オクトパスカフェ

私は宮崎花子。広い空の下には、広い海が広がっていて、そのさらに深いところには楽園があるという噂、聞いたことはありませんか?それは本当の話。海底にある秘密のサロン、オクトパスカフェへようこそ。

お花と服が好きな私、宮崎花子。何を隠そうオクトパスカフェの中堅コンカフェ嬢です。私の見た目?うさぎど真ん中ってよく言われます。出勤時は小花柄のワンピースに同じ柄のリボンが多いかな。好きなブランドはHAMSTAR HOUSE。服はほとんどラブリーブティックで買ってます。
同僚には、風呂好きのうさぎ、ぼんぼんりぼん。健康志向の白クマ、いちごぴんく。ギャルひとすじの茶グマ、春のシェリーメイ。突飛な発言の多いうさぎ、いちごマイメロ。キャストのバランスは良いと思います。オーナーの裏表タコは温和な人で、いつもうん、うんと言っています。

コンカフェ嬢としての極意は、先輩のうさみさんから教えられました。高い自己肯定感を持ちつつ、謙虚であること。やってみるとこれが難しいんです。

「もしかして今おごり高ぶってない?謙虚に。それでいて自分の価値は最高レベルまで上げて!」

うさみ先輩の教えに何とかついていこうと奮闘する日々でした。むちゃくちゃ厳しくて話通じないと思ってたうさみ先輩も、コンカフェ卒業してからずいぶん丸くなってました。一緒にチェキ撮ってくれたし、オリカクもたのんでくれたし、昔の事は水に流そうと思います。卒業後は起業し経営者としてうさみフラワーショップを軌道に乗せたり、何だかんだ尊敬できる先輩です。

カフェはシフト制で週5勤務。たまに土日もお休みが取れて、おかしのバチボコ工場で働いてるハムスターとランチを持ち寄って、ジャス湖でピクニックしたりします。ふりふりの服を着たみんなの会にもたまに参加して、充実した毎日。
オクトパスカフェの社宅に住んでいるので、朝は出勤10分前まで寝ています。職場環境に不満はなくて、むしろ恵まれてるなと思います。お客さんもみんな良い人。
そんなわたしの職場、オクトパスカフェに大型新人がやってきたのです。宮崎花子、嵐の予感です。

大型新人、その名はギャルママちゃん。春のシェリーメイとはまた違うタイプのギャルです。春のシェリーメイはギャルらしく天真爛漫で自由に見えるけど、突飛な言動は少なくギャルの一線は超えないタイプ。オリカクもギャルのトレンドをおさえつつも万人受けに配慮した絶妙なチョイスができる子です。

ギャルママという事はやっぱり、ママなのだろうか。出勤表を見て、私宮崎花子は思います。オーナーの裏表タコは、うん、うんと言って彼女の教育係に私を指名したのです。

「子育て大変だけど、やっぱりバイトしないと、子供に贅沢させてあげられないから。しっかり働くわよ!」

ギャルママちゃん初出勤時のあいさつに、宮崎花子は驚きを隠せませんでした。やはり、ママでした。

「あ、既婚なんだ」
「既婚、ではないんだけどね。子供はいるわよ」
「それ、お客さんに内緒だからね」
「あ、そうなの、じゃあ内緒ね」
「よろしくね」

内緒もなにも、と思う間もなく、オクトパスカフェ初心者のお客さまが来店。

「いらっしゃいませ、こちらのお席にお座りください。」

初めてで緊張しているお客さまをスムーズにお席に誘導し、まずはお客さまのめちゃちっちゃちっちゃ蝶ネクタイを褒めようかという時に、ギャルママちゃんがある意味正解のスタートをきりました。

「私も初めてよ、初めての勤務!初めてのお客さんがあなたよ」

不躾ですが正解です。共通点を素早く見つけ、お客さまの興味を引き込みリラックスさせています。私も先輩の意地をみせまいと、丁寧な接客を続けます。

「お飲み物はいかがなさいますか?」
「何があるのかなぁ?なんか、特製のやつください、君のやつ、ありますか?」
「あるわよ、オリカク〜!」

お客さまの目は彼女に釘付け。
ギャルママちゃんは第一声でお客さまの心をがっちり掴んでいたのです。

「ギャルママ特製オリカク、ママミルク!」

あかんやろ。宮崎花子は思いました。お客さまも困惑です。

「え?コンカフェってママがいるの?」
「そう、ママがいるの」

私はうさみ先輩直属の後輩として、言っても仕方ない正論もぶつけていく覚悟です。

「言っちゃダメじゃん」
「でも本当の事だもの」

ギャルママちゃんは哺乳瓶を取り出して高らかに掲げ、慣れた手つきでシェイクさせます。粉ミルクが華麗に波打ち滑らかなミルキーウェイへと変身してゆく、ママとして日々ミルクをこしらえてきたその貫禄を見せつけられ、気づくと彼女のペースに巻き込まれている私がいました。

「完成!ママカクテル!どうぞ」
「ママカクテル、いただきまーす」

一気に飲み干すお客さま。

「なんか、子供に戻った気分。楽しーい!」
「あははは!この路線でいくわよ〜!」

お客さま大喜び。接客業に従事する者として、お客さまが楽しく過ごせていること、これが何より正解なのだ、宮崎花子、まだまだ道半ば、ママの偉大さに拍手を送りたい、晴れやかな気持ちです。

「いいかも、がんばってね!ギャルママちゃん!」

素直にそう思いました。
突然のギャルママの告白にびっくりしたお客さまでしたが、その後5時間延長して帰っていきました。
オクトパスカフェに現れた大型新人ギャルママちゃん。あかんやろ、という気持ちとせめぎ合いながら、宮崎花子はオーナー裏表タコとうなずき合うのでした。

「また来てな!」

大手を振ってお客さまを送り出したあの日の彼女が、今も目に焼きついています。

それから…
ギャルママちゃんの快進撃、キャストたちのがんばりによりオクトパスカフェは繁華街に新店舗を計画するなど、事業拡大の波に乗っています。
もうすぐあなたの街にも、オクトパスカフェがやってくるかもしれません。
そのときは、私宮崎花子が心を込めて接客いたします。

「ようこそ、オクトパスカフェへ!」


引用
おにんぎょう村YouTubeより

newオープン!おにんぎょう村初のコンセプトカフェ「オクトパスカフェ」cm

今日はオクトパスカフェオープン日!おにんぎょう村のオクトパスカフェにぜひきてね!

オクトパスカフェ#1 良い人なんか悪い人なんかわからん先輩

オクトパスカフェ#2 大型新人ギャルママ あかんやろ。


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