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「39歳」にイム・シワン登場で伏線回収

39歳」を見ている。

愛の不時着」のソン・イェジンらがメインキャストをつとめる同ドラマ。
学生時代からの絆で結ばれたアラフォーシングル女性三人が、
不惑を前にして仕事に結婚に友情にと悩み立ち止まりながらも
これからの人生を見出していく大人の青春物語。

かと思いきや、
序盤からいきなりヘビーな現実が突きつけられる。

このドラマがすごいのは、
仮に彼女たちが直面する「現実」を知らずにのぞき見したならば
まさに前述したようなドラマとしても見られるところだ。
ところがその「現実」フィルターを一枚かませるだけで
同じ景色がまるで違った色合いに見えてくる。

フィルターありきで見るものだと思うのでネタバレのつもりはないが
一応Netflixの各話紹介でも明言は避けられているため
以降はドラマの内容に触れていることをあらかじめ記しておく。

人は生まれた瞬間から死に向かって歩き出す。
人種や性別にかかわらず、何歳であろうと、
誰もに等しく与えられた運命だ。
その意味で私たちは常に余命を生きている。

余命もの自体はジャンルとしては珍しくない。
だが40歳目前という年齢設定が思いのほか生々しい。
まだまだこれからといえばこれから、
でも残りの人生で優先すべきことと手放すべきことの取捨選択は
わりとシビアに迫られる節目である。
出産のリミットがある女性ならなおさらだ。
その事実と、「死」という形で、向き合わざるを得なくなる。

同じ年月と経験を分かち合ってきた三人のうち、
一人だけに急なタイムリミットがおとずれたからこそ
自分たちの日常の地続きにある死が浮き彫りになる。
三人とも独身、つまり母親でも妻でもないことがまた目のつけどころで、
一人の女性として残された時間をどう生きるかが
じっくりと描かれるのだ。

ソン・イェジンは40歳、
余命宣告を受けたチャニョン役のチョン・ミドが39歳、
失職中のジュヒ役のキム・ジヒョンも40歳。
みんな美しく若々しいけれど
まごうことなき実年齢のキャストを揃えたところに制作陣の気概を感じる。
大人の女性が輝ける脚本に恵まれているのが羨ましい。

ちなみにこのドラマでソン・イェジンの姉を演じている
カン・マルグムが主演した映画『チャンシルさんは福が多いね』も
アラフォーシングル女性のクライシスに寄り添った傑作だ。

これまでの回では、ジュヒが劇中で見ているドラマとして
「Run On」(邦題:「それでも僕らは走り続ける」)がたびたび登場していた。
本編の映像や音声までしっかり入り込む形で使われていたので、
何かしらの匂わせは感じていたが
今週ついにその答えが明かされた。

「Run On」に主演していたイム・シワンが本人役でゲスト出演したのである。
同じJTBC系列の制作による計らいだろうか、これは嬉しいサプライズだった。

2015年に東京で行われたシワンのペンミに参戦したことがある。
アイドルグループZE:Aの一員として2010年にデビューしたシワンを見かけたのは
韓国のトークバラエティ「黄金漁場-ラジオスター」だった。
2012年2月の放送回で「演技ドル」(演技のできるアイドル)
としてゲストに招かれたシワンは、
キム・スヒョン主演のドラマ「太陽を抱く月」での美青年ぶりが話題となり
ライジングスターとして注目を集めていた頃だった。
その後2014年の初主演ドラマ「ミセン~未生~」にはまり、
現場に足を運ぶに至る。

ペンミでは、前々年にヒットしたEXOの「Growl」を
一人で踊る(バックダンサーはいたが)という
なかなかシュールなプログラムもあったが、
素人っぽいたたずまいにもかかわらず
妙に堂々としたところがあって
レタッチ不要すぎて逆に目立たないぐらい整った顔立ちと
控えめな握手の感触が記憶に残っている。

そんなシワンも33歳。
三十代とは思えない童顔だが
兵役を経て除隊後も順調に俳優としてのキャリアを重ね、
いまや大先輩と肩を並べ
カンヌ招待作品にも名を連ねるようになった。
今回も出演時間こそわずかだったが
とてもいいシーンだった。

いよいよ終盤に近づいた「39歳」。
わかっていても確実にやって来る最終回を
どのようにむかえようか
心の準備ができかねている。

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