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Switch『Ib』感想

人形1体調べるごとに悲鳴の音階が1上がる。

プロローグ

数々の絵画や造形物を創り上げた芸術家、ワイズ・ゲルテナの展覧会のため、9歳の少女・イヴは両親に連れられて美術館を訪れた。
受付中の父と母より先に館内で作品で鑑賞するイヴ。しかし3階の休憩スペースに飾られている一際大きな絵画を観終わった後、両親はおろかスタッフも他のお客達も皆忽然と姿を消していることに気付く。
外にも出られず灯りも消えた美術館を彷徨う中、イヴはとある絵の前まで奇妙な足跡が続いているのを見つけ――ゲルテナの作品が大量に飾られ時に我が身を襲ってくる、不気味で恐ろしいもう一つの美術館へと足を踏み入れてしまった。

◆開発:kouri
◆販売:PLAYISM
◆ジャンル:アドベンチャー
◆発売日:2023年3月9日(DL版/パッケージ版)

始めに

とある展覧会に行かないかと友に誘われ鑑賞し、んで行ってきたからにはやらねえ訳にはいかねえよなあってことでプレイしました。そう、それはもう名高いフリーゲーム『Ib』を! 物販でソフト買うつもりでしたが見事に完売してたのでAmazonでポチりました。

有名なホラゲーですが知識量は【プロローグ】の導入部分と登場人物3人の名前と性格、某キャラの正体、あと噂で何か色々聞いたような……程度です。まあ一番知ってちゃいけない物語の核心把握済み状態を「程度」と呼べるかは微妙なところですけど。一応動画の類はニンダイと販売会社のPVしか見たことないのでホラーレベルがどれくらいかは完全に未知数です。
内容を知ってる友からは「元はフリーゲームだから短いしドット絵だからそんなに怖くない」と再三言われましたが断言します。ふっっっっつうに怖かった!! 叫びまくった!! 見るのとやるのは大違いなんだよって声を大にして言いたい!!

①システム:0にしなかっただけ褒めてほしい。実質0だけども。

Aボタンで物を調べる/決定、Bボタンでアイテム画面を開く、Xボタンでズームイン/ズームアウト、Yボタンで同行者(ギャリーorメアリー)と会話。そして移動と選択は上下左右ボタンまたは左スティック。以上! 元がフリゲー且つ戦闘無し逃げるだけのホラゲーだからか操作方法は至極シンプルです。パズルも移動させるだけですしね。
ちなみにイヴ一人の時や一部イベント中はBXY使用不可です。これの何が辛いってホラゲーチキン人間当社比あるある「アイテム画面開いて時を止める」が使えないこと。おどかしも追いかけも絶対に出てこない聖域(アイテム画面)で呼吸整えて気を紛らわさなければろくに進めないというのに禁止されると遠い目待ったなし。いつ何が襲ってくるか分からないマップ上で考え事なんてできない。現実逃避は平穏が確約された環境が確保されてないと。まあBGMは探索中と全く変わらないので現在地がホラーしてたら全然落ち着きませんけど。

アイテム画面は手持ちのアイテム確認欄(※最大4つまで所持。持ってたら自動で使用→使用後消える)と操作キャラの立ち絵の他、『オプション』『ロード』『タイトルへ』のシステム選択が3つ有り(よく選択誤爆する)、オプションでは「言語」「振動ON/OFF」「操作ガイドON/OFF」「BGM音量」「SE音量」の調節可能。オプションはタイトル画面で変更できます。
初期設定は振動はON、BGM音量60%、SE音量90%でしたが、1日目終了時(虫の間の通路)には心折れて振動OFF、BGM音量10%、SE音量10%に変えてそのまま1周目クリアしました。しかもプレイ中はずっともくりで通話してて隣ではPCで『名探偵コナン』をそこそこ大音量で流していたので音量に関しては実質0です(叫ばないとは言ってない)。なので音量戻して(BGMは60%にした)ヘッドホン装着した2周目も新鮮にビビり倒しました。ウソつきたちの部屋……。

襲ってくる美術品から逃げる、また「薔薇は貴方の命」と作中でも明言されるだけあって、操作キャラはダメージを受ける=手持ちの薔薇の花弁が千切れる=体力が無くなります。イヴは最大5、ギャリーは最大7。
大抵下記のセーブポイントと同じフロアに設置されている水が入った花瓶に薔薇を挿せば全体力回復。ただし一部を除いて一回こっきり故ご利用は計画的に。

で、セーブは各所に配置されているノートに記録するタイプで、セーブ数は30……と表記上ではなってますが、1番目はシステム用でか既に潰されているので実質29です。どこで記録したか・イヴ含めて誰が共にいるか・見つけた美術品の数・プレイ時間はセーブ欄で確認できますが、一度セーブすると削除できないので雑に重ねてどれがどれやら分からなくなるのでご注意を。私は記念用の1周目データさえ分かればいいやと諦めてます。
余談ですが、私は一行動につきセーブ3回はしないと落ち着かないタイプです。だってうっかりで記録できてなかったら怖いじゃん……。

②謎解き:ティーカップ、オブジェの迷路、宝石箱、全部詰まった🌹

鍵を拾う、絵を橋代わりにして向こう岸に渡る、美術品の要望に答えてアイテムを渡す……元々「ゲームが苦手な人でも遊べる」がコンセプトらしく、美術館探索中に出てくる謎解きの難易度は低め。

ですがやはり難易度高いのも出てきます。それがネコ?がいる部屋のティーカップ、紫の間の通路1の迷路、隠しダンジョンの深海の間の宝石箱。三大タイムロス。迷路は何とか自力で解きましたが、ティーカップと宝石箱は悩んだ末に攻略サイトに頼ってしまいました。
ティーカップに関しては友から「嘘だろ?」と呆れられたし、私も『レイトン教授』を7作クリアした自負がありいけるだろと思ってたんですがいけなかったよ……! まあ昔からこの手の移動パズル苦手なんですけども。
宝石箱は難易度が高かった以外だと、初見はギャリー不在の状態でやっちゃたこと。イヴ1人だと最初にいくらヒントくれとねだっても「自力でやれ」と一蹴されて教えてくれなかったんですよね。ギャリーさんとの問答を経てようやっとランダムにくれた感じ? ああでもイブ1人状態で案の定不正解判定出された後すぐ攻略サイトに頼ったので、ミスした後ならヒントくれた可能性もなくはなかったかも? まあとりあえず初見の宝石箱(というか橙の間含めた隠しダンジョン)はギャリーと一緒の時に挑んだ方が吉です。

あーあと紫の大広間の毒ガス! あそこの花瓶は水が涸れないと知らなかった&今までの傾向から捨て身戦法で進むとは想像してなかったのでそこもサイトに頼りましたね。え、それでいいの!? と驚いた記憶は新しいです。

③恐怖レベル:自分でも分かる字面の五月蠅さ🌹

  • ヘッドホンは着けない

  • BGMはテレビから(※今回はボリュームも最小限に絞る)

  • もくりで通話

  • テレビ横で大音量でアニメを流す

加えて今回は次項目を追加。

  • 立ち止まるな。ずっと走れ。

元祖ホラー積みゲー『Year Walk~最後の啓示~』を思い出し今回のプレイ状況はこんな感じ。「アニメ流し」「ずっと走れ」は2日目から実施(前者は単純に忘れてた)。
友からは「そこまでする?」と言われましたが、いや普通に怖かったからな???? お前も自分でやってみ私と同じくホラゲー駄目なくせにえぇおい、と詰め寄りたくなるくらい人語になってない、あるいは濁点付きの悲鳴絶叫をずーーっと上げ続けてました。5日かけてやりましたがいつも終える頃には喉カッスカスです。

BGMやSEがほとんど聞こえてこなくても駄目なんですよ……かといって完全に無音になるのもそれはそれで駄目なんだよ無音はあかんの分かる? 無人と化した美術館を心細くうろついてる時に2階の外から窓バンバン叩かれて突然果物べしゃって落ちてきたらもうホラーのピークじゃん? は? まだ始まってすらいない? 嘘だろ? この時点で内臓ひっくり返った絶叫3回くらい出ましたけど?? 停電もやめてくんない??

この時点でもう心挫けかけてるのに、意を決してもう一つの美術館に飛び込んでみたら壁に「おいで」って無数に書かれてて泣きかけたし、びくつきながら鍵を手に入れ外に出たら真っ赤な文字で大量の「かえせ」で壁が埋め尽くされてるし(なら家に帰してくれよ!!)、床にも突然びしゃって浮き出て主張してくるし、部屋越えたら襲ってこないと聞いてたマネキンは襲ってくるし(※部屋跨いで襲ってこないのは絵の女)、絵の女は女で赤い服の方はネタバレで襲ってくるの知ってたから心の準備できてたけど、青い服の女は窓ぶち破ってきて「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」で脱兎の如く逃げ出したし、うっかり生首(※マネキン)を蹴りつける選択しちゃった後に部屋出たら生首増えてるし最初に入ってきた通路の入口チラ見したら生首が通路遮ってて半泣きになったし(心挫けてロードし直した)、人形の部屋は!! 言わずもがな!!!!

…………人形の部屋!!!!(大事なことなので2回言いました)

兎の部屋の真実の姿にも変な声が出ましたが、鍵探しの部屋は端的に地獄。
最初額縁に付き始めた青色が何か分からなくて(ビビりながらも)調べようとして、でも反応しなかったのでしゃーない人形調べるかと意識切り替えて1体目調べた直後。べちゃっと青色の面積が増えて、且つ下から上に向かってる演出に「這 い 上 が っ て き て る」と気付いてからはもうパニックです。

悲鳴を上げながら人形調べる。鍵無い。画面が一段階暗くなる&ずるりと左手が額縁にかかる。音階が1上がった状態で叫びながら人形調べる。鍵無い。画面が一段階暗くなる&ずるりと頭頂部が見える。更に高くなった叫び声と共に人形調べる。鍵無い以下略。
視界に壁(額縁)を入れないようにしても自分のSAN値がみるみる削れていくのを自覚しながら死に物狂いで調べまくって、しかし結局見つからず画面が真っ赤びっしゃあと染まった時は暫く呆然としましたよ……。
単純に人形の部屋がガチで怖かったのもありますが、茶の大広間~紫の大広間はおどかしよりも謎解きに比重が置かれていたのでビビらせ箇所は時々あっても気が緩んでたのが要因かと。青い人形の話はうっすら耳にしてはいたんですけどね……まさかあんなとんでもなくヤベー代物だったとは想像もしてなかったです。もう本っっ当、キツかった……。
さすがトラウマと呼ばれてるだけあって?、青い人形の部屋を乗り越えたら残りは小さな恐怖ポイントが少々ある程度で終わったのは幸いです。あれと同等か人形再来したらメンタル真っ二つにへし折れてた。

一番怖かったのは青い人形の部屋と断言しますが、ぶっちゃけ茶の大広間以外満遍なく滅茶苦茶怖かったです。おどかし要素は演出・音共に各部屋に必ずあるし、襲われるし、3周目でようやく出てきた目薬のあれも初プレイ時に出くわしてたら悲鳴上げてただろうし、隠しダンジョン2つも結構ビビらせてくるし……隠しダンジョンは襲ってくる美術品いないって聞いてたのに『失敗作』は這い出してくるし、深海の間はシマエナガの癒し効果が床のぶちまけインクで即帳消しにされたしなんなの。
「『Ib』はホラゲー初心者に最適☆」なんて感想をどこかで見かけましたが絶対嘘だろと今でも思ってます。掛け湯にしては温度高すぎる。

加えてBGMが当たり前ですが全体的に凄く怖い、『Year Walk』の比じゃない。
後から聞き比べると茶~紫の大広間は柔らかめですが、それ以外の広間のBGM全部ホラーですもん。①で「アイテム画面は癒し枠」と書きましたがそれもBGMほぼ聞こえなかったからに過ぎません。SEかBGMか分かんないけど何か湿った足音みたいなの聞こえるんですけどおおぉぉ。

どれくらいビビり倒してたか、一度遊んでみたかった『発言まとめメーカー』でまとめてます。

自覚はしてましたが、書き起こして可視化すると我ながらマジで五月蠅い。

④ストーリー:ネタバレ踏んでない人はそのままでいてほしい🌹

内容は……、…………面白かった……のか……?
いえ断じてつまらなかった訳ではなく、プレイ中は③と『発言まとめメーカー』から察せられる通りずーーーーっと恐怖で震えてたので、クリア後はとにかくやっと終わった安堵と喜びが勝りストーリーにまで言及する余裕が皆無で……『Year Walk』は2周目の最後に話全部持ってきたようなものだったから集中できましたが。

改めて。ホラーは一旦置いとくとして、ゲーム、良かったです。
ゲルテナの美術品は襲ってくる絵の女とかマネキンとか生首とかゲルテナ品じゃないけど青い人形とか怖い物は泣くほど怖いんですけど、それ以外の襲ってこない絵画やオブジェは奇妙で抽象的な物、不気味だけど幻想的な物等多種多様に飾られていて「美術館を探索する」の紹介文がこれ以上無くぴったり。ジャンル:ホラーでビビりながら進まなきゃならないのが悔やまれます(普通に探索したかった)(そのための『真・ゲルテナ展』なんでしょうけど)。
それとギャリー達との会話が非常に多いのもグッド。美術品を調べた時、謎解きする前と後の差分はもちろん、同じフロア内でも例えば黄の大広間では人形が吊されてるエリアとそれ以外で台詞差分があるんです。こ、細か!
おかげで没入感と感情移入も自然と強くなり、ついでにイヴ1人で探索するよりずっと怖さが軽減されました。だからホラー苦手な人はギャリー合流まで進めたら幾分マシになると信じて頑張ってほしいです。ギャリーさんの安心感パないから!

で、一番大事なのは1つ。ネタバレ知らない人はどうかそのままでいてほしい。
これ本当に大事です。物語の核心は知らない方が楽しめるのはどのジャンルでも当たり前のことですが、彼女の正体を知ってたら衝撃が半減通り越してゼロになります。物語の肝であり何故イヴとギャリーが美術館に引き込まれたかの理由にも関わってくるし……何なら正体云々のワードも知らない方がいいってくらい。
ホラー苦手で何がどんな風に襲ってくるか心構えしておきたい程度なら問題無いと思いますが、ストーリーの核心にまではどうか触れないでいてほしいなあ……と既に知っちゃってた身としてはそう願います。ここまで読んでる人がいたらもう遅いとは思いますが……加えて10年以上前からある有名作ですから、本気で興味無い人以外には既に知られてそうな気もする。

7種類あるエンディング(細かい派生含めて全部見た)の中でも印象に残っているのは『ある絵画の末路』。終盤ずっと「あああああ」となってましたが、時間置いて振り返ってみると「あれはあれで癖になる」なと。あのメンタルに来るキツさは相当でもう1回経験する? と聞かれたら首を横に振りますが、あの慈悲も容赦も絶無な後味の悪さは良くも悪くも忘れられません。洋画のバッドエンドがトラウマと形容しがたい感情と共に刻み付けられる系ですね。彼女のアイテム画面もヒエッです。

巷では3人のハッピーエンドが欲しいと望まれてるそうですが、個人的には3人ハッピーが無いからこそ本作は最高だと思ってます。

⑤おまけ:1周目クリア直後「増える増える何かすげー増える」🌹

1周目をクリアすると、ゲルテナの美術品とサウンドプレイヤーが鑑賞できる真・ゲルテナ展、エンディング到達直前の「???」で新しく道ができる隠しダンジョン、おまけエンディング(たぶんメアリー関連)が解放されます。

美術品は全部で150点。真・ゲルテナ展に飾られる条件は「イヴがタイトルを読み、且つ作品を目にする」こと。ただしイヴは9歳の子供で難しい漢字は読めないため(歳考えるとかなり読めてる方ではあるけど)、その場合ギャリーに読んでもらう必要があります。加えてギャリーパートでギャリーだけが展示品のタイトルを読んだとしても登録されたないため、一部の作品はイヴがいる状態で調べ直したり、ギャリーと一緒にUターンしなきゃいけません。失念すると探し直すのは骨が折れるかも。

おまけエンディングは真・ゲルテナ展にも関わってきます。1つはスチル回収(美術品扱いでゲルテナ展に飾られる)、もう1つは関連キャラ(ギャリー・メアリー・イヴ父・イヴ母)がゲルテナ展に来るため。

隠しダンジョンは2周目のデータ(※セーブアイコンの隅に◆マークが付く)でないと出現しないので、1週目を経てホラー耐性がついていれば他のエンディングと美術品を回収・分岐用セーブを作りつつ2周目~と行けばさくさく進められます。

終わりに

ひょんなきっかけで遊ぶことになり、そしてホラゲーのジャンルに違わずホラーを120%味わって疲労困憊しましたが、さすが有名作とだけあって質はばっちり保証されています。怖くない美術品とても好き。

DL版がありますがパッケージ版には永久同梱で紙のアートブック&化粧箱が付属しているのでパケ版の方がお得かも。しかも他社の豪華版に比べてたった+1000円ちょいでイヴのハンカチも付く太っ腹。

他にもゲルテナ展が東京で再開催されたのを記念して図録とポストカードブックの発売決定。予約するか考え中です。

以上、Switch『Ib』の感想でした。

P.S.
本作はフリーゲーム版のリメイクで、フリー版はグラフィック等や一部謎解きがSwitch(Steam)版とほぼ異なっている模様。そのためプレイ前は環境さえ整ってたらやってみるのも吝かでは……と考えてましたが駄目ですね。新鮮な恐怖はお腹いっぱいです。

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