金木犀と死
彼女は言う。
「私、秋は嫌いなの。死にたくなるじゃない」
私はなんて返しただろうか。
2人でコンビニに向かう最中、「あ、金木犀の香り。」私はつい口にしてしまった。
彼女は少し顔を顰めた後
「死にたい季節だね」って、どこか寂しそうに笑った。
彼女は秋が嫌いだ。金木犀の香りも。
死に近い場所にいるような感覚なのだろうか。
「私は春が大好きで大嫌いだよ。」
ぽろりと呟いてみた。
「真逆じゃん、一緒に死ねないね」と彼女は笑って見せた。
彼女は幸せだと死にたくなるという。
私は辛いと死にたくなる。
「死にたいタイミングが合えば、一緒に死のうね。」なんて言ってみたけどきっと私は死にきれない。
彼女は何にも期待をしていない。
私も出来るだけ期待はしたくないから
「期待させないでね」なんて自己中極まりない言葉を発してしまった。
でも彼女は「どうしようもなくなるまで一緒にいてよ」なんて言うもんだから、私の心はもうダメになりそうだ。
どうしようもなくなっても、一緒にいたいよ
こんなこと言えないんだけどさ。
ああ、秋好きだったけど、やっぱり寂しくて嫌いになりそう。
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