どんな資料こそ優先的に活用すべきか?

こんばんわ。これまで設備保全の現場で資料の探す手間を削減したり、ベテランの知恵をうまく引き継ぐ方法として過去の資料を全文検索してしまう方法をご説明してきましたが、今回は、「保全現場では、結局どんな資料が大事なの?」という質問に対する回答です。

そもそも”大事な情報”ってどういうこと?というところから押さえていきたいですね。まず以下の2つの情報を比べてみてみましょう。

① 12月10日、東京は曇りだった
② 4月15日、沖縄で雪が降った

いかがでしょうか?①は、まぁ「ふーん」という反応でしょう。②はどうでしょうか?「マジで!?」となりませんか?そうなんです。この驚いた反応が返ってくるほどその情報は、人にとってインパクトが大きい大事な情報なのです。

実際、情報理論の分野では、この考え方を「情報量」とか「エントロピー」といった概念を使って定義しています。

Wikipediaより抜粋
情報量やエントロピーは、情報理論の概念で、ある出来事が起きた際、それがどれほど起こりにくいかを表す尺度である。ありふれた出来事が起こったことを知ってもそれはたいした「情報」にはならないが、逆に珍しい出来事が起これば、それはより多くの「情報」を含んでいると考えられる。

さきほどは天気の例ですが、これを保全業務の中で考えてみるとどうでしょうか?

①12月8日、昼勤のパトロールを行い、特記事項なし
②5月7日、検査工事中に設備Aで損傷を発見し、1週間工事を延期
③12月9日12時34分、昼食中に設備Bが突然爆発し、工場全体が停止

もう大丈夫ですよね。①よりも②、②よりも③のほうが明らかに驚きが大きくなりますよね。なので、①よりも②、②よりも③のほうがより多くの情報を含んでいると言えるわけです。そして実際、こういった多くの情報を含んだ出来事は具体的に人間の記憶にしっかりと記憶されていくわけです。

ベテランの人と話していてよく聞く話が、「いやー、20年前、まだ若い時にさ、〇〇で△△トラブルがあってさ、その時は大変だったよ。みんな徹夜で」というやつなんですね。

でもこんな話は聞きません。「いやー、20年前、まだ若い時にさ、〇〇で正常に設備が動いていて、定時で帰ったんだよね」

そうなんです。人の頭の中にもやっぱりこの情報理論の考え方が反映されていて、「マジで!?」という出来事があるほどしっかり刻まれて、忘れないわけです。ベテランさんの行動は、こういった情報量の多い出来事によって意識的、もしくは無意識に決められているとも言えます。

ということで、冒頭の問いにもどりますが、保全業務の現場で、驚きが多い出来事が記されている資料とは一体何でしょうか?

答えは事故やトラブルの報告書ですね。

さらに、ハインリッヒの法則というものがありまして、重大な事故1に対して、軽微な事故が29存在していて、さらにひヒヤリとするような出来事が300存在しているという経験則があります。同じ事故やトラブルの報告書であっても、重大な事故になるに従い、大事な資料と考えたら良いと思います。

Wikipediaより抜粋
ハインリッヒの法則は、労働災害における経験則の一つである。1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというもの。

いかがでしたでしょうか?「過去の資料を整理して、あらためて保全業務に活用しよう!」と思っている方は、ぜひ今回説明した考え方で資料整理の優先順位をつけていただければ幸いです。

また、保全業務以外の仕事であっても考え方は同じで、情報量が多い資料から優先して整理されていくことをおススメします。ソフトウェア開発であれば「重大なバグ」、営業であれば、普段優しいお客様からの「クレーム」、建設工事であれば、いつもうまくいく現場での「工期遅れ」などです。

最後に、驚きの多い出来事が含まれた資料、インパクトが大きい資料は間違いなく情報理論で言っても大事な資料であり、大事な情報です。しかし、この情報は、タイムリーに人に提供されてはじめて意味があります。貴重な情報でも、情報を受け取るタイミングが悪ければ、それは価値にはなりません。このあたりはまた別の記事で書いてみたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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