14歳の栞 を観てきた

別のライターさんの記事で知って観に行ってきた。公開自体はもうずいぶん前みたいだけど、運よくロサで上映してたので。

ネタバレあり感想です。


























食らった。何をかわからないんだけど、観た後しんどくなった。

あの映画に出てくる彼らに対して、「可愛い」とか思えるくらいの、大人でいたかったなあと思うんだけど、そうじゃないんだな、とか。

めっちゃわかる、俺もこんな感じだったわ、って言いそうになった後で、その傲慢さに、あの頃同じように自分を理解してるような顔で同じようなことを言ってきた大人が嫌いだった自分を思い出して、自分でムカついたりとか。

名前と、部活がプロフィールのすべてだった頃に戻りたい感じと、戻りたくない感じのせめぎあいとか。

これどうやって許可取ったんだろう、公開の時期的には本人が自分で同意できる18歳まで待ったとかでもなさそうだしな、とか。

ぐるぐるといろんな感情が生まれては消えて、それでお腹いっぱいになってしまった。





デートも買い物も全部イオンで、覚えていたいことは、アイスの味と好きな子のこと。
部活終わるまでは付き合えないけど、好きな人は変わらないっていう確信。
不登校になったクラスメイトへの周囲の複雑な気持ちと、なかなか見えてこない本人の気持ち。
ただ怖い、ちょっとスベってるように見える、でも後からふと思い出すような先生たちの言葉。

よくそんなシーンを集めたなって思う。
もちろん、そういうキラキラしてる以外の時間も含めて人生は存在してるし、監督が切り取ったものを見せられてるから自然な状態ではないんだろうけど。でも、ああいうシーンを引き出して、撮影できて、公開できた監督やスタッフの能力がすごいと思った。カット割りや演出とかそういう、いわゆる撮影技術っぽい側面よりも、出演する子どもたちとスタッフの人間関係の作り方が優れていて実現した作品なんじゃないかと思わされる。

加えて、ああいうシーンがああいうシーンとして存在できるようなクラスをどうやって引きあてたんだろう、とか。恐らくあのクラスのなかに自分がいたら、嫌なことも息苦しいこともない交ぜではあるのだろけど。映画として観終えた時にはどのクラスメイトのことも好きになってしまっているようなさっぱり感があった。

そして最後の、クリープハイプの栞をバックに、歩いていく子どもたちの姿。歩き方とか、全体の動きとか。同じようでいてみんな違う。なにか煮え切らないような感じで、でもワクワクもしているような。そういう気持ちにさせられる。

恐らく、僕が一番食らっていたのは、あの頃に戻りたいとか、過去を過去として振り返ってるようなフリをして、もう間に合わないからと現在のことを全然頑張らない理由にしようとしている自分に気づいたからかもしれない。

なつかしかったねとか、そんなときもあったなとか。そうやって思い出にしてる間に何かを諦めようとしていたな、と思う。そういう怠惰な背中を、サボんなよ、と押されるような。それは作品の中の彼らから僕が勝手に受け取ったメッセージではあるんだけど、同時に過去の自分が今の自分に言いたいことのような気もして。

ものすごく良い映画だったから、二回観たいって思ったんだけど、でも、二回観たらずるいような気もした。一度きりだから輝くことが切り取られてるので、まあせっかく繰り返し観られる形になったんだから観たければ観れば良いんだけど、何て言うんだろう。そのくらい、大切にしたくなるような、僕の中でも栞にしたくなるような、すごく良い映画の体験でした。

記事で教えてくれたライターさんにも感謝。


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