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ランジャタイの反復芸は歌舞伎の大見栄だ説

やってくれました。
ランジャタイがまた。

3月17日に放送された「ダウンタウンDX」の地下芸人特集です。

序盤こそわりとおとなしめに見えたランジャタイでしたが
そのまま何事もなく終わるはずがなかったのです。

事件は後半になって起きました。
先だってオズワルド伊藤が発表した「もとアメリカンB.Bチキンの杉本」
にまつわるエピソードトーク。
それからしばらくが経ち、その話も忘れかけていた頃。
別のトークテーマで浜ちゃんに話をふられた国崎はおもむろに
「被りますけど……」と切り出した。

ランジャタイの芸風を知る人なら早くもフラグが見えるところですが、
ちょっとした時間差とテーマをまたいでいたこともあり
咄嗟に「えっ!?」と反応したオズワルド伊藤の面食らったようなリアクションや、
国崎が喋り始めてからも成り行きを見守りつつ
状況を見極めようとしていたモグライダー芝の様子からして、
彼らですらその時点ではまだ疑っていたと思います。

まさか、本当にやるつもりなのか? ここで??? と。

ダウンタウンの二人も戸惑いながら
誰かに何かを求めるような素振りが見て取れました。

そうしている間にも国崎はトークを進めます。
今のところ、話の内容は、さっきのオズワルド伊藤のコピペです。
同じ話を(他人のパクリ)、これといった理由もなく(確信犯的に)、
一回の収録で二回もするなんて前代未聞。
しかしこの事態をいかに収集すべきか、免疫も正解もゴールもないので、
誰も止めることができません。
その結果、そもそもオズワルド伊藤のオリジナルエピソード自体が
かなりの長尺だったにもかかわらず、
ついに国崎は二周目を最後まで完走しまったのです。

この段階になるとダウンタウンもさすがに理解していて
「お前根性バリバリか!」という松ちゃんのツッコミで
最終的には綺麗に着地しました。

ほっとすることなかれ、勝負はここからです。
ランジャタイにとってひとこすりなど助走に過ぎません。
彼らにダウンタウンがらみの持ちネタを披露させるべく
ぺこぱ松陰寺が回したパスを受け取った国崎は、
あろうことかそのボールをシュートする前に
あの「杉本君の話」をもう一ターン、
フェイクかと思いきやフルで繰り返したのです。
(国ちゃん的にはここで終わらせる可能性も大いにあったと思う)

映像のバグでも放送事故でもありません。
それどころか、持ちネタをしっかりお披露目した後、
あまつさえ四周目を回ろうとする仄めかしをフリにして
ダウンタウンに二人がかりで落とさせることに成功し、
番組の締めを飾ったのです。

地上波民放プライム帯、大先輩の前でも、
ランジャタイが誇る反復の精神は少しもブレていませんでした。

「ダウンタウンDX」は生放送ではありませんから、
このくだりを編集で全カットするという選択肢もあったでしょう。
ですが結果的に、オズワルド伊藤の一周目を含め、
約一時間の放送でまったく同じ話が都合三回すべてオンエアされていました。
むしろオズワルド伊藤の一周目は、
その後の国崎の二周目三周目を生かすために
まるまる残されたと言ってもよい。

こんなのはこれまでのテレビバラエティの方法論では
あり得なかったはずです。
それは歴史が変わった瞬間でした。
何より最高に面白かった。

何が起こるかはもうわかっていたのです。
話の内容にバリエーションがないことも。
なのに国崎のリピートを待ってしまっている自分がいました。
そしてオンエア後、さらに録画を見返している。
これはもはや伝統芸能か「水戸黄門」の世界です。
歌舞伎役者が大見栄を切る、
黄門様が「この印籠が目に入らぬか!」と言い放つ、
あのお約束を何度でも楽しむように。

実は国崎はこれ以外にも、
隙あらば反復芸をねじ込もうとする場面が見受けられたのですが
それをモグライダー芝のツッコミによって制されるところまで含めて
一連が伏線だったようにも見えるのです。

先日ぺこぱ松陰寺が予言した
「(ランジャタイがテレビに)出続けていたら、テレビが変わるぜ」という言葉が
いよいよ実証され始めました。

さらにここで際立つのが国崎のトーク力です。
基本的には同じ話を繰り返しているのですが、
そのつど絶妙にエディット・短縮したバージョンにマイナーチェンジして
聞いている側がしびれを切らすギリギリのラインをねらってきている。

かねてからランジャタイのトークの強さには定評がありましたが
彼らの複雑奇天烈な漫才の世界観を
体の動きと口音のみで伝えきる国崎の表現力は
エピソードトークをまとめるスキルにも着実に通じています。

さて、前述したダウンタウンがらみの持ちネタでは、
国崎が超特大サイズの浜ちゃん仮面を頭に装着した上から
棒付きの松ちゃん仮面を当てたり外したりして
例の「松ちゃん浜ちゃん〜、松ちゃん浜ちゃん〜♪」をやっていました。

この小道具の仮面ですが(いまや大道具になりつつある)、
もともとウッチャンナンチャンをネタにした漫才で登場したときは
もっと小さくて体もついた人形劇のような全身バージョンでした。
でも最近は顔だけに特化した仮面になっていて、
しかもどんどん巨大化しています。
おそらくですが、これはテレビに出るようになったからで、
テレビ画面のサイズに合わせてより映えるように改良した
進化形態だと考えられます。

通常営業のしつこさで反復芸をやり切った国崎を              「こいつ以外全員後で集合!」と見事に裁いた浜ちゃんの一言にかぶせて、
「一番根性あるのはこっちじゃない!?」と
国崎の暴走を許す相方の伊藤ちゃんにもしっかり光を当てた
モグライダー芝のファインプレーはさすがでした。

ちなみにこの回ではチャンス大城のトークの腕も光っていました。
地下芸人の即戦力、恐るべし。

ところで今回の国崎さんの髪型、ヘアメイクがついたのか、
前髪を横になでつける感じでブルース・リーみが増していました。
※伊藤さんはかつらです

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