四季のファンタジー

春。

 始まりとされるうららかな陽気に包まれながら少しだけ全裸になってみる。当然確保。言い訳としては「つくしが呼んでいたから」なんて言ってみる。警棒で殴られる。独房で数年を過ごしてから改めて戻ってきた娑婆の匂いを懐かしく感じながら、実家に戻ってみると新しい自分がいた。

 僕が変わったのか家族が変わったのか。


 夏。

 ギラギラした太陽の熱に体温上昇を余儀なくされたから純粋に全裸になってみる。すみやかに確保。「(全裸で)公園のベンチでソフトクリームを舐めるその姿がイカれてるよ!」っていうのが理由だった。前とは違う集団部屋で仲良くなった友人との再会を誓って10年が過ぎた頃、彼と会った時に汚物を見るような目で見られた。

 僕も変わったけど彼も変わっていた。


 秋。

 紅葉に身を包んだ葉っぱ達を見ていたら自分も包まれたくなって全裸で潜り込んでみた。三日後に確保。「局部を葉っぱで包む事はアダムと同じで人類の最もサイコなファッションであり、何ら犯罪性は存在しないはずだ!」なんて言ってみても「君の場合猥褻行為によりというよりも晒し者という観点からの同情によるものだ!」という親切心からであった。

 時代が変われば美意識も変わるものだ。


 冬。

 「雪化粧」なんて言葉を作った人がいるのなら教えて欲しい。僕は自分の肉体を彩りたかっただけなのに。全身凍傷の重体。「僕の肌質だとパウダースノーの時の方が良かったんでしょうか?」と精一杯の気力を振り絞って診てくれていた医師に聞いてみたら「嫌な濡れ方してたよ」って優しく諭された所で意識が途切れた。

 季節は巡り、そして僕も巡る。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?