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【前編】うるま市ネット部活✕こどもウェルビーイング|沖縄県うるま市発の新たな教育の“カタチ”「ネット部活」とは

2023年6月に岸田首相が発表した骨太の方針へ新たに掲載され、社会やメディアからも注目を受けている「子どもウェルビーイング」。沖縄県うるま市で取組んでいるネット部活でも、子どもウェルビーイングの向上を今年のキーワードとしています。
前編は「ネット部活について」をテーマにうるま市ネット部活を主催・企画・運営しているうるま市教育委員会、角川ドワンゴ学園、株式会社roku youの担当者をお招きしお話を伺いました。

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<前編>
うるま市教育委員会 儀間芳奈さん
学校法人角川ドワンゴ学園 温山陽介さん
株式会社roku you 下向依梨さん

メッセージ:平敷屋小学校 校長 兼島 栄さん 

聞き手:石川レン
文:つはたかこ
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うるま市ネット部活はなぜ島しょ地域からスタートしたのか。活動紹介とそれぞれの役割。

ー うるま市島しょ地域からスタートした「ネット部活」とはどのような活動をしていますか?

温山:うるま市ネット部活とは、うるま市の島しょ地域にある小中学校で行っている放課後の課外活動で、特徴は学校横断型の活動という点です。現在はうるま市内の小中学校5校と角川ドワンゴ学園のN中等部が参加をしていて、毎週月曜日に生徒達がオンラインで参加をし学校横断でコミニュケーションをとっています。メインの活動はデジタルコンテンツの制作です。昨年度はVチューバーやネットインフルエンサーの方をお招きし交流もしました。今年度はこれまでのところ、うるま市の観光ポスターの作成や音楽制作をしています。ネット部活という名の通りインターネットをフルで活用し、交流やクリエイティブな取り組みをしています。

2023年度 うるま市ネット部活体制図

ー それぞれがどのような役割で活動に参加しているのかを教えて下さい

温山 陽介(学校法人角川ドワンゴ学園)|学園HP:https://nnn.ed.jp/

温山:子育て世代が減少したり学校も少なくなってきていたりと、地域として大きな問題である人口減少により子ども達が普段の生活で会う人の幅も少なくなってしまうため、どうしても得られる経験の幅が狭くならざるを得ないという状況が課題としてありました。そこでICTを活用した特色ある学校作りを手伝って欲しいと教育委員会より角川ドワンゴ学園へお声がけをいただき、一緒に始めることとなりました。

下向 依梨(株式会社roku you)|公式WEBサイト:https://www.roku-you.co/

下向:rokuyouは沖縄県内で学校がより良い場になるような事業作りや学校作りをしています。角川ドワンゴ学園が運営しているN高等学校の本校はうるま市の伊計島にありますが、うるま市ネット部活に関わる角川ドワンゴ学園のメンバーは県外を拠点にしている方が多いので、現地で生徒達を盛り上げながらプログラムをサポーターとしてお声をかけていただきました。またプログラムを実行するだけではなく、県内の企業や人材とのコネクションをしっかり作っていく役割も担っていると思います。

儀間 芳奈 (うるま市教育委員会)|公式WEBサイト:https://b-uruma.edu.city.uruma.okinawa.jp/

儀間:私は教育委員会に入ってすぐにうるま市ネット部活の担当となりました。ネット部活2年目の年です。実は以前にうるま市で教員をしていまして、15年ほどで3校の学校を周りました。現在うるま市ネット部活に参加している彩橋小中学校に4年間勤務していた繋がりで、彩橋の子どもたちを盛り上げて欲しいという所からネット部活を知り、参加したのが経緯です。今までは教育現場でプレイヤーとしていた所を、今度は行政という立場から関わる事ができる所が魅力的だと感じています。

下向:儀間さんは学校で勤務されていたので、ネット部活に参加している中学生が小学生の時を知っていらっしゃるんです。

儀間:そうなんです。子ども達の成長を間近で見させていただいております。

ネット部活を通して感じる子ども達の変化

ー 子ども達の成長を間近で見ている中で、ネット部活導入後に子ども達が変わったと感じることはありますか?

儀間:かなり大きな変化があったと感じております。ギガスクール構想が始まり生徒1人に1台パソコン端末が導入され、初めて校外の子ども達と繋がるという経験をした世代の子ども達ですが、1年目はほぼ全ての子たちがオンライン上のコミュニケーションツールでカメラをオンすることができず、声も出せずにチャットで呟いていました。オンラインで自己表現をする機会もなく自分に自信が持てない子ども達がカメラをオンにして自分の顔をだす、表現の第一歩が踏み出せない現状がありましたが、3年間を通してカメラをオンにして顔を出せるようになり、質問をする、意見を出す、チャットで自ら繋がろうとする意欲が現れてきたなと思っています。ICTを介して人と繋がり自信を見出し自己表現ができているといった変化を大きく感じています。

下向:島の学校は陸上やバトミントンのような生徒の数か少なくてもできる部活動が主で、その中には自分の心が乗りきれない「私の好きなことや興味のあることを一緒に語れる友達はいない」といったどこか孤独感や疎外感を抱いている子もいると感じていました。そのような子がネット部活に参加し、ネットを介して他校の生徒と繋がることによって共通の話題を話せる友達が増え、居心地の良さや安心感を得ている子どもたちが多いと感じています。心から楽しみ、その気持ちを仲間と分かち合える喜びを感じているなと。子ども達のイキイキした姿は大きな変化だと思っていて、それが「学校に行きたい!」という気持ちや「生きているのが楽しい!」というレベルで大きな影響に繋がっていくのではと思います。

ー 卒業生も含め「この子すごく変わったな」という具体的な事例はありますか?

儀間・下向:変化を感じた子は沢山います。何人もの子どもたちの顔が頭に浮かびますね。

下向:儀間さんが彩橋で教員をしていた時の教え子Hさんのお話をしましょう!

儀間:Hさんは小学校2年生の時に担任をしていました。Hさんは特に体育会系ではありませんでしたが、彩橋小中学校では運動部が中心。Hさんの好きな事は学校ではなかなか出せていなかったのかなと感じました。というのも、ネット部活で再開した時には自分の言葉で「僕はこれがやりたいんだ」と語り、イベントでゲストがいらっしゃた時は必ず手を挙げて質問をしたり発表をする。自分の好きなことを学んでいくことで自信に溢れた彼に成長していく姿が印象的でした。また彼の姿が今度は後輩たちに大きなパワーと影響を与えていると非常に感じています。現在は中学校を卒業し部活動も引退しましたが「ICTを使って自分の能力を発揮したという自己表現の部分も認められ、第一志望の高校に入学することができました」という報告もいただきました。

ー ー ネット部活を導入している平敷屋小学校の兼島 栄校長からのメッセージをご紹介。

兼島 栄(うるま市立平敷屋小学校 校長)|学校HP:https://e-heshikiya.edu.city.uruma.okinawa.jp/

ネット部活には情報リテラシーやスキル向上だけでなく、子ども達の視野の拡大や様々な出会いや体験、自己有用感が高まることによりウェルビーイングに繋がっていく事を期待しています。また平敷屋小は同じ学級でずっと進級していくので、よく発表する子や物静かな子という固定概念を外していき自分のできることをどんどん広げていく魅力ある取組だと思いますので、子ども達の持っている力を伸ばしていくいい機会だと感じています。実際にネット部活に参加をし、子どもたちの表情が明るくなり落ち着いてきたり、県外の子ども達と交流したいという生徒も出てきたりと意欲的な面が見られるようになったと感じており、子ども達の将来の希望につながっていくと感じています。地域がもっと活性化し地域にもっと元気が出るような、そんな取組に繋がっていくといいと思っています。

うるま市ネット部活が描くビジョン

ー ネット部活の今後の目標を教えてください。

温山:子ども達のこれまでの成長を見ていると「自信を持つことができる」「自分の居場所を見つける」という点が見えてきました。子ども達自身がイキイキとした生活を送っていく事で、これからの人生に希望を持ち自分の力で未来を切り開く。原動力のような物を1つ生み出していくお手伝いができているという事だと思っていて、今年のキーワードとしてスタートした「子どもウェルビーイングを高める」という所に役立っているのではないかと思っています。これまで通り子ども達の自己肯定感をもっと高めてあげる事はもちろん、部活生以外にも「このイベント楽しそうだからフラッと来てみました」というぐらいの気軽な感覚で参加できる機会を増やしてあげたいと思っています。同時にもっと色々やりたいと言うコアなメンバーの気持ちにも答えられるような、部活の場所作りもしていきたいと思っています。自分が作った音楽やポスターや動画を地域で発表できる環境作りであったり、企業から依頼を受けて制作するといった事ができると子ども達の気持ちにも応えられるのではないかと考えています。

島しょ地域に暮らす子ども達が、ICTを活用し校外の生徒や大人と交流であったり、様々な企画・コンテンツを通して自信を持ち、目に見えて変化していくというお話がとても心に響きました。オンライン上で部活仲間ができるのは今の時代ならではだと感じますし、子ども達の居場所作りにも繫がる素敵な活動だと感じました。

後半に続きます。

【後編】うるま市ネット部活✕こどもウェルビーイング|キーワードは「ぬちどぅし(親友):



こちらのインタビューは前編後編に分け、Youtubeで動画配信もしています。
前編ではネット部活に参加している平敷屋小学校の兼島校長先生のインタビューも収録しております。

ネット部活に期待することや先生が感じた生徒の変化、目指す未来について伺っています。ぜひご覧ください。

👇前編動画👇




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