゅう水族館で過ごすーおでかけがしたい。⑥ー

知名度のわりに観光名所が少ない事を自虐ネタにされている地元・名古屋。その中の貴重な定番人気スポット名古屋港水族館。

平日休みに朝から閉館まで水族館をひとりでぶらぶら。

今回はそんなお話。

午前、無敵のツートンカラー。

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北館入口のお姉さんに切符を見せ、インフォメーションを抜ける。右手には大きな水槽。海藻も小魚も見当たらないがらんとしたマリンブルーの空間に、突然ぬっと現れたのは巨大な白と黒のツートンカラー。名古屋港水族館の人気者、シャチである。
しばらく呆然と眺めるが、人が多いので、またあとで来よう。

隣はイルカ。
ドルフィンキックでスーッと潜り、目を閉じ、お腹を上にして気持ちよさそうに泳いでいる。上昇して水面近くをターンすると再び底の方へスーッ…。この動きが延々と、リラックスミュージックのように目の前で流れ続ける。

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向かいのやや暗い水槽には、ふわふわのベルーガがいた。

シロイルカともよばれるらしいが、フォルムも動きも先ほどのイルカ(バンドウイルカ)とはだいぶ違う。鑑賞者の前を華麗に通り過ぎるイルカに対し、脂肪で覆われているというベルーガのずんぐりした体は、水槽に接近するたびボヨンッと柔らかくぶつかる。
シルエットだけならむしろトド寄り。
しかしこのもったり感が、たまらなく可愛い。

♪ベイビーバルーガ・イン・ザ・ディープブルーシ~♪

ベルーガを見続けていたら脳内にこの曲が流れてきた。なんだっけと思い出してみると、『フルハウス』でミシェルがうたっていた歌だ。しかし、ん?「バルーガたん、びょうきなの?」というミシェルのセリフまではっきり記憶してるのに、あれが本当に「べ」ルーガと同一のものだったかが思い出せずモヤモヤした。(後日検索し、発音の違いだと判明。)

閑話休題。

シャチの公開トレーニングに合わせて野外スタジアムへ出た。

気温はまだ上がりきっていないが猛烈に喉が渇く。なのに売店で誘惑に負け、「ソフトクリームとたこ焼きと、カルピス」という喉が渇きまくるメニューを頼んでしまった。両手に抱え、スタジアムの後ろのほうの席で食べ始める。
足元では鳩たちがビールの売り子のように、信頼度100%の距離で人に近づいては「残飯、いただきましょうか?」の顔で見つめてくる。平日なので会場は3割ほどしか埋まっていない。

水族館にシャチは現在、3頭いるそう。
まず紹介されたのがアース。その次がステラ。

「ステラは35歳の立派なメスのシャチです!」

と元気な飼育員さんのアナウンスが響き、ステラが自分と同い年だと知る。ちなみにもう1頭いるリンはステラの子ども。

ああ、何度見てもシャチはやっぱりカッコイイ。

くっきりした配色。つるりとした体。大きいんだけれどクジラほどではない「収まりのいいギリギリの大きさ」がなんとも絶妙。私にとって動物園のパンダのような特別感がシャチにはある。

トレーニングが終わる頃にはだいぶ気温もあがってきた。スタジアムを抜ける風が涼しい。


午後、水族館も博物館なり。

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スタジアムから南館に移動。

連絡通路を抜けた先で地味に展開していた『まったなしのプラスチック問題』という企画展を観る。そういえば先ほど飲んだカルピスも、紙ストローだった。

大学時代に博物館学の授業で習い初めて知った「博物館」の範囲によると、日常的には「美術館」「博物館」と単独で呼んでいるが、実は美術館も水族館も動物園もすべて「博物館」の一種に含まれる。資料収集・保存、調査研究、展示、教育普及といった活動を一体的に行う施設である。(文化庁ウェブサイトより)
従って水族館で働く一部の人たちも「学芸員」なのである。そうした目線で見ると、水族館の中もさまざまな「展示」の工夫で満ちている。

死んでる…?と疑うほど全く動かないオオグソクムシ(巨大ダンゴムシみたいなルックス)には捕食の映像が添えてあったり、水圧がどれくらい物体に影響するかをカップ麺の容器で比較したり。
大きな水槽のカラフルな魚たちが何かに群がっているな、と近寄るとなんと野菜を食べていた。海藻を食べる魚への代用らしい。
面白い。

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深海エリアに入るとぐっと照明も暗くなる。

青光りする水槽に、ぼわ~っと不気味に浮かび上がる魚の標本。全身が白ちゃけてまるでミイラのよう。通路のカーブでいきなり現れる、昔の潜水服を着た等身大人形も知っているのに毎回ビビる。
解説を読むと、この潜水服はなんとレオナルド・ダ・ヴィンチの絵からヒントを得て発明されたとあった。今まで何度も見てるのに今日初めて知った。

美術館でもそうだが、解説を真面目にぜんぶ読む必要はない。自分が興味をひかれた時だけ、深堀して楽しめば良いと思う。


夕方、閉館までおかわりタイム。

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施設内をゆっくり一周見終わり、少し疲れたので再入館スタンプ(特殊ライトで光る透明な)を手の甲に押しいちど外へ出た。

程よく所帯じみていて心地よいJETTY(飲食、土産物館)を経由し、キャッツカフェというレストランに入る。斜め前のテーブルの女子高生は、ボリュームのあるハンバーグランチのあと名物ジョッキパフェ(中ジョッキに入った巨大パフェ)に挑戦していてちょっと羨ましかったが、先ほどのたこ焼きでまだお腹いっぱいな30代の私は、キャラメルマキアートの珈琲で我慢する。文庫本を読みしばし休憩。

閉館まであと1時間半。再入場してもう一度、気になる水槽を巡る。

まずは南館で先ほど見つけたコンゴウフグに会いに行く。すごく変わった見た目。黄色く、4センチくらいの小さな箱形。魚なのに、角や足や尻尾のようなものがある。素早くひゅんひゅん動くこの子をなんとか写真におさめようと、私としたことがデジカメに集中しすぎて画面酔いした。

気になったので後日調べたら、角や尻尾に見えたのは棘だった。名前は古代インドの法具・金剛杵(こんごうしょ・ヴァジュラ)に見た目が似ていることが由来だそう。
ヴァジュラ…。

『スプリガン』(©たかしげ宙、皆川亮二/小学館)に出てたアレか…。

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夕方になっても水族館にはそこそこ人がいた。多くはカップルや、こども連れ。

先ほどは混んでいたクラゲのコーナーがすいてたので入ってみる。幻想的で「映える」感じの展示がされて、若者がこぞってスマホを構えていた。私も撮ってみたけれど、うまく写らない。やはり肉眼が確実だ。

水族館に誰かと来ると、なんとなくいつも「ペース」を合わせてしまう。
混雑する人気者はあえてサッと流したり、マニアックな水槽で長居をしてみたり。
「ほんとは閉館まで居たいけど飽きてきたろうから、そろそろカフェでも行く?って切り上げるか…」
などの気遣いも、今日はいらない。

こころゆくまでひとり水族館。

素直になるとほとんどの時間、王道のシャチ・イルカ・ベルーガのエリアをぐるぐるぐるぐる、何周でも飽きずにみるのが自分はどうやら好きらしい。

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最後はスタジアムのある屋外にふたたび出て、上のプールからイルカを眺めた。
階下から水槽に潜る姿を見た方が全体像がよく見えるけれど、水面からときどきぽこんと尾や顔を出すイルカも愛らしい。
途中、とつぜん隣にいた女性から「そのレギンス、どこのですか?」という不思議な質問をされた(「無印のです」と答えた)以外は、ずっとひとりでイルカを見ていた。

イルカはときどきショーの練習をするかのように、つぷんと潜ってからスッと尾びれを立てたり、手を振るように胸びれを水面から出したりしてプールで遊んでいる。
涼しい風が吹く。
目の前のイルカも同じ涼しさを感じているだろうか。

時計を見る。閉館10分前。

いつのまにか屋外にいるのは閉館準備をする飼育員さんばかりで、客は私ひとり。背後で待っている警備員さんの気配に気づき、
「ありがとうございました」
と足早にエスカレーターへと向かう。

JETTYで3袋1080円のえびせんべいを選んで港をあとにした。





今週もお読みいただきありがとうございました。本当は県外の水族館に行きたいなと計画しつつ、色々考えて自粛しました。自分もいちおう観光施設で働いているので外出についての思いは複雑ですが、心が少し滅入ってたので、久しぶりに行って良かったなと思います。
皆さんは夏休み、何をして過ごされますか?

◆次回予告◆
『雑事記⑥』絵になる景色、と思わず口にするほど美しい景色に出会うことがたまにあるが、実際のところ、そういう景色って「絵にならない」。果たしてその心は?(なぞかけではなく真面目な話)

それではまた、次の月曜に。


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◆今週のさんぽ猫◆
暑すぎて本物は歩いていなかったため、休憩で寄ったレストランの看板猫。



*参考:ミシェルの歌ってたうた…『Baby Beluga』/Raffi














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