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ひとりで美術館ハシゴ旅/6.青森県(後編)ーArtとTalk㊷ー

皆さんこんにちは、宇佐江です。
今回は、先週に引き続き「ひとりで美術館ハシゴ旅」第6弾、青森編の後編&旅のまとめをお送りします!
ちなみに前編はこちら↓

それでは2日目の朝を、どうぞ。


③10:00~11:00/八戸市美術館

◆開催していた主な展示『展示室の冒険』

まちなかに現れた憩いの美術館

移動⑤…ホテルから徒歩10秒(ちなみに本八戸駅からは徒歩約10分)

朝食バイキングをたらふく食べて、ゆっくりと荷造りをして、10時の開館にあわせて外に出た。泊まったホテルが美術館のほぼ隣(写真に写っている奥の茶色い建物)だったので、あっというまに到着。

現在の八戸市美術館は2021年オープンでまだピカピカの建物。ちょうど開館準備の時期に、とある縁で八戸市美術館事業に関わっている方たちとお話する機会があり「完成したら行きたいなあ」と思っていた。
しかし、ウェブサイトで歴史を調べてみれば、美術館自体は1986年オープンだった。青森県内で最初の博物館法に基づく美術館で、八戸市博物館の分館でもあったそう。2017年に一度閉館になったが、八戸市による「アートのまちづくり」推進と市民からの強い要望もあり、ふたたび八戸市に美術館が戻ってきた―という現状であるらしい。

実際に訪れると、なにもかも、従来の美術館とは少し違う考えやスタイルが織り込まれた美術館だなあと思った。開催中だった企画展も、順路をゲームで選ぶような珍しい構成だったし、地味に驚いたのが館内にある水場の数。通常、美術館で水は作品にダメージを与える恐れがあるので、手洗い場はトイレくらいしかないことが多いが、ここはオープンスペース(来館者が利用するエリア)に学校で見かけるような大きな水場や、ちょっとしたカウンターにも水道があった。
2階にあがると、街中を一望できる広いテラスがある。このテラスには外から直接来ることも出来、テーブルと椅子もたくさんあって飲食も可。他にも、誰でも無料で使えるスペース「ジャイアントルーム」では打ち合わせ、仕事、勉強、飲食、歓談などご自由にお使いくださいとある。なんて太っ腹でフリーダムな美術館だろう。美術館というより、むしろアートセンターっぽい。
美術館を親しみやすく、ではなく、「親しみやすい場所を美術館にしている」という印象を強く感じた。

ちなみに、映画『魔女の宅急便』で登場する有名な絵のモデルになった作品もこの八戸市美の所蔵。残念ながらこの日は展示されていなかったので、いつか観たいなあ…と思いつつポストカードだけ購入した。

八戸市湊中学校養護学級生徒
《虹の上をとぶ船総集編Ⅱ 星空をペガサスと牛がとんでいく》


➃12:30~15:20/十和田市現代美術館

◆開催していた主な展示『野良になる』

街にあふれるアートの発信地。

移動⑥…八戸八日町11:05発→三沢駅11:39着(バス)11:45発→官庁街通12:13着(バス)/美術館まで徒歩5分

さてここから今回の旅でいちばん不安だった、バスの乗り継ぎ。まず、バス停の位置がネットの地図では不明瞭で見当たらず(昨夜下見した時点で)ホテルのフロントで教えてもらい、当日は無事乗車できた。
三沢空港行きのバスなのだが途中の三沢駅で下車。バスあるあるで、時間よりやや遅れ気味で到着したので、次乗る予定のバスがすでに来ていて慌てて乗り換える。

ふたつめのバスを降りると、目立つ位置に美術館への矢印が出ていてほっとする。街の景色をきょろきょろしながら歩いていると、目の前を派手なバスが…

あーーーー!!!!!
飯川さん(アーティスト飯川雄大)の「ピンクの猫の小林さん」!!!
の、バス!!!?
かわいいかわいいー!!!デッ、デジカメー!!!

全く予期せぬ出会いでひとり路上で大興奮。そんな私など放置してクールに交差点を左折して、小林さん(のバス)は去った…。
あんなバスがあるんだ…良かった、会えて…。
そして桜並木の美しい大通りを歩いていくと、花柄の馬と、真っ白な美術館がみえてきた。

2008年に開館した十和田市現代美術館。「アートによる『新たな体験』を提供する」というヴィジョンがウェブサイトにも紹介されている通り、人気の常設展示エリアでは様々な、体験を伴うアートが用意されている。
詳細は行ってからのお楽しみにしていただきたいので伏せるけれど、私が一番好きだったのは《ロケーション》(ハンス・オプ・デ・ベーク)。びっくりする程真っ暗な部屋で、目が慣れたあとに見た作品の世界観に圧倒された。そして屋上へと続く階段がとてもカラフルでかわいい(これも作品)。
人気のレアンドロ・エルリッヒの大きな作品は別の入り口から。美術館全体が、探検心をくすぐられる仕掛けであふれていた。海外観光客が多いのも納得。

美術館内にある、鮮やかな内装のカフェでまったりとランチ休憩をしながらメモ帳を開き、旅をふりかえろう。

りんご入りのカレーとビーツのスープ(美味!)

移動⑦…十和田市現代美術館前15:22発→七戸十和田駅16:07着(バス)/同駅16:27発→16:43着新青森(新幹線)16:58発→青森17:04着(JR)/18:10発青森駅→青森空港18:45着(空港バス)/19:35発のフライトで名古屋へ。


青森ハシゴ旅の感想

今回の旅で大変参考にさせていただいたのが、ちょうど今、青森で開催中のAOMORI GOKANアートフェス2024「つながりのはらっぱ」(2024.4.13~9.1)。今回私が訪れた4つの美術館に、青森公立大学 国際芸術センター青森を加えた5館の連携プロジェクト。ちなみに公式でおすすめの周遊プラン(公共交通機関バージョン)がこちら↓

ただ、実際の予定と擦り合わせるとなかなかおすすめ通りは難しくて、私の場合は、このような旅となった。
個人的に優先したのが2泊は無理ということと、泊まる場所を八戸にしたかったこと。青森や十和田周辺で泊まることも考えたが観光人気の影響か、ホテルが軒並み高額なうえどこも空室なしで予定が立たず、思い切って駅からのアクセスが便利そうな八戸で予約をとった。そうすると必然的に、距離的に近い十和田の美術館とで2日目にし、1日目は弘前&青森エリアにしたという感じ。(青森空港から出ているバスも行先は弘前か青森かの2択だった)

本当は国際芸術センターも行きたかったし(当初は1日目に無理くり入れようとしていた)、八戸から十和田までの間に通過した三沢市にある、寺山修司記念館にもすっっごく行きたかったけれど、乗り継ぎの調整がどうしてもできず断念……。
青森旅の計画はとにかく、いつもよりもルート調べに時間がかかった。ネットで出てくるおすすめ経路だけでなく、自分で時刻表を調べて突き合わせていくことでよりタイムロスの少ない、美術館での時間を長くとれるプランが組めたと思うけれど、やっぱり、車で移動したらもっとスムーズだとは思う。

私は(運転が苦手なのもあるが)各美術館へアクセスできる公共交通機関が滅亡しないために、なるべく毎回交通機関を利用するようにしているのだけれど、効率優先の方はぜひレンタカーをどうぞ。

☆「ひとりで美術館ハシゴ旅」について☆

・記事の内容は宇佐江個人の主観や感想に基づくものです。公式なものとは一切関係ありません。
・タイムスケジュール優先の旅ですので、各展の適切な鑑賞時間より短い場合があります。
・美術館に関する情報は、各施設のHPや広報等を一部参考にしております。
・館内はスタッフさんに確認の上、写真撮影しております。
・情報は当時のものです。実際に行かれる際は各公共交通機関や施設の最新情報を必ずご確認ください。

(写真by宇佐江みつこ)



今週もお読みいただきありがとうございました。
大変申し訳ないことに、記事の執筆に時間がかかりすぎてまたも月曜を大幅に超えてしまいました……。ごめんなさい……(礼。。。)

1980年代~90年代に「美術館建設ラッシュ」と呼ばれる時代がありましたが、今回巡った青森の美術館はどこも(現在の建物で言うと)開館時期が2000年以降と新しいものばかりだったのが印象的でした。美術館をハコとして独立して捉えるのではなく、開放型にしてどこからも入りやすい設計にしたり、ただ作品を観賞するためだけでなく、街や人をつなぐためのアイテムとして美術館が存在するような。
実際にその軽やかで自由な空気を現地で感じることができて本当にいい旅でした。

◆次回予告◆
新連載『思い出ごはん①』特上ひつまぶしとなぞの天ぷら

それではまた、次の月曜に。



*今回訪れた施設*


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