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常識を疑ってみると、見えてくるもの〜ある朝の靴下の話〜

平日の朝は、何かしらバタバタします。
どんなに準備を整えていても、子どもがキリギリまで起きなかったり。

わが子は、自分から進んでテキパキ身支度できるタイプではなく、寒い朝が続く近頃は、なおさらのこと。

ギリギリまで布団で粘る。
やれやれ朝ごはんを食べたと思えば、これまたギリギリまでコタツで粘る。

自分のことは自分でさせるようにはしていますが、寒さに慣れていないこの時期、まあ仕方ないかと、着替え準備の手助けをすることもあります。

そんなある朝。

前日の洗濯物を取り込んだ中から、子どもの靴下を取り出し、わたしはこう言いました。
「靴下、ひっくり返ってるから、履く前に裏返してな」

息子は、脱ぐときに靴下が裏返っちゃうのですが、それをそのまま洗濯カゴに放り込むので、洗濯がおわった時点では、靴下が裏向きなのです。 

そして、それをそのまま干す夫。

なので、取り込んで仕舞う際に元通り表向きにするわけですが、今回は取り込んだそのままだったので、裏返しのままだったというわけです。

裏返して履いてね、と言ったわたしに対し、子どもの答えは、予想の斜め上を行くものでした。

「なんで?」

え?なんて?
「なんで?」っておっしゃいましたか?

靴下は、表向きに履くのがアタリマエ、それが常識と信じて疑わなかったわたし。

なんで表向きにせないかんの、と問われて、一瞬、咄嗟に言葉が出ませんでした。

次の瞬間、脳裏に浮かんだ答えは「だって、裏向きやったら格好悪いやろ?」

しかしわたしは、これを口に出すことはできませんでした。

それは、わたしのなかのわたしに、凄い勢いでツッコまれまくったから。

(いや、格好悪いって、誰の意見よ)
(いや、それって、人にどう見られるか気にすることを大切に生きろって教えたいわけ?)
(てかそもそも、他人の靴下の裏表なんか誰が気にするねん)
(黒靴下やし、裏向いてても分からんやん)
(本人が良いなら、そこになんの問題がある?)

こんな声がぶわあっと聞こえてきて
わたしは言葉を、いったん飲み込まざるを得なくなりました。

靴下が裏向けで何が悪い?
その答えを、子どもを納得させる明確な答えを、わたしは持ち合わせていなかったのです。

やっと絞り出した言葉。

それは
「まあ、あんたが良いならいいけど。そのまま履いて行き。」

そこへ、夫のひと言。

「もういっぺん洗濯したら、次履くときは表向きになるやん。」


そうか。
その手があったか。

かくして、わが常識、ここにもそこにもうっかり落ちてる思い込みに、けつまづいた
そんな朝。
息子は無事、裏向けの靴下を履いて、元気に登校して行ったのでした。



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