見出し画像

エクソン・モービル決算発表(2020年1~3月期)

19世紀から20世紀初頭、アメリカにスタンダード・オイル社という石油会社がありました。
石油王と呼ばれたロックフェラーが創業したその会社は、買収を重ねた結果、巨大化しほぼ独占状態になったことから、34社に分割されることとなります。

そのスタンダード・オイル社の流れをくむエクソン社とモービル社が1999年に合併して誕生した、世界でも最大級の石油会社がエクソン・モービルです。

ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)やロイヤル・ダッチ・シェルなどとともに、「スーパーメジャー」と呼ばれています。

最新の決算動向

5月1日に発表した2020年1~3月期決算は、売上高が561億5800万ドルで、前年の同じ時期と比べ11.7%減少しました。

世界経済の成長に陰りが見え始め、需要の停滞が見られるようになった昨年からの流れに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が追い打ちをかけた格好です。
石油製品などの販売数量の減少と、石油価格の急落がダブルパンチとなりました。

コストも減少していますが、売り上げの減少のほうが大きかったことから、純利益は6億1000万ドルの赤字となりました。
四半期ベースでの赤字は、少なくとも32年ぶりとのことです。

1株当たりの利益も0.14ドルの赤字となりました。

画像1

事業構成は垂直統合型

エクソン・モービルの事業は、石油やガスの探査や掘削(上流部門)から、燃料や化学品への精製・生産・販売(下流部門)まで、垂直統合型の展開をしています。

事業の分類は以下のようになっています。
・Upstream-United States(上流部門:米国)
・Upstream-Non US(上流部門:米国以外)
・Downstream-United States(下流部門:米国)
・Downstream-Non US(下流部門:米国以外)
・Chemical-United States(化学部門:米国)
・Chemical-Non US(化学部門:米国以外)

下流部門に当たる事業のうち、原油を精製し、燃料や潤滑油を生産・販売する事業を「Downstream」とし、子会社のエクソンモービルケミカルで行っている化学製品の製造・販売の事業を「Chemical」としています。

また、Upstream、Downstream、Chemicalのそれぞれを、米国と米国以外に分けて様々なデータを公開しています。

Upstream

生産量は、前年の2019年1~3月期と比べ6.6%増加、2019年10~12月期と比べても1.8%増加しています。
とくに原油は、米国のパーミヤン盆地や、南米ガイアナ沖の生産の拡大で、米国や中南米地域の増加率が高くなっています。

一方で、原油価格はこれまでにない過剰供給状態と、COVID-19による世界的な需要減少から、大きく下落しました。
NY市場の原油先物価格を見ると、2019年12月末の1バレル61ドルから、2020年3月末には1バレル20ドルと、3分の1にまで価格が下落しています。

天然ガスの価格も、冬の天候が比較的穏やかだったことで需要が増えなかったことに、原油同様、COVID-19による需要の減少が加わり、価格が下落しました。
同じくNY市場の天然ガス先物価格は、2019年12月末の2.19ドル(100万BTUあたり)から、2020年3月末には1.64ドルと、25%下落しています。

このため、上流部門では、米国の部門利益は7億ドルの赤字となりました。
非米国の部門利益は12億4000万ドルの黒字でしたが、前年同期比55.4%減少しました。
この結果、上流部門全体の利益は、前年同期比81.4%減少し、5億3600万ドルの黒字にとどまりました。

画像2

Downstream

下流部門では、COVID-19の影響で航空機のジェット燃料やガソリンの需要が減少したことが大きく影響しました。
米国の部門利益は1億ドルの赤字、米国以外の利益も5億1000万ドルの赤字だったため、部門全体でも6億1000万ドルの赤字となりました。

Chemical

化学部門は、景気の鈍化による需要の減少や、過剰な生産能力による価格低下圧力が続いています。
そのなかにあって、特殊なポリプロピレンやイソプロピルアルコールなど、医療用マスクや消毒剤に必要な原材料の生産を増やしたようです。

また、原油価格の下落から原材料コストの低下という恩恵を受け、マージンは改善しました。

部門利益は、米国が2億8800万ドルで前年同期比78.9%増加しました。
ただ、米国以外の利益が1億4400万ドルの赤字だったため、全体では1億4400万ドルの黒字で、前年同期比では72.2%の減少となっています。

今後の見通し

会長兼CEOの Darren W. Woodsは
「COVID-19は短期的な需要に大きな影響を与えており、市場の供給過剰と商品価格とマージンへの前例のない圧力をもたらしています」
と述べています。

こうした厳しい状況を踏まえ、2020年通期の設備投資額を30%削減すると発表しました。当初の予定額330億ドルから、230億ドルになる見込みです。

画像3

まとめ

・2020年1~3月期の売上高は前年比11.7%減少
・1株当たり利益は0.14ドルの赤字
・上流部門と化学部門は大幅減益、下流部門は赤字に
・2020年通期の設備投資額を30%削減と発表



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?