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3DS『大逆転裁判-成歩堂龍ノ介の冒險-』感想

御先祖様の人生ハードモードが過ぎない?

プロローグ

時は19世紀末。
和洋入り交じる大日本帝国、その帝都勇盟大学に在籍する一学生の成歩堂龍ノ介は、外国から招かれた医学教授ジョン・H・ワトソン殺人事件の犯人と疑われる絶体絶命の危機に陥っていた。
幸い学生でありながら弁護士の資格と実績を持つ親友・亜双義一真が弁護を引き受けてくれたが、もし成歩堂に有罪判決が下されたら目前に控える彼の司法留学は永久的に取り消されてしまう。そこで成歩堂は自分で自分を弁護し、亜双義の手助けもあり何とか無罪を勝ち取るが……。
紆余曲折を経て法に疎いながらも弁護士になることを誓った成歩堂は、亜双義の法務助士である御琴羽寿沙都と共に、世界一有名な名探偵にして大探偵シャーロック・ホームズとその相棒のアイリスを仲間にし、大英帝国で発生する不可思議な事件と虚実混交の裁判に身を揉まれながら、定まらぬ『弁護士』の在り方を模索する。

◆開発:カプコン
◆発売:カプコン
◆ジャンル:法廷バトル
◆発売日:2015年7月9日発売

始めに

『逆転裁判』と『逆転検事』を終えてやってきました『大逆転裁判-成歩堂龍ノ介の冒險-』! ちなみに3DSです。
「ネタバレ絶対見るな」が最初に出てくるゲームとして私の中では有名な本作ですが、まさか逆裁シリーズに手を出すとは思わなかったので、たぶんかなり重大なネタバレを既に1つ知っちゃってるんですよね……。まあいざ本作を進めていったら「この展開でどう私が知ってるネタバレに繋がるんだ」と、結果は知ってるけど過程を知らない故にまだ物語を楽しめるポテンシャル秘めパターンになったので、さしたる影響は無かったと言えば無かったです。でもこれからプレイするという方は全く何も知らないまっさらな状態で遊んでほしいと個人的には思います。

一応ネタバレ無しで事前に言えることといえば、

  • 本作の主軸とも言える事件は概ね判明する

  • でも全体的な細かい箇所の伏線は未解決。たぶん次作に持ち越されてる

  • 何だったら最後の法廷パート終わってもどこどこ増える

こんな感じですかね。


🐈本感想には以下作品のネタバレが含まれます。🐈

①システム / 探偵パート:何これ面白い🐈

①1-1. 基本

本作のハードは3DSですが、同じ3DSソフトの『逆裁5』『逆裁6』とは打って変わってメニュー項目のデザインが虫眼鏡・足跡といった分かりやすいアイコンではなく、DS版逆裁ソフトと同じ文字表示のみになりました。
ですがDS版よりデザインが凄く凝ってる。19世紀末の大英帝国(と大日本帝国)が舞台とあって、メニュー画面だけでなく台詞ウィンドウや法廷記録等どこを取ってもモダンでお洒落。眺めるだけで楽しい。
しかもただデザインが一新されただけでなく、《移動する》では上画面に各移動先の詳細説明と同行者キャラのコメント付きで行き先が選べ、その場所の調査状況でキャラコメも変化=調べ漏れが防げるし、逆裁5-6ではほぼカットされてた3Dモードの証拠品詳細も復活。一緒にいるキャラによって内容が変わるコメント差分が読めるの最高。

驚いたのは3DSの逆裁よりもキャラのモデリングと背景がかなり洗練されたものになってたところ。これ超良いです。男女どちらも格好よくて可愛い。特に毎話必ず可愛い女の子が出てくるのがたまりません。ジーナちゃんのビジュアルがツボです。
しかも一方のキャラが捲し立ててる間にもう一人がひっそり「?」と首を傾げたり、一人が話してる途中でにこにこ笑うともう一人も笑顔になったりと私がこれまで遊んできたADVの中でもダントツでキャラが動く。作中で最も動きまくってるだろうシャーロック・ホームズの動きは見ていて飽きません。それにこれだけ皆いきいきと動くのに全然かくついたりしないのが凄い。場面転換等の切り替わりにロードに少々時間かかりますが、途中で挙動不審になるよりかは遙かにマシです。
余談ですが私のお気に入りはティンピラー兄弟が証言中の隣の人物ガン見→その人が兄弟に顔を向ける→相手の動きに合わせてしらーっと明後日の方向に目を逸らす兄弟です。あのモーションでしでかした事全部許した。

唯一不便になったのはワンタッチで表示されてたバックログボタンが収納されたせいで、いちいちセーブデータ画面に移動しなければ読めなくなった点。早口演出のせいで読めなかった台詞を読むのが主な使用目的なのに、わざわざ記録画面に移動→バックログボタンを押すと無駄に一手間増えたのがうーんでした。ログへのショートカットも無いしね。

①-2. 共同推理

探偵パート中に出てくる新要素、《共同推理》。登場人物の一人であるシャーロック・ホームズが度々作中で披露してくれる(BGMが超格好いい)推理パート。
この推理モードに入ると、ホームズがくるくる回転しつつポーズを決めながら成歩堂君達が行き詰まっている謎の推理を披露してくれるんですが、核心やいくつかの点は間違いなく突いていても導き出された過程や結論がどうにもズレてる(例えるなら証人が法廷で披露する間違った推測)。このズレを成歩堂君が修正していくことで、最後に真実が暴かれます。

概要だけ読むと何か難しいなと思いましたが、実際にやってみると結構簡単。
例えばホームズが「貴方が隠したがっている物は○○だ!」と指摘しますが、それがその人が考えてる物と違っていると「?」が表示→すると一旦時間が止まり、ホームズの視線の先にある景色、並びに様々な対象物が確認できるようになります。この視界は証拠品の詳細調査のような3Dモードになっており、右側と下側にあるリールを動かし、ホームズの視線にある対象物を中心に様々な角度から辺りを見回せるようになります。そして見回した中でホームズの推理に正しく当てはまる正しいモノを《つきつける》。選んだものが正解だと成歩堂君がホームズがいた場所に物凄く決めポーズで格好良く現れ正しい推理が展開されるので、これを繰り返すのが共同推理となります。

これ、正解のモノを《つきつける》以外に《調べる》のコマンドも表示されるので、3Dで証拠品を調べまくるタイプの人がかなり好きなやつですね。つまり私が大好きなやつ。しかも仮に同じものを調べたとしても、推理が進むとコメントが変わるモノがちょこちょこあるので、台詞差分読むのが好きな人にもとてもグッド。

あとズレっていうのが「ホームズの視界には確かに入っているのに正解のモノが見えてない=見つけるべきモノがズレている」という文字通りの意味なのが何か好きです。そしてズレてても核心はきっちり突いて押さえているので、結構トンチキな推理しちゃって奇天烈な言動かましまくっても、真相を暴く相手に断言する様に「うわホームズさん格好いい」と何度か思っちゃいました。

②システム / 法廷パート:「さあ皆々様どうぞ喋り倒してくれ」と人間不信になりながら揺さぶりまくる

②-1. 尋問

法廷パートのベースは過去作と一緒です。つまり証言台に立っている証人を《尋問》し、証拠品と食い違っている矛盾した証言を見つけたらそこに該当の品を《つきつける》。

ですが今回なんと証言台に立つ人数がめっちゃ増えました。具体的には最大4人まで並びます。今のこの瞬間伸び縮みする証言台が爆誕した。

この人数増加に伴い発生するのが当事者以外のリアクション。
証人が複数いる場合、《ゆさぶる》で証人が話している間になんと他に証言台に立っている人達が今何をしているかが確認できるんです。これだけでも新鮮でびっくりですが、更に証人が話していると誰かが「ん?」「そんなはずは……」と証言に考え込んだり疑念を抱くキャラが出現。そこでさっきの確認機能(※人アイコンをスライドさせる)を使って反応したキャラを選択して下部にある《といつめる》パネルをタッチ。すると「あの人の証言に何か思い当たる節があるんですか?」「大した事じゃないんだけど、その人の証言と私の記憶、何か違う気がするんだよね……」と新たなる事実が発覚し、反応したキャラの証言が増えたりボロを出した証人に証拠品を突きつけたりできるようになるということです。
つまり《ゆさぶる》の亜種みたいなものですが、証言台に人がいっぱいいるとこんな愉快な事になるんですね。
普通に1人が証言してるだけでも茶々を入れたり「そうよそうよ」と同調したり喧嘩勃発したりその様子を冷めた目で一瞥して「話続けますよ?」とまさに喧々囂々、カオスの極み。これでユーモアがこれでもかとトッピングされたら読むの大好きプレイヤーからしたらずっと喋り倒しててほしいなとにこにこするのと同時、人数に比例して増える矛盾・嘘の証言にヤバいもう誰も信じられないと不安が堆積していく二分した感情の整理が大変でした。
まあ人間不信に陥った原因は3話目のあの人なんですけどね! 成歩堂君と一緒に打ちひしがれたぞこん畜生。

②-2. 最終弁論

第3話から舞台が外国つまり大英帝国に移動するため、裁判の形が日本と異なる点があります。それが陪審員制度です。
逆裁4でもちょこっと出ましたが、あれは新システムではなく演出のようなものだったため、最後の有罪/無罪を決める以外、システム・操作性という意味ではほぼ関わってきませんでした。それをもっとがっつり組み込ませてきたのがきっとこれ。

陪審員はロンドン市民600万人の中から(初回以外は作為ありすぎで)選ばれた6人が「ここまで証拠出揃ってるんだ」「犯人は被告人しかいないでしょう」「早く帰りたいからこいつ犯人」と裁判中に成歩堂君が弁護する被告人に有罪判決を下します。この判決はそのまま裁判の最終決定に繋がるため、成歩堂君は「今有罪判決を出すのは早い。考え直すべき!」と陪審員達を説得しなければなりません。これが《最終弁論》。

やることは尋問と同じで、矛盾を見つけて指摘する。ただ陪審員達は弁護士(成歩堂君)の言葉には耳を傾けないため、ぶつけるのはずばり陪審員同士の発言になります。
例えば陪審1号が「あの部屋は密室だった」と言ってるのに陪審3号は「あの部屋の窓は開いてたんだよね?」と言ってたら、矛盾している1号を選んで下画面の《ぶつける》パネルを押す→陪審員全員の発言が確認できる画面に移行→3号を選択して再度《ぶつける》。これで成歩堂君は「貴方達の言い分はそれぞれ矛盾しています!」と異議を唱えられるという流れです。
なお陪審員達の発言は普通の尋問みたいにがくがく揺さぶれますし、複数証人と同じように見回して他の陪審員達の様子も窺って《といつめる》も可能。場合によっては陪審員の言い分も《ゆさぶる》でころっと変わります。
そうして2回ほど決定的な矛盾を指摘したら「今審理を終了させる訳にはいかない。被告人を無罪にして裁判を続けるべき!」と判断。これで裁判を継続できるという訳です。

意見が「有罪」で統一されてるので尋問中の証人達よりはしっちゃかめっちゃかにはならないですが、(プレイヤー側は面白いけど)弁護士の話を聞いてくれないので成歩堂君の苦労が忍ばれるパートですね。その分ちょっと聞き耳持ってくれる人には「聞いてくれてありがとう! よし落とすぞ!」とめっちゃ元気出ますが。
この陪審員達は全員1号2号と号呼びで人物ファイルにも載らないんですが、まあ皆が皆例外無くキャラが濃い。複数回登場したり、前話の事件の証人が引き継ぎの如くちゃっかり出たりするし。ネームレスで法廷パートにしか出ないのが悔やまれるくらいです。キャラによってはお前裏でめっちゃ事件に関わってんじゃん!?ってのもちらほらいるので。
次作で1人でも今作のキャラが引き続き出てくれたらテンション上がるだろうなあ。あの通信士さんがあそこまで出張るとは思ってもなかったよ。

③ストーリー:依頼人を信じるという意味🐈

子孫より人生ハードモード過ぎません?と慄くほかなかった。

ええ……大学の一学生、つまりただただ一般人というポジションでしかないのに第1話のみならず2話でも(=2回も)殺人事件の容疑者と疑われるだけでもメンタルがったがたになるだろうに、その2話目で親友を喪い(千尋さん!!って叫んだよね)、3話目では逆裁2-4の真犯人完全勝利のifバージョンを成歩堂君の手で行ってしまうって……。重ねて言うけどまだ成歩堂君弁護士になってない状態だよ、一体彼が何したっていうんだ……。

確かになるほど君も何度か被告人になったし真宵ちゃんが何度もピンチになったし2-4の真犯人に追い詰められはしたけどさ。でも(リュウちゃん時代以外は)全部弁護士の立場と知識が備わってたからふてぶてしさと度胸とハッタリ力は身についてたし、2-4は糸鋸刑事や御剣さんといった頼れる人達の助力や真犯人が暴露したから真意見抜けて裁判で逆転出来たんだよ……なのにそういった素養や精神力がまだ未熟な成歩堂君にどこどこ高難易度な試練課してくるのがひたすら可哀想だったし、プレイヤーの私も成歩堂君と一緒に「依頼人を信じるって何なんだよぉ……もう誰も信じらねえよ……」とそりゃもう凹みながらプレイしてました。

ここまで逆裁と逆検やってたら想像つくだろと遊び終わった後は思いましたが、3話プレイ中は本当に最初するっと信じちゃったんですよね。だって2回中1回は(亜双義さんがいるとはいえ)自分自身で弁護、もう1回は法廷ではないけど自分で容疑を晴らさなければならない経験した成歩堂君の前で「弁護士がいないから自分で自分を弁護するしかない」とか言われたらそりゃ成歩堂君と一緒に「分かった弁護します! 貴方を信じますよ!」ってなるじゃん! 成歩堂君にシンクロしちゃってたらなっちゃうじゃん! だから途中からメグンダル氏が怪しくなってきたら成歩堂君共々死んだ魚の目になるしかないし「信じるって何?」って禅問答になるじゃん……。
逆裁主人公の中で一番共感しやすいのは成歩堂君だと思います。ゲーム開始時から緊張しつつも弁護士として法廷に立てる資質があるなるほど君とオドロキ君に対して成歩堂君はプレイヤーと同じくらいズブの素人ですからね。分かる分かるよ一般人には辛いって。
だから4話の漱石氏と最終話のジーナさんを経て「依頼人を信じるとは何か」に苦しみ悩み抜きながらも答えを出して法廷に挑み、自分の弁護士生命を賭けんばかりの弁護を行った成歩堂君には感動したし、最早因縁とも呼びたくなるメグンダル氏の事件が最終話に繋がりそして暴かれたのは、多くの謎を残しながらも心の整理はつけられたのでかなり満足しました。

……うん、めっちゃ伏線と謎残りまくってましたね。残る通り越して最終話の法廷パート終わっても新しい謎がどさどさ積み上げてきましたね。
私は『大逆転裁判2』が発売された後にプレイしている&続編で物語が完結してると知ってるから「うわ何々どういう事続き気になるー!」と明るくいそいそと大逆2のソフトを挿せますが、発売直後にプレイした人達がその未完成っぷりに激怒したという話も滅茶苦茶分かります。私も別ソフトで経験済みですからね(遠い目)
第1話も1話目とは思えないくらい(びっくりビフテキはあっても)がっつり謎解き、以降の各話のクオリティーもとても高いし、一つの事件が最終話で明かされ収束していく流れはきっちり出来てるんですけどね。事件に付随するあれやそれやが投げっぱなしという印象は本作のみで見ると否めないのが難しいところですね。

終わりに

こんな感じで個人的には本作単品でも大満足ですが、当時のプレイヤーにはそれはもう「そのお気持ちお察しします」と言わざるを得ません。

以上、3DS『大逆転裁判-成歩堂龍ノ介の冒險-』の感想でした。