バイロマアセク、そのうちの1個体の話

はじめに

 私は、恋はしたいが性愛はいらないと考えている。この話はもう自分の中で収まったと思っていた。しかし、ここ一か月くらいだろうか?自分のこの性質について考えることがまた増えてきている。この話は「解決する/しない」ではなく「悩みである/ない」という軸で考えるべきだと思っている。というのも、今の私が思いつく解決法はせいぜい「性愛を『克服』する」か「性愛抜きで恋ができる」かくらいだ(ここでは克服という言葉を使っているが、克服していない状態を悪いものと捉えているわけではない)。そのどちらも、今の私には厳しいものである。そのため、この性質を悩みと捉えるか捉えないかという軸で考える。

経緯

 恋はしたいが性愛はいらない。私が自身をロマンティックアセクシャルではないかと思うようになった×年前。その頃、私はある人間に好意を寄せていた。しかし、その相手に触れたい、触れられたい、その相手と性的なことをしたいという気持ちは全くなかった。しばらくの間、このことが頭から離れず、なかなか寝付けない日々が続いた。
 ハグをしたいのが、キスをしたいのが、性行為をしたいのが普通らしい、でも私はそうじゃない。私がただピュアで貞操観念が強く奥ゆかしい人間であるというだけなのだろうか。恐らく私はそのいずれにも該当しないのに。だったら、異常なのだろうか。けれど私にはその、どうやら多数派らしい価値観の方が変わったもののように思えて仕方がない。でも世界はそういう風に回っているらしい、じゃあやっぱり私って異常なんだろうな。
 このようなことを毎晩毎晩考えて眠れない日々をどうにか抜け出したのは、自分と同じような性質の人が自分以外にも存在しているということを確認したおかげだった。「性質を細分化してそれぞれに名前をつけること」の必要性を感じた。名前さえ分かれば、同じような人たちと繋がることができる。インターネットが普及した今日での、性質へのラベリングの有用さを強く感じた。無論、それに縛られてしまうことは避けたいが。
 そして私は、毎晩ぐっすり眠ることのできる暮らしを取り戻した。誰にも好意を寄せていない状態となったのもその一因かもしれない。なんにせよ、この性質を悩みと捉えないまま過ごすことができた。これが私の、解決できない中での最善の状態だった。

済んだ話?

 済んだ話だと思っていたこの性質が悩みの座に返り咲いてしまったのは、自業自得でもあるかもしれない。いや、自業自得ではないか。
 私は彼女が欲しいなと思った。そこで、インターネット上、というか出会い系に出会いを求めた。出会いって書いてるし。
 この人はバイセクシャル。趣味も似ていそう。この人はレズビアン。服装がすごい好き。どこの服なんだろう、気になる。しかし、予想はしていたものの、ロマンティックアセクシャルと書いている人は誰一人いなかった。こんな田舎からある程度近い場所に住む人間はさほど多くない。母数が少ないわけだから、割合の少ない性質の人間が見つからないのも頷ける。では、私はどうすればいいのか?こんな田舎でロマンティックアセクシャルの人間を一生懸命探すよりも、そうではない人間の中から気の合う人間を見つける方が早いのではないか。そう思って私は、マッチ(お互いにいいねを押すことで成立し、これによりメッセージの送受信が可能になる)した人間とやり取りをした。趣味が合う人、質問を投げかけてくれる人、文面でのノリが好きな人。仲良くなれそうな人もそれなりにいそうだ。嬉しい。そう思ったが、それと同時に申し訳なさがあった。
 その申し訳なさの淵源は確実に、「恋はしたいが性愛はいらない」気持ちだった。この人たちとちゃんと仲良くなれて、何かの間違いでどなたかと交際できたとして、相手は性愛を必要とする可能性が高いのではないか?そうであれば、互いの要求は両立し得ないものであり、すぐに関係は破綻してしまうのではないか?それだけでなく、相手は「騙された」と思うかもしれない。それか、「相手にどうしても合わせることができない」と思うかもしれない。そう考えると、どんどん「こんな性質の人間が出会おうとしてごめんなさい」という気持ちになっていった。

おわりに

 このようにして、私の悩みはぶり返してしまった。自分で出会いに行って勝手に傷ついているから、やはり自業自得ではないか?そうも思ったが、この性質が「克服」できないものとすると私は恋をしようと重い腰をあげることがいつでも許されなくなる。いや、許されないのか?分からない。

余談

 夜中にどうしても苦しくなり、この文章を作成している。未だに私は、好きな人間に対して性行為をしたいという欲が湧くなんて都市伝説では?と思っている節がある。最悪だと思ってくれてもいいのだが、それが支配欲からくるものであるならば、ギリギリ理解は出来る気がする。共感はしないけど。身体に対するものすごい侵害って感じだし。でも、愛から来るのはよく分からない。最悪か?

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