とりあえず飛び込んでみよう-メイカースペースと私

前職ではファブラボという市民工房の企画運営をおこなっていました。
簡単に言えば「いろんな人が集まる図工室」みたいなもの。ノコギリや金槌といった工具だけではなく、3Dプリンタ、レーザーカッターなどの「デジタル工作機械」(コンピュータ制御されて動く工作機械)が設置されていることが大きな特徴です。そんなところに人々が集まり、モノをつくっています。

fabcross越智さんの記事を読んで、いろいろ思い出すこともあったのでメモ的に記しておきます。ここに書くのはあくまで私個人の見解であり、前に勤めていた施設の見解、あるいは他のメイカースペース、ファブ施設の方の意見の総意ではありません。ご留意ください。

こうした「メイカースペース」「ファブ施設」と呼ばれる場所は、まだまだ目新しく「どういうふうに運営しているんですか?」「これで何かできるんですか?」という疑問を持たれる方の見学や視察はとても多かったです。
見学者からのご意見やご質問から気づきを得ることもあり、有意義な時間だったと感じています。また「ファブラボという場所があることを知っていただく」ことにも十分価値があると感じていたので、ご案内を行うことはそこまで負担ではありませんでした。

私は負担というより、不安は常に感じていました。「この視察/見学は、ほんとうにこの人たちのためになっているのだろうか…?」

メイカースペースに限らず、新しいサービスを導入する際、先行する事業者にコンタクトを取り、「見学」や「視察」と称して調査するケースが多い。しかし、1時間程度の見学では、置いている機材や内装は把握できても、どのように機材が使われているか、逆に使われていないか、運営するスタッフに求められるスキル、どのようなイベントやワークショップが開催されているかなど運営面の本質は分からない。(越智岳人 / どんなメイカースペースを作る?——理想に近い場所を自ら使うことから始めよう)

ほとんどのメイカースペースは「これ」といったビジネスモデルを確立しているわけではないでしょうし、記事にも紹介されているように営利〜非営利、ビジネス〜コミュニティ〜ホビーなどあらゆる形態・目的で運営されています。また「3Dプリンタでどんなものがつくれますか?」と聞かれても、それは「はさみで何がつくれますか?」と尋ねているのと同じこと。ラボの数だけ運営形態があるし、利用者の数だけつくれるものがあって、完全にまねはできない。そう思います。だから、どれだけお答えしても、体験会でサンプルを作ってお出ししても、結局はご自身で少しでも触ってみて、利用してみていただかないと難しいだろうな、と思います。
視察/見学いただいた方とラボはその後もつながりを持ち続け、実験の場として活用してくださったり、気になる場所として遊びに来てくださったり、紹介してくださる方が多くいらっしゃいました。とてもありがたいことです。

メイカースペース、とりわけファブラボは「ほぼあらゆるものをつくる」場所を目指しています。それはモノに限らず、コト(サービス)、仕事にまで発展しうる。そんな事例をいくつも見てきました。
案ずるより生むが易し、ということになるのでしょうか。つくりたいけどわからないならつくりにきたらいいし、ラボを立ち上げたいけどできないなら自分が利用者になってみたらいい。まずはMakeの世界に飛び込んでみるべし、です。ものづくりのできない超不器用な私が、なんとか3年もつとめてこられたのは、挑戦者なら誰でもウェルカム!なオープンマインドを持ったメイカースペース/ファブラボ界隈のみなさまの懐の深さあってのことです。

ちなみに「メイカースペース/ファブラボ気になるけど、別につくりたいものがあるわけじゃないんだよね…」という方もいらっしゃるかもしれません。(私がわりとそれに近い)
そんなとき、思い切ってスタッフやボランティアを志願するのもいいかもしれません。いち利用者だけど、他の利用者をサポートしたり、運営の手伝いをすることで「意外と自分つくれるやん」っていう気持ちは芽生えるし、コトづくりに結びつくかもしれません。

メイカースペース/ファブラボの持つ、なにかやってみたい!とわくわくする気持ちを形にしてみようよという価値観に勇気付けられ、その場所を少し離れた今でもなんとか踏ん張っている今日この頃です。とりあえず>

具体的にどう関わればいいねん!っていうことは、またの機会にでも書いてみようと思います。




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