2020年5月の備忘録、読んだ本など

ゴールデンウィーク中は昼頃に起きて明け方に寝る、というのが常態化していたうえにぜんぜん外に出なかったり、それ以降も毎日のように各種さまざまな情報がわっと入ってきたせいか、今年の5月はあまり記憶がない。

加齢による時間感覚の変容により、先週だと思っていたことが実は3ヶ月前だったり、3ヶ月前だと思っていたことが実は2年前だったり、去年の11月だと思っていたことが2年前の11月だったりするのも珍しくなくなってきたのですが、今年の5月のことをあとあと振り返ったときに「《無》ですぞ」となったりしたら嫌なので、書き記しておこうかなと思い、noteを始めたのでした。


ゴールデンウィーク中は夕方や夜に散歩に出かけた。
それまでは外に出るたびに人の多さにやたら緊張したり、帰宅したあともその緊張感が解けずピリピリとした気分が持続したりと、軽いノイローゼのような感じだった。
さいわい、夜になると人はめっきり減り、お店もだいたい閉まっているため、夜9時10時なのに深夜2時のような人通りの少なさと静かさで、これが精神に良く作用したように思える。(お店を閉めざるを得ない飲食店からしてみたら死活問題だし何言ってんだという話ではあるんですが……)
夜道を歩いたり、人がいもしない湾岸地帯を歩いたり、ぜんぜん人のいない夜のスーパーマーケットのなかを徘徊したりと、フィールドを実際に歩くことによって実世界との距離感を取り戻した感じがあった。
保護された野生動物を群れに帰す前に、きぐるみを着た飼育員やぬいぐるみで徐々に慣れさせるような、あんな感じ。
散歩は健康に効く。

あとは友人たちとDiscordで会話をしたり、同じ友人たちとやっているサークルのオンライン読書会をやったりした。毎回楽しいです。

以下、読んだ本など。


読んだ本


舞城王太郎『九十九十九』
読書会のために再読。読んだのは約4年ぶり、2度目。
膨大なまでの見立てに、よくここまでやるなあと改めて思った。
そして、本作で描ききれなかった(ある意味答えを保留した)ものごとは、のちの『ディスコ探偵水曜日』やアニメ『ID: INVADED』(特に第10話の電話のくだり!)に確実につながっているんだなあ、と。
……しかしまあなんというか、やっぱりこの作品に関しては何をどこから語ればいいのか、どう感想を述べればいいのかいつも迷ってしまう。


舞城王太郎『淵の王』

各話主人公の守護霊的な存在から語られる二人称小説。二人称だけれどいつもどおりぐいぐい読ませる推進力があって、あっという間に読み終えてしまった。
ホラーだし舞城作品らしくイヤな“悪意”が描かれているけれど、それと同じくらい“善”も描かれていて良かった。第3話の主人公・中村悟堂の、どこかぼんやりした正義感をきっちり最後まで貫く、でも他の人からしたらヤバい人にしか見えないヒーローっぷりが良かった(「ID」の鳴瓢っぽくもある)。
かなり雑な例えになってしまうけれど、スタンドの視点から語られる、スタンド使いとスタンドの話だと思う。
舞城作品は「えっそこであの要素そうやって拾うの!?」「あれ伏線だったの!?」と驚くことがあるし、ギョッとする話がスラスラっと語られたりするけれど、第2話に関してはベストなタイミングで不穏な台詞や描写が何気なくポイと放り込まれるので、こういうのがやっぱり上手いなあと思った。
(個人的には第2話の主人公が一番好きです)

舞城熱が高まったので『ディスコ探偵水曜日』と『ジョージ・ジョースター』も読み直そうとしたものの、流石に分量が多いので今度にした。


江戸川乱歩『江戸川乱歩短篇集』(編・千葉俊二)
実ははじめてまともに乱歩を読んだ。読書会で選定されなかったら読まなかったかもと思う。高校生時代から20代のはじめまで大槻ケンヂや筋肉少女帯をよく聞いていた自分が、曲のモチーフになっていたりオーケンのエッセイでも時たま言及されていた乱歩を今の今まで読んでなかったのは我ながら不思議。
江戸川乱歩というと幻想的なものや猟奇的なもの、つまりエログロナンセンス的なもののパイオニアというイメージがからか、勝手に「衒学的な文章とねちっこい描写をやる人なんだろうか。創元社から出てる『ラヴクラフト全集』なみに読みにくかったりするのかなあ」というイメージを持っていたのですが、そんなことはなかった。
むしろ、今読んでも読みやすい文体に話の面白さ、先行する推理小説に作品内で言及しちゃう「こういうの好きなんすよ……」という感じ、「人間椅子」などに顕著なにじみ出る隠しきれないフェチズム、それに締め切りや体調不良が原因でこうなってしまいましたと附記で読者にお詫びしてしまう正直さなど、かなり親しみやすく良かった。
乱歩を読んだことのない自分でも、乱歩という作家の作風の広さと人となりがよくわかる良い短編集だった。


南條竹則『ギョウザとわたし: 餃子和我』
以前友人から勧められて読んだ。餃子にまつわるエッセイ。
筆者の幼少期から現在に至るまでのギョウザにまつわる思い出、あの店が良かった、ここではあんな酒を飲んだといった話もあれば、餃子がなぜ「ギョウザ」という読み方をするようになったのかの仮説もあり、読んでるあいだも読み終えたあとも餃子のことしか考えられなくなってしまった。
後半にある、ある仲居さんのお話も面白かった。
これ読んで神保町のスヰートポーヅのことを知ったのですが、閉店とのことで悲しい。


読んだマンガ(抜粋)


筒井秀行『書道教室』
友人から勧められて読んだ。とある書道教室を舞台にした群像劇。
線の描き方、コマ割りなどマンガ表現もお話自体ものびのびとしていて、とても面白かった。


『バットマン・メタル』

プロローグである「プレリュード」、本編、「ライジング」を一気に読んだ。
ダーク・マルチバースから襲来する闇堕ちバットマンたちの、まさしくメタルっぽいデザインがかっこいい。

画像1

ジョーカー化したバットマン〈バットマン・フー・ラフズ)のヴィランっぷりと、複雑ながらもエンタメ性に富んだ話で面白かった。
(とはいえ、分量と情報量がとても多いのであまり上手く飲み込めてない部分もありますが……)
ちなみに「メタル」という名前の通り、メタルのイメージソングが作られていたりする。



遊んだゲーム

『XCOM: Enemy Unknown』
パワーでなんとかしたがるタイプの人間なのであまりシミュレーションゲームはやらないのですが、なんとなくやりたくなって手を出したらドハマリしてしまった。
内容としては兵士を指揮して侵略宇宙人と戦うシミュレーション。位置取りだけじゃなく、遮蔽物に兵士が隠れているかもかなり重要で、難易度が容赦ないので手塩にかけて育成した兵士も当たりどころが悪ければ戦死してしまう(文字通り戦死なので復活しない)。しかも敵エイリアンに対抗するために施設を新しく建設したり武器や防具を研究・開発したり、衛星を打ち上げてUFOを監視したり連盟国のパニック度を調整したりしないといけないので、常にジリ貧。でも楽しい。「あと1ターン」を繰り返してしまう中毒性があった。ゴールデンウィークはだいたいこれで潰れた。
2012年に発売された本作以降、本作をオマージュ・リスペクトしたフォロワー作品が生まれたのも納得できるゲームだった。本作をやる前にフォロワー作品のひとつである『マリオ+ラビッツ』をやったのですが、そちらも良かったです。


あとは見た映画とかも書こうかなと思ったのですが、軽い雑記にするつもりが長文になったり、わかりやすいようにアマゾンリンクでも貼っておくかとやったり、改行の調整ってこれでいいのかとやっていたら、思いのほかガッツリとしたコンテンツっぽいものになってしまったので、ここまでにします。この雑記を書き始めたのは5月27日なのですが、気がついたら6月20日になってました。こわい。

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