”技能伝承”とはつまり、たくさんある”引継ぎ”であるというお話

みなさん、こんばんわ。今夜も技能伝承というものを取り扱っていきたいと思います。Googleで”技能伝承”などと入れて検索するといろいろとその定義や実現方法が書かれていたりしますね。いろいろと小難しいことが書いてあったりするのですが、僕なりに定義すれば、引継ぎと言い換えたほうがよさそうですよという話です。

技能伝承とかベテランの知見を継承、匠の技とかといった言葉が現れると、それを目の前にした人はこう思いませんか?「なんかすごそう、もう背中を見て学ぶしかない…」実は僕も最初はそういう風に思って、正直ビビっていた。しかし、ベテランとか匠とは言え相手は人間です。怖がらないでじっくり観察してみましょう。

観察とヒアリングをしていくとある時、気づくはずです。「なるほど、こういう風に頭使ってるんだね。」、という部分と「なるほど、こういう風に作業してるんだね。」といった部分です。

1.ベテランの思考回路

前者は、ベテランの思考回路で、例えるならば、コンピュータのCPUとかメモリを使ってある計算プログラムに従って演算する部分ですね。ベテランの方が「〇〇でトラブルか、それってどんな運転状況だった?どんな音がした?なるほどそうか、じゃあ△△の可能性あるから、検査員のだれだれさんを呼んで」とか頭の中で思考回路を回しているわけです。

2.ベテランの感性

一方で、後者は、ベテランの5感の使い方で、例えば指先の感触、聴覚、嗅覚とか、視線の動かし方なんかの部分でコンピュータでいうところのセンサーと思ったらよいと思います。「〇〇でいつもと違う音がするんだよね。触ってみるとだいぶ熱もっていて怪しいな」と状況を察知したり、無意識に場の状況から点検する場所を選んでいく視点を変えたりといったような感覚のところです。

どうでしょうか?意外と分けてみると安心しませんか?得体のしれない神がかったベテランの知見、匠の技なんて言われるものも意外と掴みやすくなってきませんか?中には”レジェンド”とか呼んで、その人をあがめられているケースに遭遇することがあります。大丈夫、その人だって人間ですから。じっくり観察すればきっとこの2つに分類した仕事をしているはずです。

今日は、1のベテランの思考回路のところに注目してみましょう。そのベテランさんがどんな業務のベテランさんかによりますが、例えば設備保全業務のベテランさんだとしましょう。この場合は大体こんな感じの思考回路をしています。

ケース1 ある設備に注目して検査計画を立てる時

だいたい頭の使い方はこんな感じです。

「この設備か、過去の自分の経験だと〇〇部分で△△なトラブルによく遭遇したな、次回の検査では〇〇部分の非破壊検査をやっておくべきだね。」

ケース2 トラブルに遭遇した時に原因を検討する時

「〇〇トラブルか、この設備、運転時間何時間だっけ?△△部分の前回の検査結果はこうだったよな。可能性として考えれるのは過去の事例からだと原因はこれじゃないか」

ケースを2つ例に出してみました。何か気づきませんか?

”過去の自分の経験”、”前回の検査結果”、”過去の事例”というキーワードが出てきましたよね。そう、ベテランさんは何か仕事をするときに必ず過去の経験、過去の事例をパパっと引っ張ってきて仮説を立てたり、案をつくっているわけです。

そう考えると、どんな要素に基づいてどんな考えをしたのかさえ分かれば、実は同じ思考回路を若手でも再現することができるわけです。ケース1とケース2の場合は、設備の運転時間、過去のトラブル事例、過去の検査結果を要素としていますね。おそらく設備ごとやその人の特性によって異なりますが、多くの場合これに近い思考回路に落ち着いていくでしょう。

設備の運転履歴、その設備のトラブル事例、過去の検査結果など、これらの情報がわかっていればベテランの思考回路に近いことが若手でもできるわけです。

こういった情報はどのように入手できるでしょうか?その設備の運転履歴であれば操業日誌、トラブル事例であれば事故報告書、検査結果であれば、定期検査報告書などを参照するきっと書いてありますよね。

なので、設備保全の現場でもし「技能伝承を!」みたいな議論が始まったら、以下の2つだけをやればよいわけです。

①どんな要素に基づいてどんな考えを出したのか?
②その要素が含まれる資料は引っ張ってこれるのか?

ここまでくればなんかあまり怖くないですよね。淡々と大きめの引継ぎだと思って取り組めばきっと結果的に良い職場づくりができるのではないでしょうか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!次回はベテランの感性について書いていきたいと思います。

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