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♯9 アーセナルに足りないもの     最適なキャプテンは誰なのか

 今回はオーバメヤンの規律違反でマイナスのムードが漂っているアーセナルに足りない点を3つに分けて勝手に考察していこうと思う。

1.キャプテンシー

 オーバメヤンのキャプテン剥奪が発表され、次期キャプテンに誰がなるのかはまだ決まっていない。おそらくしばらくはラカゼットあるいはジャカが務めていくだろう。だが、キャプテンの問題はオーバメヤンのキャプテン剥奪以前からあるのだ。オーバメヤンの前にキャプテンを務めたジャカも19-20シーズン第10節のクリスタルパレス戦で途中交代となった際に、ファンのブーイングにイラついてファンを煽り、そのままロッカールームへ去ったことが原因でキャプテンを剥奪されている。さらに言えば、その前のキャプテンであるコシェルニーも最終的にクラブと喧嘩別れのような形でチームを去っている。

 今のアーセナルにベテランの力は期待出来ない。となると長期的に考えても、若手にキャプテンを任せるべきだろう。前所属のセルティックでキャプテンを務めた経験もあるティアニーやノルウェー代表でキャプテンを務めているウーデゴール辺りに任せるのが理想的だろうか。ラムズデイルや冨安に任せてみるのも面白そうだが、入団1年目である点を考えると先述した2人の方が可能性は高い。

 私のイチオシはスミス=ロウ。もちろんまだ21歳と若く、キャプテンの重圧もあるだろう。しかし、スミス=ロウは今シーズンから10番を背負ってプレーしているが、そのプレッシャーに負けない活躍を見せており、既にリーグ戦で5ゴールを挙げる活躍を見せている。アーセナルでキャリアを終えたいと述べていた彼がキャプテンに任命すれば、アーセナルファンは歓喜するだろう。(私もその1人である。)可能性はまだ低いかもしれないが、キャプテンになるだけの資質は十分だと私は考えている。むしろキャプテンになることでプレーにより責任感が生まれ、さらに化ける可能性すらあると思っている。

2.点の取れるCF

 これは前のnoteでも言ったことだが、アーセナルには点の取れるCFがいない。もちろんアルテタの攻撃の仕方に問題があるとも言えなくはないが、やはり他の上位陣と比べるとどうしてもCFの質は落ちるだろう。オーバメヤンが規律違反+アフリカネーションズカップでいなくなるだけでなく、ラカゼット、エンケティアも来夏には契約満了を迎えるため、質、量共に不足していると言える。

 1番の解決法は来夏、あるいは今冬に一級品のストライカーを取ることだろう。とは言え、冬にそのような選手を取れるとは思えないし、私のイチオシであるカルバート=ルーウィンはそもそも怪我で離脱中である。

 だが、他にも方法はある。それはガブリエル•マルティネッリのCF起用である。18歳でアーセナルに加入するポテンシャルの高さは本物で、加入初年度の19-20シーズンに早速公式戦二桁得点を達成している。怪我の影響で停滞していた分サカやスミス=ロウに先を越された印象だが、元々はこの2人よりも先に活躍をしていた印象がある。今シーズンも序盤は出番がほとんどなかったが、直近のリーグ戦では4試合連続出場中で、その間に1ゴール•2アシストと結果を出している。ここにきて復調してきた感があるが、全てウイングでの起用である。もちろんウイングでも文句なしの活躍をしているが、私はCFで彼を起用するのもアリだと思っている。19-20シーズンに彼が起用されたポジションはCFだったし、得点能力や動き出しの質も高い。かつてはアンリやファン・ペルシーがウイングからCFにコンバートされて大化けしており、マルティネッリがその系譜を引き継ぐ可能性は大いにある。幸いにもアルテタはラカゼットをトップ下で起用したりなど、選手のポジションを変えるタイプであり、ウエストハム戦でそのような形が見れる可能性もなくはない…と期待する。

  個人的にマルティネッリはオーバメヤンとラカゼットを足して2で割ったような選手になるのではないかと思っている。オーバメヤン同様スピードと得点力を兼ね備えている選手ではあるが、彼はそれだけではない。ラカゼットのように前線から下がってきてパスを受けたりすることも出来る。また、ニューカッスル戦のゴールでも分かるように動き出しの質が高い。得点力だけでなく、守備での貢献度も高いのも魅力である。そのため、アルテタが構想しているCFに近いことが彼には出来ると思っている。年齢も20歳と若く、今のアーセナル像にもマッチする。

3.試合に対する意識

 私は昨シーズンのリーグ戦を見ていてイラついたことは何度もある。だが、当然選手や監督のことはリスペクトしているのでアーセナルを悪く言うことはない。ただ、昨シーズンの第32節のフルアム戦ではイラついたと言うよりも少しガッカリしたのだ。この試合アーセナルはVARに振り回された。前半のセバージョズのゴールはその前のプレーでサカの位置がオフサイドだったため取り消された。たらればはあまり言いたくないが、今シーズンなら確実にゴールだったはずだ。そして後半59分にはガブリエルがレミナを倒してPK。その前にオフサイド疑惑があったが、VARの結果オンサイドに。そもそもPK自体が微妙な判定ではあったと私は思ったが、これを決められて先制される。しかし、後半ロスタイムのほぼラストプレーでエンケティアが押し込んで土壇場で1-1の引き分けに持ち込んだ。ただ問題はその後である。エンケティアを中心としたアーセナルの選手はあろうことかゴールに喜びを爆発させたのだ。フルアム相手に引き分けで喜ぶ姿を見た私は失望した。確かにもう時間はほぼ残されていなかった。だが、相手は降格圏にいたフルアム(最終的にフルアムは18位で降格)なのである。それもホームでの試合だ。アーセナルなら勝って当たり前の試合なのである。(フルアムファンの方には大変申し訳ないのですがご了承下さい。)

 そして同様のシーンは今シーズンも見られた。第8節のクリスタル•パレス戦である。この試合は開始8分にオーバメヤンが先制し、優勢に試合を進めていた。しかし、後半から雲行きが怪しくなり、50分にベンテケ、73分にエドゥアールに決められ逆転される。そして、フルアム戦同様、後半ロスタイムにラカゼットが押し込んで同点に持ち込んだ。この試合でもラカゼット含むアーセナルの選手たちは喜びを爆発させ、誰1人ボールを拾うものはいなかった。言い方は悪いがアーセナルは落ちぶれたなと思った瞬間でもあった。もちろんもう時間はほぼ残されていないし、土壇場で勝ち点1を得られたのだから喜ぶ気持ちは分かる。だが、クリスタル•パレス相手にホームで引き分けて喜ぶアーセナルファンなどいないし、勝つべき相手なのである。(クリスタル•パレスのファンの方大変申し訳ございません。)結果に関わらず、この試合に勝ちにきているという熱意が私は見たかったのである。記憶が曖昧だが、過去には同じく後半ロスタイムに、当時プレミアにいたボーンマス相手にジルーがゴールを決めて3-3に追いついた試合があったが、その時はゴールパフォーマンスをしたジルーにチームメイトが怒って早く自陣に戻るように促していたのを覚えている。まさか過去のアーセナルの方が優れている点があったとは驚きである。

 マンC、チェルシー、リバプールは同じ試合展開でもそのようなことはしない。(そもそも下位チーム相手にリードを許すシーンが少ないが。)この3チームは常に勝利を考えている。実際、第7節のリバプールとマンCの一戦では、アウェイで2-2に持ち込んだマンCがその後も3点目を奪いに果敢に攻撃していたシーンがとても印象的だった。

 そしてアーセナルのもう一つの問題点は、点取った後途端に勢いが無くなることである。ノリッジ戦、バーンリー戦、ワトフォード戦はいずれも1-0で勝利を収めたが、得点後は相手に何度かチャンスを与えていた。相手との実力差を考えればもっと得点を取るべきだし、チャンスを与えるべきでもない。幸い、今シーズンのアーセナルは守備陣の活躍もあり、そういった試合でもしっかり勝利を収めているが、当然上手くいかない試合もある。クリスタル•パレス戦とマンU戦では先制するまではとても良かったものの、その後は停滞し、失点を許している。また、アーセナルは前半に複数得点を決める試合もあるが、そういった試合では後半になるとペースが落ちる。スパーズ戦やレスター戦がそのいい例で、前半の調子を維持していればもっと大差をつけて勝てたはずである。

 上記の3チームはこのようなケースが少ない。当然どのチームにも勝利を狙うし、自チームが何点とっていようと得点を狙っている。リバプールは16節時点で既に45得点も決めているし、チェルシーもノリッジに7-0で快勝した試合がある。マンCも前節リーズに7-0で快勝している。(この試合はリーズが勝つと予想して大外れしたので非常に恥ずかしい。)

 これらの意識の違いが、アーセナルが上位陣相手に全く歯が立たない理由の一つでもあると私は思っている。

 今のアーセナルに足りないのは勝ちに対する意欲と得点した後もさらに得点を狙う意欲である。かつてのアーセナルは強力な攻撃陣を擁した一方で守備に不安があったが、今シーズンはその逆だ。チーム状況は間違いなく2.3年前よりも良いが、上位チームとの差を縮めるためには攻撃への意欲がカギになるだろう。

 最後に

 だが、今のアーセナルの状況はCL圏を逃した16-17シーズン以降では間違いなくベストといえるし、ポテンシャルだけでいえばここ10年で1番といえるくらいのチームだと私は思っている。後は、チームをまとめるキャプテンシーと、かつてのアーセナルが見せた流れるようなパスワークからの得点(サウサンプトン戦の1点目のようなシーンが何度も続けば理想的)が見られれば、私としてはもう言うことなしである。




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