食事と人への感謝を忘れるな、わたしとの約束だ。

待っていれば食事が出てくる。そんなのは親に育ててもらっている間までだろう。

誰しも大人になれば、食材を買い作るか、誰かが作ってくれた食事を手間賃上乗せでお金を出し頂くものだ。

食べるに到達するまでの大変さ、苦労は、想像力に乏しくとも分かることではないだろうか。

母子家庭で育ったわたし。

母が働く合間を縫って、夏休み中の昼食や日々の夕飯を用意してくれていた中、それでも用意が難しい日もあった。

もう小学校中学年だったわたしは、炊事を請け負うことも多々あって、わたしが作った料理を母と妹が食べてくれる機会は多かった。

料理やお菓子作りが好きだった母の部屋には、レシピ本がたくさんあった。

小学生のうちは、カレーライスなど簡単なものだったが、中学生になるとそういったレシピ本に載っている料理を試したくて色々作った。

その度に母と妹は絶賛してくれた。

うまくいった日は得意げなわたし。

うまくいかなかった日は納得いかない顔で食べていると、

「なにがだめなの？美味しいのに」

と妹。

家のフライパンがあまりいいものじゃなくて、炒めたチャーハンが片端からこびり付いてしまいボロボロだった。

わたしはもっと、レシピ本の写真みたいにパラパラしたのを期待して作ったのに……。

「美味しいからまた作って！」

「うん……ありがとう！」

ま、そうだよな、味は変わんないし次またやればいい、とわたしも残りのチャーハンをかき込む、なんて日があった。(フライパンは変わらないので結局また失敗するんだけど)

わたしはレシピ本通りに味付けして出してるだけだったけど、ふたりが「姉ちゃんのつくる料理がうまい」といって食べてくれるものだから、自信がついて色々作ったんだっけ。

妹が食べれないピーマンも、ナシゴレンにして出せば「ピーマン無しのほうが味気ない」と言って完食してくれた。

キノコも絶対食べなかったけど、わたしが個人的に食べる分をバター醤油で炒めてたら、「食べてみたい」と口に入れていた。(バター醤油、強すぎる)

母がつくる料理も私たち娘の大好物。

コロッケや春巻きは母が作るとずんぐり大きいものになる。

これがわたしには再現不可能で、母の作ったものがどうしても食べたくなる。

そんなふたりと離れて暮らすようになり、今までのような反応は普通でなかったことを思い知ることになる。

自信が削れていった。

普通のことじゃなかった。料理を出すことも、反応があることも。

うちが特殊なんだ……と思い過ごしていた時に、ふと思い出したのが「きのう何食べた？」というコミックに登場する「矢吹ケンジ」。

彼は、同居してる「シロさん」が作った料理をとにかく美味しそうに食べる。

これまでのことが蘇ってきて、見つめた地面が歪んだ。

こっちが普通にならなきゃ、あんまりだよな。

ふたりだったらどう食べてくれただろうなんて、考えてはいけないと感情に蓋をした。

その昔、外食して会計をする時に、父が店員さんに

「美味しかった！ごちそうさん！」

と言って出るのがちょっと恥ずかしかった。(結構声がデカかったからかもしれないけど)

それも今思えば、めっちゃいいことしてんじゃんと思う。(母にも言ってただろうな……言っててくれ頼むから)

食事、料理に対する感謝の向かう「先」は想像しているよりずっと多い。

だからせめて、伝えられる一番近い人には、少々デカいくらいの声で、少々オーバーくらいな表現で感謝したいよ。

そんな家庭に居たので、わたしもよく「うまそうに食べるね」と言われることもあるけど、

表現が苦手な人だっている。そんなオーバーリアクションとかいらないから「ありがとう」でいいとわたしは思う。

伝え方も、直接が照れくさいなら、手紙だって、レビューだって、今はいろんな表現の場が用意されてる。

家庭や、飲食を生業といている人たちの何よりの「やった甲斐」は、わたしたちの「美味しかった、ありがとう」なんだよ。これは絶対だ。

わたしはひとり暮らしだけど、自分が用意した食事にも必ず感想を言う。(ほぼ「天才だな…」とかワンパターンだけど)

誰がやったから言わなくて良いとかない。今回たまたまテーマが食だけどこんなの全部に言えることだ。

食べることは毎日することだし、疲れちゃったり悩んだりする機会が多い気がしてる。

レシピも今は調べれば簡単にできるよう、研究家が考えを凝らしてくれたものもある。

感謝しだしたら、しきれないほどだけど、せめて目の前にいる人にはこれからも伝えたいな。

家に帰ったら食事が出てくるのが当たり前と思ってるひと！！！

外食は金払ってるんだから提供されるのが当たり前と思ってるそこの！！！(ヒドイ)

まーーーーーじで当たり前なんかじゃないので、今日からでいい、「美味しい、ありがとう」をどうにか伝えてくれよな！！！！！！！！

わたしとの約束だ！！！！！！！