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【後編】うるま市ネット部活✕こどもウェルビーイング|キーワードは「ぬちどぅし(親友)」

2023年6月に岸田首相が発表した骨太の方針へ新たに掲載され、社会やメディアからも注目を受けている「子どもウェルビーイング」。沖縄県うるま市で取組んでいるネット部活でも、子どもウェルビーイングの向上を今年のキーワードとしています。

後編は「ネット部活を通して考える子どもウェルビーイング」をテーマにうるま市ネット部活を主催・企画・運営をしているうるま市教育委員会、株式会社roku youの担当者へお話を伺いました。

【前編】うるま市ネット部活✕こどもウェルビーイング|沖縄県うるま市発の新たな教育の“カタチ”「ネット部活」とは:https://note.com/uruma_ict/n/n5217b2cc927d

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<後編>
うるま市教育委員会 儀間芳奈さん
株式会社roku you  下向依梨さん

聞き手:石川レン
文:つはたかこ
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今注目されている「子どもウェルビーイング」

ー インタビュー前編の最後に学校法人角川ドワンゴ学園の温山さんより「子どもウェルビーイングを高める」と言うキーワードが出ましたが、子どもウェルビーイングが今注目されている理由をお話いただけますか?

下向:2020年よりも前からOECD(経済協力開発機構)で、教育そのものの目的・ゴールとして、子ども達そして社会のウェルビーイングに教育があるという事を念頭に教育活動をしていきましょうと言われていました。
そこから文部科学省や経済産業省がラーニングコンパスという概念を打ち立てて、ウェルビーイング向上、私達が生きる未来をより良い社会にしていく所に向けて学びを行っていきましょうと具体的な政策を出したのが流れではないかと思います。

日本における子どもウェルビーイングでいうと、今までウェルビーイング=身体の健康という文脈が多かったと思いますが、身体の健康だけではなく精神的・心理的な幸せや豊かさを人生をかけて実現していけるような土台を、子どものうちから作れているという状態が子どもウェルビーイングの達成要件だったりすると思います。

ー 全国的に子どもウェルビーイングの指標を置いている所はまだ多くはない中、子どもウェルビーイングの指標を掲げたいというお話が出た時、教育委員会では初めどのような印象を受けましたか?

儀間:学校教育の中でも実は大きな変化が起きています。これまでは子ども達の学力保証、いわゆる子ども達の学力が全国の基準に追いつくことに焦点があり、テストの点数が重要視されていました。学力って何だろう?と考えた時にこれからの変化の激しい時代を生き抜く子ども達には点数だけの学力でいいのか?と。生きる力を育むためにウェルビーイングという概念を学校現場でも意識し学校の中でもウェルビーイングを作っていく、これからは学力保証と子ども達のウェルビーイングの指標が非常に重要になると思っています。

うるま市では、子ども達が人と関わることで自分自身を表現したり、友達との関わりを通して心を豊かにしてしていく事、非認知能力であったり社会情動スキルというところを政策として取り組んでいます。ただそういう指標はなかなか取りづらい、成果としてなかなか上がりづらいので、点数では見えない子ども達の情緒的な部分、意欲的な部分、楽しいやワクワクといった気持ちをどのように指標としようか探っていたところがあったので、ネット部活を通して子ども達が歩んできた過程の中でウェルビーイング指標を取り入れて、うるま市が目指す所と事業が目指す所を連携して見出していけたらいいのかな?と思いました。

彩橋小中学校でのGoogleスライドを使った学校紹介クイズ大会発表の様子

ネット部活における「子どもウェルビーイング」の指標設計について

ー 今までは学校内でしか作れなかった親友がインターネットを通し学校や学年を超えて作ることができる、ぬちどぅし(心友)に出会えることは子どもウェルビーイングの指標になるのでは?と議論していたと記憶しています。どこに重点をおくかという所は大変だったと思いますが、どのように指標を設計していったのですか?

下向:ウェルビーイングを考える時に色々な理論がありますが、ポピュラーな考え方にPERMA(パーマ)があります。PERMAはそれぞれ頭文字をとった言葉であり、
Positive emotion:ポジティブな感情
Engagement:物事への積極的な関わり。ネット部活で言うと制作に夢中になれる事。
Relationship:他者との関わり。ここがぬちどぅしに関わる部分。
Meaning:人生の意義。生きることが楽しい。物事に取組む意義を自分で感じられている。
Accomplishment:達成感。できた!と言う高揚感や自己肯定感の部分に近い所。
その5つの柱を軸に考えて設計しました。

ー うるま市ネット部活の掲げる指標で特徴的な部分はありますか?

下向:どういったことに没入しているか。没入するきっかけは何だったのか。あとは「ぬちどぅし」リレーションの部分ですね。限られた人間関係の中で過ごしてきた子達が多い中、どのような変化が起きているかという部分をみとる事に注力しています。

ー 設定した指標の結果はどのように取りますか?年度の初めと年度末の差分で測りますか?

下向:指標は年度初めに設定し、中間、年度末に結果を取ります。量的な調査だけではなく質的な調査も重要であり、回答の裏にある出来事、経験、感情の動きの部分の調査結果も取っていきたいです。私の中に仮説として持っている事ですが、ポジティブな感情であったり、自己認知や自己マネジメントの部分が高まってくると、学力や学校出席率が自ずと伸びていくと世界的な研究でも見えている事なので、ウェルビーイング指標だけでは見えていない間接的な所にもインパクトがあると思っています。

彩橋小中学校でのポスター制作の様子

ー 教員の関わり方が今後変わってくるのでは?と感じますが、儀間さんはどのように思いますか?

儀間:先生達にとってもウェルビーイングと言うのは大事な視点だと思っています。子ども達だけではなく先生達も周りと関わりを持ち活動を楽しみ没入間を得たり、大人もワクワクする姿も大切だと思います。子どものウェルビーイング、先生達のウェルビーイングで学校が変わると、そこから地域、うるま市全体のウェルビーイングに繋がっていくのではないかと思うので、この事業をきっかけにウェルビーイングの輪を広げていけたらいいと思っています。

下向:そうなんですよね。子どもウェルビーイングと言うと子どもだけのウェルビーイングの話に感じてしまいがちですが、地域社会のウェルビーイングの話でもあります。子ども、先生、学校のウェルビーイングが高まると地域のウェルビーインが高まる、教育という所でだけではなく街づくりにも関わってくる事だと思いますね。

儀間:ネット部活を通して子ども達のウェルビーイングの指標をとっていますが、関わっている私達やスタッフを含めた大人達も、繋がりを持ち没入しワクワクしながら事業を進めていきそこで生徒が花開いていく姿を見れるという所で、私達大人のウェルビーイングにも繋がっていると感じます。

下向:子ども達の作品を見ると、ネット部活の中で花開いた部分もあると同時に、地域の中や日々の暮らし、学校での学びの中で撒かれた種を感じます。例えば伝統の音楽や踊りが盛んな地域と言うところもあり、地域のエッセンスが入った息吹を感じる作品だと。部活動だけではなく、子ども達の生活の中で感じた全てが混ざり合ったアウトプットが生まれることにとても感動し、この気持ちを味わえることが関わった大人達へのご褒美のように思います。

儀間:そうですね。昨年の音楽制作で発表した音楽が沖縄の伝統音楽を意識して取り入れられていて、聞いた時にゾクゾク、ワクワクしましたね。

下向:日々の暮らしの中で、地域の魅力や自分が持っている誇りがどこに刻まれているかは意識しないものですが、クリエイティブな創作を通して気づくきっかけになりますよね。自分自身気づきもあるし成果物を見た周りの人も気づく事ができて、改めて誇りを持つことできます。これもある種、子どもが没入しウェルビーイングが高まると地域のウェルビーイングが高まっていくという一つの流れでもあるかと感じます。

これからの取組や目指す未来

ー 最後に一言お願いします。

下向:地域には伝統文化や産業、職人さんやアーティストの方など素敵な人達や環境がたくさんあります。そういう方達と子ども達がドッキングし、クリエイティブな活動を通して共に地域の魅力を再発見し、感動し、アウトプットするといったことを子ども達と一緒にやりたいと思っています。この取組が経済活動に繋がるかもしれないという可能性も感じています。

儀間:行政という立場で、子ども達のやりたいこと、没頭できること、好きなことを通し子ども達が輝く場所を学校現場だけではない所にも作って行く。子ども達自身が地域の魅力を再発見し周りに発信する力を秘めていると感じているので、そこを花開かせ大人も一緒に成長しワクワク感を広げ感動に繋げていく取組ができたらいいなと思っています。
うるま市は今感動特区を推進しているので、行政だけではなく街ぐるみで感動を呼び起こすという所をやっていて、このネット部活で子ども達の感動が周りを巻き込んで地域全体に広がっていくという所を目指していきたいと思っています。

部活生が作成したうるま市観光ポスターをうるま市内7箇所にて掲示(写真はあまわりパーク)

自治体・行政・民間・学校が「新しい教育のカタチ」として協力し、取り組む熱意が子ども達にも伝わり、子ども達と大人達がお互いにパワーを送り合い、楽しんでいくことで地域のウェルビーイングに繫がる。皆で子を育て地域を盛り上げていき、うるま市感動特区を作り上げていく話を聞いてこれからのうるま市がとても楽しみだと感じました。

また前編・後編とインタビューをする上で、大人も真剣に悩み・考え何よりも楽しむという情熱を感じ、話を聞きながら私自身も力をいただきました。
素敵なお話を聞かせていただき、ありがとうございます。

こちらのインタビューは前編後編に分け、Youtubeで動画配信もしています。
前編ではネット部活に参加している平敷屋小学校の兼島校長先生のインタビューも収録しております。

ネット部活に期待することや先生が感じた生徒の変化、目指す未来について伺っています。ぜひご覧ください。

◎前編

◎後編

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