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うろこ流! 小説の書き方講座 #8[いい書き出しって?]


 どもどもー! 「苗字で一文字ずつ変換とか面倒くさそう」でお馴染み洞施(うろせ)うろこです。ちなみに自分はスマホ・PCともに辞書登録してます★
 普段はオニーサンたちがオーマイラヴィしている小説やそのオニーサンたちのイラストを書(描)いたりしながら、Twitter・投稿サイト界隈を放浪しています。

 小説書き歴が長い素人が初心者向けに送るTHE・我流小説講座。今回はTwitterでいただいたお題『書き出し』について考察、お話したいと思います。めいきっとはぷん!


第八回『いい書き出しって?』

 ストーリーも練った。キャラクターも決めた。プロットも書いた。さあ、いよいよ本文を書くぞ!
 ……となってペンを握り……握り――

 ああもう、全然書き出しが浮かばなーいっ!!

 なんてこともありますよね。

 書き出しは正しく小説の顔。ファーストインプレッション。ここを独創的に、魅力的にしたい。
 そう思うのは最早必然。冒頭からストーリーにガッと引きずり込みたいところです。

 では、いい書き出しってなんでしょう。……そう聞かれるとなかなか難しいですね。

 まずは書き出しの傾向を見つつ、色々と考察してみましょう。



・先人はどんな書き出ししてる?

 書き出しは十人十色……どころか、同じ作者でも作品によって違うので十人万色くらいあるでしょう。
 なので一行目をみて、

【台詞】

【語り手(語り手自身・三人称一元視点のカメラワーク)を中心にした描写】

【その他(語り手を追うカメラではない背景や手紙・告白・ポエムなど)】

 という風にざっくりした3カテゴリに分け、あちこちから集計してみました。

※購入した小説(商業誌や文学作品)

49作品中……

【台詞】      7作品(14%)
【主人公中心視点】 25作品(51%)
【その他】     17作品(34%)

 購入した作品は、近代文学が多めです。純粋に小説のみを計上。中にはライトノベルや海外文学もあります。
 主人公中心ではない情景描写の割合がそこそこあります。クトゥルフ神話なんかは舞台になる町の描写や年代が多かったです。


※なろう作品(ランダム選出)

69作品中……

【台詞】      22作品(31%)
【主人公中心視点】 37作品(53%)
【その他】     12作品(17%)

 ランキングからサンプルを選出しました。なろうは台詞から始まる小説が結構多いですね。書き出しを台詞で始める利点は後ほど。
 異世界ものが多いので【その他】も多いかもと予想していたのですが、そんなことはなかった。


※その他投稿サイト(複数)

36作品中……

【台詞】      6作品(16%)
【主人公中心視点】 25作品(69%)
【その他】     5作品(13%)

 サンプルを取ったのはアルファポリス・カクヨム・ノベプラ・pixivです。デイリーランキングから。
 【主人公中心視点】の比率は購入作品やなろう作品よりも高めですね。


※うろこ作(公開済・ショートストーリーも含む)

50作品中……

【台詞】      6作品(12%)
【主人公中心視点】 40作品(80%)
【その他】     4作品(8%)

 偏りが酷いのはサンプルが一人に固定されてるからでしょうか。謂わば癖? 個性のようなものかも?
 もしかしたら作家別でサンプルを取ったら偏るものなのかもしれないですね。

※全体

204作品中……

【台詞】      41作品(20%)
【主人公中心視点】 127作品(62%)
【その他】     38作品(18%)

 全体では6割が主人公を中心とした視点からの描写でした。書きやすいですからね。分かります。

 サンプル数が端数なのは単に私の体力がないからです……きっちり50作品ずつとかにできればよかったのに、とちょっと後悔中……

 それはさておき。集計結果はこうなりました。次に、書き出し方の説明に移りますね。



・台詞で始まる書き出し。

「これって、興味を引くにはピッタリじゃない?」

 といった風に始まる書き出しです。

 視点の主に語りかけるような台詞や、主人公が漏らした言葉からの始まりなので、どういう状況なんだろうかと興味を引くことができますね。

 その反面、安易に使われているような印象も。初心者にも使いやすいので仕方ない気がします。

 この書き出しはとても楽に書けるのですが、どうしても出オチに見えがちなので、印象に残る書き出しにはなりにくいというのが残念な点かもしれません。
 それこそ『この台詞に全てをぶつける!』くらいで初めて読者の記憶に残るかも。

 ストーリーに興味を持たせる『呼び水』の感覚で使うのがベターだと思います。


・語り手の視点からの描写。

 どう進めたものか、そう迷う手が操るのはキーボードではなくマウスの方だ。

 と、このように語り手視点からの情景や心理描写から始まります。書かないと講座も進まないというのにTwitterやらnoteを見てしまいますね。ダメですね。

 書き出しとしては穏やかな印象ながら、ストーリーの伏線を込めることも可能です。
 上手くハマると「こういうことだったのか!」なんて驚きも引き起こせちゃうので、工夫しがいがありますね。

 統計の数値が示す通り全体の半数以上がこのタイプの書き出しなのは、書きやすさに加えて伏線を仕込んだり、ミスリードを誘えたりする利便性もあるからだと思います。
 使い勝手はかなりいいのではないでしょうか。



・その他、世界観の説明や手紙形式、ポエムなど。

 みなが平和の意味を見失うほどに平穏な国、日本。
 あなたがこれを読んでくださってることを祈って、この記事を書いています。
 夜の帳が呼ぶは深層なる叡智か
 若しくは暗澹たる無知か――

 こういった、語り手からは離れた情景や情報ですね。自分のポエムの才能がこわい(酷すぎて)

 ファンタジーやSFなどの世界観を説明するのに有用な書き出しだと思います。
 それもあってか、クトゥルフ神話や時代小説なんかでもよく目にしました。

 スッと世界観の表現に移れるので、物語の舞台はここですよ! と読者を観客席に座らせることができる反面、感受性に訴える力は弱め。
 観客の心を掴むまでには時間がかかるでしょう。



・印象に残る書き出しって?

 物語の全体を通して、読後に改めて「すごい書き出しだった……」となる作品がありますよね。
 パッと見て一文で惹き込める感性揺さぶる書き出しも。

 これらはどうやれば生み出せるでしょうか。

 感性は人によって様々なので、こちらに言及するのはなかなかに難しいです。
 ただ、五感に訴える文であったり、小説全体のテーマを匂わせるような比喩表現だったりすると惹き込まれやすいと感じます。

 読後に改めて、というパターンで私が強烈な印象を持った書き出しは『ドグラ・マグラ』でした。
 『ドグラ・マグラ』は、

胎児よ
 
胎児よ
 
何故躍る
 
母親の心がわかって
 
おそろしいのか

 という巻頭歌から始まるのですが、物語を読み終えると改めてこの歌に含まれる狂気を感じ取ることができます。
 そして、本文の書き出し、

 …………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。

 という唸るような音は物語の締めにも使われています。物語を読破した後、この書き出しに絶望を覚えるようになりました。忘れようにも忘れられない。

 飽くまで物語を読んでもらうこと前提になってしまいますが、書き出しが物語全体と深く繋がっていると強く印象付けられますね。

 少々言い方は悪いですが、これは計算で印象を強められる書き出しですので、一考の価値ありではないでしょうか。



・初心者にも書きやすいものは?

 計算尽くでというのは初心者には厳しい。そう思いますよね。
 なので、まずは読者を物語に誘い込むことに重点を置きましょう。

 そこで避けるべきは『世界の説明』です。

 舞台が現実から遠い世界設定の時にやりがちですが、とにかく「こういう世界なんです!」とひたすら説明してしまう。
 正直、読者として言わせてもらうと悪手です。

 新しい家電やゲームを手に入れた時に、最初に分厚い説明書を細部まで読み切ってから使えと言われたら、どう思います? 上がっていたテンションが急に萎んでしまいませんか?
 中にはそれが当たり前と感じる人もいるでしょうが、どちらかと言えば少数派。多くは使いながら読んだり、人によっては全く要らないという意見もあります。

 このように、早く物語に入り込みたい読者にとって長々と読ませられる設定は苦痛になりかねません。
 世界設定は必要になった時に適宜出すとして、まずは読者をさくっとストーリーへ誘導しましょう。

 読者をストーリーへと誘導する時に有効なのは『感覚に訴える』こと。
 波の音が聞こえたり、甘い香りがしたり、指先にパチッと弾けるような痛みが走ったり――
 誰もが経験したことのあるような感覚。それがあれば、場面を想像する手助けにもなります。没入感を生み出すためにも、感覚へのアプローチ、上手に使ってみてくださいね。



 いかがでしたか? 今回は『小説の書き出し』について、書き出しの傾向から、印象に残す手法の一つ、そして初心者が使えるポイントを挙げてみました。
 書き出しも個性が表れる部分なので、自分なりに研究しながら磨いてくださいね。

 次回は使い古された議題ながら、なかなか答えの出せない『読みやすい文章って?』について、かなり個人的な観点からお話したいと思います。

 ではではー、またお会いしましょう。洞施うろこでした。


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