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広報が苦手な音楽家に贈る、8つの簡単なエチュード

 チケットを売るのって、本当に難しいですよね。
 本当に…難しいですよね…(涙)
 いちおう本職は広報的なお仕事をしておりますが、まだまだわからないことだらけです。ぺーぺーもいいところです。しかしひとりの聴衆として、あるいは色々な演奏家の友人知人の様子を見ていて、感じるところがあったりもします。

 自分で自分のことを宣伝しなくちゃいけない。これは自分の音楽に自信がなくなっている状態だったりすると本当にしんどい。日本人は謙虚な人が多いのでなおさらです。
 でも、だからといって、宣伝を放置しすぎた結果、本番3日前にあわてて「今週末の公演ーーー!!!」って駆け込み投稿をしても、ほとんど効果はあがりません。
 そこで、とっても簡単にトライできる(と思う)ことからはじめてみては、と思いまして、8つのステップを作成してみました。でもどこからはじめてもかまいません。やれるところからでOK。一番大事なのは、「宣伝しなくちゃ…」そう思った瞬間にやりはじめること。

etude.1 誰か1人でいいので、まずは演奏する予定があることを伝えてみる

相手は家族、友人、親しい関係の方で全然かまいません。

「そう言えば今度、すっごい変な演奏会に出るの」
「え、なにそれ」
「曲の途中で主催者が突然クリームパイ投げをはじめるんだって」
「まじか」
「あ、でも、曲目は真面目なんだよ」

などなど…
頭の中で、悶々と「宣伝しなきゃ…しなきゃ…」と悩んでいると、そのうち腐っていくので、近しい人にしゃべるのは結構大事です。しゃべっているうちに頭も段々整理されてくるはず。
やってはいけないこと:「●月●日に演奏会あるんだけどさー、売れてないんだよねー」などと愚痴にしてしまうこと。自分で自分の気持ちを下げてはいけません。なるべく明るいポジティブな紹介にしましょう。

etude.2 練習している曲を持ち歩いているファイルに、演奏会チラシを挟んでおく。

なにも200枚とか持って歩けって言ってんじゃないんです。せいぜい数枚でいいです。

・たまたま会った人と話が弾んだりしたときに、チラシを日頃から持ち歩いていると、さっと取り出して渡せます。
・別の仕事の時に、仕事仲間に話しかけられるきっかけになるかも。
・練習の時にちらちら目に入るので意識を持ち続けることもできます(プレッシャーになっちゃう場合は無理にとはいいません)

etude.3 曲目をぜんぶ決める

もし自分が自主演奏会の企画者だったとしたら、の話です。
突然ですがここで「コンサートのチケットを買う決め手」ランキングを発表します。

1位 演奏者が推しアーティストかどうか(推し支援)
2位 演奏者が知り合いかどうか(縁故)
3位 曲目(プログラム)
※先日筆者が実施したてきとうなアンケートに基づきます。
 ただし、実情にはある程度即しているものと思います。
 なお3位以下は同順位があと2つくらいあって「会場」「開催日時」ですが、ここでは省略しました。

 1・2位はすぐにどうにかなるものじゃないのでとりあえず置いといて、3位にご注目。
 演奏会をするとき、とりあえずメインのプログラムだけ決めて、あとは当日まで言わなくていいやーって思ってませんか。ますよね。でもその当日にかけて決まった曲がものすごい好きな方がいて「この曲やるんだったら知らん演奏家だろうが行ったことない会場だろうが構わん、買うぞ」って思ってたらどうしますか。案外こういうケース、多いんですよ。
 最終的につながりとか含めて曲目決定するんだから、演奏会3日前にバタバタ決めるより、今決めちゃったほうがいいんじゃないですか。ほら、今でしょ。
 曲目を決め終わると、不思議なことに演奏会が楽しみで仕方なくなります。この機を逃してはいけません。すかさず曲目一覧を投稿しましょう。もしくはチラシをちょっと修正しましょう。

etude.4 主催者や一緒に出演する人のSNSをシェアする

 ほんとにシェアするだけでいいです。例えばオケにのるなら、オケのアカウントの投稿を借りちゃいましょう。なんかひとこと付け加えたほうがいいかな、とか、考えはじめるのはなしです。ほら、あっという間に5分も経過してますよ。
 そんなこと悩んでる暇があったら、さっさとリツイートのボタンだけ押して、練習に戻ったほうがいいです。

etude.5 友達の演奏家のコンサートを推してみる

 仲の良い友達が面白そうな曲をやるんだ。楽しそうー。と思ったら、たとえ自分がその日は予定があって行けなくても、SNSに書いてみましょう。

「とても大切な友達の●●ちゃんが、●月●日に●●ホールでコンサートするそうです!わたしの大好きなショパンのバラード第2番…!聴きたい…!でもその日はリハがある…ご予定あう方はぜひ!」

…みたいな感じですかね。一例ですが。これは一見全然広報の訓練じゃなさそうですが、以下2点の効果があります。
・自分がその公演のどこを気に入ったのかを文字化する
 これは自分に置き換えれば、コンサートのアピールポイントを探す練習になります。
・友達に感謝される(重要)
 別に恩を売る目的じゃないのですが、先日わたしが実施した別のアンケートで、演奏家の皆さんには公演の宣伝を「できれば誰かに肩代わりしてほしい」と思っている方が多かったことを考えると、お互いにお互いの本番を推し合うのは、じつはすごく合理的なんじゃないかと思ったりしました。

etude.6 こんな人が演奏会に来てくれるんじゃないか、という妄想をしてみる


 できるだけ細かく。たとえば商業施設のクリスマスイベントに出演予定だとしたら、演奏会の時間にはどんな年齢層の人が多くいそうかな、とか。どのあたりにお住まいの方が多いかな、とか。女性と男性だったらどっちのほうが多いかな、とか。
 他にも、その人がふだんは他にどんな演奏会に行っていそうかな、とか、自分以外のどんな演奏家が好みかな、とか。できるだけ細かく、なんなら似顔絵がかけそうなくらい詳細に思い描いてください。これを専門用語で「ペルソナ」と言いますが、覚えなくてOKです。

 え、妄想するだけでいいの、って? いいんです。今後、あなたが自分の演奏会について少しづつ発信できるようになってきたとき、この想像上の「ご来場者様」を思い出してみてください。相手があると思えるだけで、宣伝の時に使う言葉の精度が変わってくるはずなんです。

etude.7 打合せやリハーサルのときに写真を撮る

 写真を撮ったらSNSに出したくなるのは現代人の性、だと思います。会場と打合せしたよ、リハーサルしたよ、、なんでもきっかけにしていいんです。なんなら事後のカフェで「リハ終わった!疲れた!ひと休み!」ってコーヒーの写真でもいいです。
 え、ソロリサイタルだからリハがない? ……ぜひともこちらの小川典子さんの投稿をご覧ください。


ひとりでする練習も、立派なリハーサルですとも。

 え、SNSにあげるにしても、何書いたらいいかわかんない? 「●月●日のコンサートのリハーサルでした! すっごい難しい/すっごい楽しい/みんないい方ばっかり!」…くらいでいいんです。気軽に気軽に。


etude.8 いまチケットが何枚売れているか(または予約が何人分入っているか)確認する

 売れていないという事実を突きつけられるのはつらいです。身を切られるようです。けれど、いつまでも目を背けてはいられません。虫歯と同じで早めに対処すれば、活路はまだあります。勇気を出して券売状況をチェックできたあなたは、間違いなく素晴らしい一歩を踏み出しました。自分で自分を褒めましょう。

 ひとしきり褒めたあとは、現実に戻ってやるべきことをやりましょう。虫歯は歯医者さんにお任せできますが、あなたの演奏会を告知できるのはあなただけなんですから。
 ……はいそこ、券売状況が確認できたからって、現実逃避して練習に逃げない!


 エチュードはこれで全部です。簡単でしたか?
 でしたら、ぜひetude.6でやったあたりを思い出しながら、無料のWEB媒体にコンサート情報を掲載したり、タウン誌にチラシと掲載依頼を送ってみたり、SNSでコンサートの情報についてあれこれ書いたりしてみてください。
 ※本etudeの効果には個人差があります。また、必ずしも券売につながるという実証はありません。そのことをご承知いただいたうえで、ぜひお試しください。

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