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DS『逆転裁判 蘇る逆転』感想

誰か早くイトノコさん呼んで。

プロローグ

成歩堂龍一はやり手の女弁護士・綾里千尋に師事する弁護士だ。その彼が今日初めて法廷に立つ案件となったのは、なんと目撃者がいる殺人事件の犯人として逮捕された友人の弁護だった――。
この一件を皮切りに、新米であるはずの成歩堂の元に舞い込む依頼は誰がどう見ても依頼人が行ったようにしか見えない、普通の弁護士なら弁護を断る有罪確定崖っぷちの殺人事件ばかり。けれど彼らは皆揃って「自分は人殺しなんてしていない」と訴えてくる。
味方がいない孤独な人の助けになる。そんな信念を元に弁護士を志した成歩堂は、証人が語る証言や検事が提示した証拠品に矛盾を突きつけ、時には見習い霊媒師の綾里真宵の降霊術を頼りつつ、冤罪に苦しむ人達の無罪を証明するため法廷に立つ!

◆開発:カプコン
◆発売:カプコン
◆ジャンル:法廷バトル
◆発売日: 2005年9月15日 / 2006年6月15日(Best Price!版)

始めに

2023年最初にして60本目の崩し積みゲーはDS版の『逆転裁判 蘇る逆転』。
実は当初、WiiUのVC版3作クリア後はさくっと『4』をやるつもりだったんですが、『蘇る』には追加エピソードがあると知り、ならいっそDS版も1作目からやっていくかと考え購入。
そんな訳で目的は完全に第5話のみでしたが、WIIU VC版3作クリア後は「これ周回して物語を咀嚼する必要があるシリーズなんじゃ……?」とその圧倒的なシナリオに気圧されてたので、ハード違いとはいえ周回出来たのはラッキーだったと思いました。

感想としてはGBA→DSのハード変更によるUIの比較、ストーリーは追加の第5話のみに絞って書いています。第1話~4話までは既に感想を書いているVC版と同じです。


♻️本感想には以下の『逆転裁判』シリーズ作品や他作品のネタバレが含まれます。ご注意ください。♻️

①システム / UI:n回目の実感「2画面は偉大」

①-1.探偵パート

まずVC版では画面上部に固定表示されていた《探偵パート》のコマンドはDSの下画面に全て移動し、十字ボタンで逐一かちかち送らなくてもタッチ一発で目的のコマンドを選べるようになりました。この時点でテンション上がる。

《調べる》は結構手が加えられてました。
まず対象を指し示すアイコンが指からライフルスコープみたいな見た目になった点。指アイコンの方が情緒があるし変更後のは若干作品にそぐわない気がして少々残念に思いましたが、VC版は操作方法も相まって指アイコンだと「調べたい物」「実際に指し示す箇所」にズレが生じてもどかしさを感じる時があったので、実際に操作してみるとこっちの方が見やすいのですぐ気にならなくなりました。
ただこのライフルスコープ、移動は自由に出来ますけど一度物を調べると中央(最初にアイコンある箇所)に必ず戻されてしまうので、十字ボタンにしろタッチ操作にしろ端にある物を調べるとなると中央→対象物へのアイコン移動が1秒もかからないとしても面倒臭いなと思ってしまったり。VC版では調査対象1→調査対象2とシームレスに進めたのでどうしても目についちゃうんですよね。《調べる》移行時に画面が上から下に下りる動きも気付けば慣れてたというのに。

その代わり今作では「特に手掛かりは無い」系の情報が無い物には画面上の《調べる》パネルは非表示、事務所の窓やチャーリー等の特別なコメントが用意されている物・ストーリーを進めるために必要な手がかりには表示と、調査対象がはっきり絞られ効率がアップ。UIが徐々に改善される中で「手掛かりは無い」コメントは何故か依然スキップされない状態が続いてるので、ここは調べなくてもいいよと最初から教えてくれるのは有難かったです(ちなみにパネルが無くてもボタンで決定したら手掛かり無しコメントは出ますが文字送りの速度も変わらない)。
プレイ前はライフルスコープに変更じゃなくていっそアイコン無しで好きに調べられる仕様にしたら良いのにとも思ってましたが、この調査対象確認とボタン操作用のために付けられたのなら納得。あ、なお対象をスコープに当てて直接タッチしても反応しません。必ず調べるのパネルかAボタンを押してください。

もう一つ大幅に変更されたのが《つきつける》と《法廷記録》。
なんと! 今までは1画面につき1つしか表示されなかった証拠品・人物ファイルが! イラストサムネのみ表示に変わったことで1画面で一気に8つ(8人)も確認できるようになりました! 拍手!!
これ本当に有難かったです。よく考えたらGBA版でも途中で変えられたんじゃ?とは思いつつも結局1画面1表示は貫かれたまま終わったので、何というか感動もひとしおでした。
ちなみに説明文は各サムネを選んだら読めるし、説明文読める状態のまま別の物証・キャラに移る事も可能。しかもボタン操作ならサムネ状態のままでも《つきつける》が出来るので証拠品の内容を覚えておけば《法廷パート》と合わせてかなりの時短になります。すっご。まあタッチペンで選ぶと強制的に説明文表示に切り替わりますが、表示/非表示は一瞬で終わる&タッチですぐ《つきつける》可。VC版で10個ある証拠の内5個目を選ぶために右ボタン押し続けて目的物捜すより断っっ然楽です。ありがとうございます。
ただ証拠品の詳細調べ、VC版ではLを押せば良かったのに今作ではボタンの割り振りが無くなってるようで? 必ず画面上のパネルをタッチしなきゃいけなくなりました。まあパネルは右下にあるのでボタン操作が主でも手は届くのでそこまで手間ではないです。ちなみに《つきつける》のボタンはXYに変わってたり。

あとは《移動する》の移動先選びでは左側に行き先の背景グラが出る凝り仕様になってたり(※留置所以外の新しい場所は最初砂嵐で映る)、文字送りが『3』と同じになったため調査がスピーディーになる地味に重要なUI改変がされていて、あー新機種用だなーとしみじみしました。

①-2. 法廷パート♻️

一方《法廷パート》は無印からシステムが完成しているので大きな改変はありません。
しいて言えば前項の法廷記録の欄がこちらにも適用されてるので証拠品選びやすくなりやはり万歳と、下画面の◀▶パネルで尋問中の証言を前後に送れるようになったところ。あと……Yボタンを押して「異議あり!」「待った!」「くらえ!」とマイクに向かって喋っても《つきつける》《ゆさぶる》が出来るようになった点でしょうか。強引に機能ねじ込んできたな……。
ゲーム中は一人といえどそこそこ長い法廷パートで声を出すのは恥ずかしいし、そもそもヘッドホンしてたらマイク全然使えないしで私は一切未使用でクリア……するつもりだったんですが、最後の最後でマイク必須になる演出が出てきて慌ててヘッドホン外しました。ちゃんと一発で反応するか分からなくておっかなびっくりで……これSwitchとかアプリとかマイク機能無いハードではどうなってんだろう。

①-3. 全体と総合

文字送り仕様が『3』と同様なため、無印では途中で根を上げてしまった《調べる》をちゃんと出来るようになったのは嬉しかったです。
それとDS版になったことで全体的にキャラの絵や背景のグラフィック解像度が上がったので、キャラの表情がVC版より鮮明に、そして映る背景が前より広くなったり(例:裁判長の背後にある天秤図)。あとBGMも音質上がってる他に一部アレンジもされてるので新鮮な気持ちで楽しめました。原曲もアレンジもどっちも好きです。

ちなみに私は《調べる》や《つきつける》時の確認等はタッチ操作、既読文章のスキップはボタン操作と使い分けてました。
タッチでも既読スキップは出来るんですが、タッチは何か連打でしか反応しない&したとしてもラグ?ズレ?が起きて反応速度がいまいちだったので……ボタンだと押しっぱなしで爆速送り出来るんですけどね。

②システム / カガク捜査+α:忘れがちだけどもっとやりたかった♻️

DSへの移植に伴い追加された新エピソードの第5話には既存の1~4話にはないDS独自の新要素が搭載されました。それが《カガク捜査》+αです。

1つめは《ルミノール反応》。新キャラ宝月茜の持ち物であるルミノール試薬を使います。
法廷記録からルミノール試薬を選択し説明画面に飛ぶと、上画面に《吹きつける》というコマンドが出てきます。それを押すと写真現像する暗室のように背景が赤色で上塗りされます。その状態で画面をタッチするとルミノール試薬をしゅっと吹きつける演出が発生すると共に、特定の箇所で血痕が発光した姿で浮かび上がります。で、見つけたらそこを四角の枠で囲まれる演出が出るまで何度もタッチするとキャラがコメントし始めて捜査完了。注意点は血痕が現れてもそこで終わりじゃなく何度もタッチしなきゃいけないところですね。私は最初これに見事引っかかって「あれ? 見つけたのに何で進まないの?」と焦った口です。
この《ルミノール反応》はストーリー中に必ずやれと言われる事件現場以外、それこそ成歩堂法律事務所でも留置所でも行ける所なら全部試せます。まあ大体は(当たり前っちゃ当たり前ですが)血溜まりなんてないんですが、中にはかなり意外な所にあってビビったりするので、ルミノール試薬を手に入れたら今まで移動してきた場所も含めてとりあえず1回使ってみましょう。

2つめは《指紋検出》。探偵パートの途中、ある人からアルミ粉を貰い、イベントが発生した時だけ使えます。
こちらは検出段階になると画面が緑地に白マスが敷き詰められたちょっと化学っぽいものに変化し、そこをタッチすると白い粉(アルミ粉)が塗されるので(粉は無制限なので大体左右の縁付近を除いた全体に敷き詰めればOK)、満遍なく振りかけたらたらマイクに向かって息を吹きかけます(この時「ふーっ」と長く吹くより「ふっ」と短い吹き方にした方が良いとか)。すると余分な粉が飛び散り指紋が浮上。見つけたものを指紋データを持ってるリスト内の人物と照らし合わせ、該当すると思われる人物をタッチすると測定開始し、同一人物と認められたら物語が進みます。
DS機能を有効に(少なくとも「異議あり!」と叫ぶよりは)活用してる指紋検出は、結局息の吹き方が分からず仕舞いでしたけど捜査してる!感が一番実感出来てとてもわくわくしました。ただルミノール反応と違って指紋調査は必須イベント内の2回しか出来ずそんなに体験出来ず物足りなかったです。でも指紋なんて自由に調べられるとなったら絞るにしても範囲がとんでもない事になるだろうから無理かあ。
……と残念がってたら、第5話エンディング中、キャラが喋ってる最中に《指紋検出》の操作をすると絵か何かが浮かび上がるとかなんとかな情報を見つけて「聞いてませんが!?」と愕然としたんですが。えー今から2周目はちょっと時間無いから無理なんですがー。これ3DSのセレクションでも残してくれてますかね。

それとカガクではないですが、弁護士バッジや携帯電話、お弁当といった実物がある物は《詳細》のパネルを押せばそれらはイラストからCGへと形が変わり、証拠品をどアップや遠目で眺め回せたり360度自由にいじくり回して観察できるようになってます(解剖記録や現場写真のような文字・絵情報が重要な物、セキュリティーの問題等の実物が手元に無くあくまで『情報』として得ているものは観察不可)。
調べられる物はキャラが面白おかしくコメントしてくれるので、ルミノール同様調べられる物は一度調べてみてください。個人的に気に入ってるのは弁護士バッジと盾へのコメントです。

あとは壊れた証拠品をパズルのように組み立てる、暗証番号を入力する、ある品をある物に見えるように形を合わせる、防犯カメラの映像(めっちゃ動く)を再生巻き戻し早送りを駆使して矛盾点を見つけると、VC版には無かった&DS移植で容量増えたから出来たのかなみたいな面白いシステムが新しく生まれててとても面白かったです。
ルミノールと証拠品詳細調査に関しては、普通の調査の方に気を取られて調べ忘れる事多々だったのは秘密です。

③ストーリー:理由付けという名のフルボッコ、かわいそかわいい通り越して普通に可哀想♻️

ひょうたん湖殺人事件並びにDL6号事件解決から2ヶ月後。成歩堂龍一の元に1人の少女が駆け込んできた。
成歩堂の師匠にしてベテラン弁護士だった綾里千尋と間違って事務所を訪ねてきたのは宝月茜。曰く、彼女の姉が無実の罪で逮捕されてしまったため、姉の後輩だった千尋に助けを求めたのだという。
しかし既に千尋は故人。代わりに弁護を頼まれた成歩堂は最初は依頼を拒否するも、どことなく、今は生まれ故郷に戻った千尋の妹・綾里真宵に似た雰囲気と境遇を持つ彼女に根負けし、事情を聞きに留置場に向かう。しかし当の被告人である宝月巴は全面的に己の罪を認めており、弁護はいらないと拒絶されてしまった。
仕方なく先に情報収集で向かった先は検事局の地下駐車場。検事局の上層部に位置する主席検事である巴は、駐車場で被害者を殺した後に死体を隠蔽しようとしていたのだ――成歩堂のライバルにして幼馴染みの天才検事・御剣怜侍の車の中に。

こんな感じで始まるのが新規エピソードである第5話『蘇る逆転』。
のっけからなるほど君が2ヶ月も仕事してないと独白してて「家賃は!?」と戸惑うのから始まる(今振り返ってもやっぱり困惑する)物語は、DS移植による売りの他、『2』で何故御剣さんが失踪したかの理由を補完する、実質『2』の前日譚にもなっています。

移植に伴う新しいエピソード追加といってもおまけっぽい短いストーリーかと思いきや、中身は「探偵パート1&法廷パート前後編×3+後編2」というパート数だけで言えば『3』の『華麗なる逆転』より長い=既存作の中で最長を更新したどえらいボリュームでした。しかも真宵ちゃんの代わりに助手を務める宝月茜ちゃんを始めびっくりするくらい新キャラがぞくぞくと出てきます。というかなるほど君と御剣さんとイトノコ刑事と裁判長(とボーイ)以外の登場人物は全員新キャラ。この時点で何かもうひたすら凄いの一言なのに、
途中から同一人物が異なる場所で同時に殺される、2年前に有罪判決が下され無事解決したはずの連続殺人事件・通称SL9号事件が関わってくる、関係者が元も含めて全員警察・検事とどう足掻いても司法の不祥事発覚不可避のと展開がどんどん複雑化&泥沼化していく展開には慄きつつも目を離せませんでした。そこに新要素のカガク捜査や新システムが加わって……話の濃さならDL6号事件や葉桜院事件張り。

特に本話の最終局面ではとある法律を逆手に逆転する結末は(法廷バトルと謳いつつも)そこまで法律ががっつり関わってこないこれまでの『逆転裁判』シリーズでは新鮮で非常に盛り上がりました。まあ私は案の定選択し間違って最初バッドエンド直行しましたけどね!

新キャラも、下手すれば既存話の中でも一番個性豊かだったかもしれません。特におキョウさんと罪門さんが連続で出てきてトドメに巌徒さんが現れた時は「御剣さんって服装も口調も地味で大人しい方だったんだな……」と思うくらい個性つよっつよで頭が軽くバグりました。幼馴染みトリオで並ぶとちゃんと(?)御剣さんの格好は浮いてる旨を心に留めておかないとワインレッドカラーのスーツとクラバットがマジで地味に見えるミラクルが起きた。
ちなみにその罪門さん、登場から暫くは困惑しきりでしたが、最後の最後の去り際の台詞が凄く格好良くて好感度がぎゅいんと上がりました。
茜ちゃんは科学関係以外は結構すっとぼけてるけど根は真面目なので、……好い子なので好きなんですけど、好きなんですけど、真宵ちゃんの無自覚ナチュラルSっぷりに知らず知らず毒されていた私には物足りなくて「もっとなるほど君を振り回してくれてええんやで……!」と何度か思ったり思わなかったり。

んで、この話で一番割を食らったと言っても過言ではないのがそうです、御剣さんです。
無印では狩魔検事の暴露はあれその後のエピローグで普通に裁判していたのに『2』で失踪する唐突っぷりを解消するための理由付け回でもあるので、最早『~御剣怜侍の受難~』とサブタイ付けてもいいくらい不憫。
せっかくDL6号事件で師を失ったとしても代わりに父親殺しの誤解は解けてハッピーエンドだったのに、信頼していた直属の上司と敬意を持つ警察トップの人の殺人と隠蔽に自分の車使われて知らず死体の運び人担わされるわ、過去自分が有罪勝ち取った事件の証拠は捏造されてたせいで査問会にはかけられるわ自らに課してた検事としてのプライドずたずたにされるわ、狩魔検事がいなくなって後ろ盾無くなったのと証拠捏造に知らず関わったせいで局内には味方ゼロ、唯一御剣さんに好意的なイトノコ刑事は御剣さんと一番繋がりが強かったせいで御剣さんと関われないよう捜査から外されてほとんど接触できないともうやめて! 御剣さんのライフはもうゼロよ! と頭抱えたくなるくらい御剣さんの立場が針の筵、四面楚歌。法廷で巌徒さんに嬲られてる(語弊)のは見てるこっちの方が辛くて「もういっそ一回留置所入ってもらって物理的に人との関わり絶った方がマシなんじゃない?」と真面目に考えたくらいです。そりゃこんだけメンタルフルボッコにされてプライドも何もかもズタズタにされたら失踪する。ていうかむしろよく失踪だけで済んだし1年で帰ってきたのがむしろ奇跡。かわいそかわいい通り越してもうひたすら可哀想で途中から「頼むからイトノコさん来て! 御剣さんへの好感度フルカンストしてる貴方が御剣さんのメンタルケアして!!」とイトノコ刑事に会う度懇願しましたもん。
あと「なるほど君、こんだけ辛い思いした御剣さんにキレるのは酷いよ……」と相対的になるほど君に引いたりしてました。この話は後付けだからなるほど君の事情はまた違うのは承知してますが、結果的に彼の御剣さんへの感情が最早信仰の拗らせとう認識に至ってしまった。

終わりに

そんな訳で、第5話単体として見るとボリュームあって面白くて好き! なんですが、御剣さんの4話→5話への上げて下げる不憫な流れ~そして失踪~の点に注目してしまうと凄く複雑で言葉にしがたい感情が渦巻く……といった感想になりました。正直ちょっと咀嚼する時間が欲しいんですが、とりあえずDS版の『2』『3』を先にクリアしようと思います。

以上、DS『逆転裁判 蘇る逆転』の感想でした。

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