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「レムデシビル」が注目のギリアド・サイエンシズ

世界各国で新型コロナウイルスの感染の拡大が続き、治療薬の開発が急がれています。

そんななか、5月7日に厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の治療薬として「レムデシビル」を特例承認したという発表がありました。

「レムデシビル」は、米国の製薬会社ギリアド・サイエンシズが開発した抗ウイルス薬で、すでに米国でも、新型コロナウイルス感染症の治療薬として緊急使用が認められています。

もともとはエボラ出血熱やマールブルグ熱の治療薬として開発が進んでいましたが、その後、MERSやSARSなどのコロナウイルスへの有効性も確認されていたようです。

そのため、今回の新型コロナウイルスに対しても、安全性、有効性を確認するため、試験が行われていました。感染患者を対象としたフェイズ3臨床試験では、症状の改善が見られたと発表しています。

ギリアド・サイエンシズってどんな会社?

「レムデシビル」を開発したギリアド・サイエンシズとは、どういう会社でしょうか。

1987年6月に創業した同社のミッションは、
「まだ医薬ニーズの満たされていない分野において、革新的な医薬品を発見し、開発し、商業化すること」(同社のHPより)
と書かれています。

HIVや、B型・C型肝炎ウイルスの感染症治療薬、予防薬の開発により、世界有数のバイオ医薬品メーカーに成長しました。
また、インフルエンザの治療薬として有名な「タミフル」の特許を持っています。

現在は、日本を含む世界35か国以上で、ウイルス性疾患、炎症性・線維性疾患、がん領域を主な重点領域として事業を展開しています。

最新の決算動向

ギリアド・サイエンシズは、4月30日に2020年1~3月期の決算を発表しています。

売上高は55億4800万ドルで、前年の同じ時期と比べ5.1%増加しました。
現在の主軸になっているのがHIVウイルス治療薬で、売り上げは14.3%増の41億3400万ドルと、全体の4分の3を占めるまでに比率が高まっています。

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HIVウイルス治療薬の代表的な薬として「ゲンボイヤ」「ビクタルビ」があります。「ゲンボイヤ」は前年より減少しましたが、「ビクタルビ」は前年から倍増し、売り上げの増加に貢献しました。

かつての主役だったC型肝炎治療薬の「ハーボニー」や「エプクルサ」は、ジェネリック医薬品の登場などもあり、売上高はいまではかなり小さくなっています。

支出面では、研究開発費はレムデシビルの臨床試験費用や製造拡大のための費用が増加しましたが、それ以外の臨床試験費用などを抑えたため、全体ではわずかの伸びにとどまりました。

販売管理費も、米国内での販売促進費を増やしましたが、前年比ではそれほど大きな増加とはならなかったため、本業のもうけを示す営業利益は前年同期比7.4%の増加となりました。

ただ、株式投資などによる「その他の収益」が、前年の3億6700万ドルのプラスから、1億5800万ドルのマイナスになったことが影響し、純利益は15億3800万ドルで、前年同期比21.9%減少しました。
1株当たり利益も1.22ドルで、20.8%の減少となりました。

新型コロナウイルスへの対応

2020年1~3月期の業績への新型コロナウイルス感染拡大の影響はほとんどなかったとしています。

レムデシビルが新型コロナウイルス感染症治療薬の最有力候補となったことで、臨床試験や研究について、「完全に登録された試験を継続し、新規試験を一時的に延期し、他の試験の登録を一時停止する」との方針を公表しました。

また、レムデシビルの価格については、世界各国政府や患者のために、利用しやすい手ごろな価格で提供できるよう尽力する、とも述べています。
コロナウイルス感染拡大の収束が見えない厳しい環境のなかで、高額の薬価で利益を得ることに対する批判をかわしたい狙いも透けてみえます。

感染についての今後の状況と、レムデシビルの開発の状況を見極めたうえで、20年4~6月期の決算の発表時までに、明確なガイダンスなどを報告したいとの見解も示されました。

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まとめ

・新型コロナウイルス感染症の治療薬として「レムデシビル」承認
・インフルエンザ治療薬「タミフル」の特許を保有
・2020年1~3月期の売上高は前年比5.1%増加
・1株当たり利益は1.22ドルで20.8%の減少


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