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俳句

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2021年6月の記事一覧

俳句 泉

「いくつもの伝説まとい泉湧く」

案内人が「この辺りには、平家落人の

伝説が有りまして・・・」こう話

始めたので、思わず頬が緩みました。

と言うのも平家落人・武田家家臣の

落ち延びた伝承は、良く聞く話です。

どうも関東地区では、およそこの二つの

伝説が沢山流布しています。

小さい泉ながら、滾々と水が盛り上がる

様に湧いていました。

俳句 園芸

「梅雨晴れに小さき苗を動かして」

黄金週間に蒔いた種から、次々と芽が

出て来ました。まづ朝顔を、フェンスの

所へ・・次はコレを小さい鉢になどと

頭の中には浮かびます。

毎年何でも蒔き過ぎ・育て過ぎと、兄には

からかわれます。心を鬼にして、少し間引きました。

残った苗が一日も早く、大きく育つように

祈っています。

俳句 裏庭で

「十薬の咲けば秘密の現われて」

少し薄暗い裏庭に、一面の十薬草。

白の十字型の花が、溢れんばかりです。

不気味な美しさに、不安な気持ちさえ

生じました。

心の奥底にしまい込んでいた事が、

浮かんで来そうな夕暮れでした。

俳句 扇

俳句 扇

「琳派風友の扇の見事なる」

さっと開いた扇から、燕子花が

こぼれ落ちました。所々に小さな

橋も見えるので、八つ橋の図柄でしょう。

「まあ風を送っては、もったいない様」

思わずつぶやいてしまいました。

流石京都人、見事な扇を羨ましく見つめ

ました。

俳句 昼が長く

「短夜の月と離れる雲の色」

年と共に早起きとなり、現在は

ほぼ5時に目覚めます。

西の空には未だ月が見えました。

周りに少し雲を従えています。

白い月と薄い灰色の組み合わせが、

何とも言えぬ美しさです。

思わず月に向かって、合掌しました。

俳句 鎌倉幕府

「万緑の二三騎走る鎌倉へ」

早馬が鎌倉へ向かって走ります。

さて吉凶どちらの知らせでしょうか?

都からの使者となれば、侍達は落ち着きません。

将軍実朝は今日も歌会とか・・・母政子はそんな

様子が、歯がゆくてなりません。

人々が集まり出しました。この後の大きな

政変には、未だ誰も気づいていない様でした。

俳句 恋は

「消えゆくは惜しき夕虹若き恋」

{あっもう消えちゃった}冷蔵庫へ飲み物を

取りに行った、わずかな時間でした。

{あ~私の恋もこうだった}大袈裟に嘆くと、

その場にいた悪友が{オマエ気が多過ぎ。

消えたのは恋じゃなく、片思いだけ}見事に

切り返されました。

{ほらコーラ飲んで}照れ隠しに、慌てて飲み物を

勧めました。

俳句 青年

「青年の膝堅きまま夏座敷」

葭簀の襖に、籐の表が敷き詰められた

和室。思わず、きちんと坐りなおしました。

背筋を伸ばし緊張していると、お手伝い

さんが、麦茶を運んで来ました。

「旦那様は、直ぐお出でですから」この声に

少しホッとしました。

デパート美術部勤務の私は、初めて夏の

室礼を経験したのでした。

俳句 思い出の

「ハンカチの刺繍確かな頭文字」

たんすの引き出しから、母の古いハンカチ

が出て来ました。

「誕生日にイニシャル入りのハンカチを

もらった」と聞いた事が有りました。

まさしくこれがその品物でしょう。

U・Oと洒落た飾り文字です。手に取ると

一挙に、父と母の思い出が迫って来ます。

涙を拳で拭い、再びハンカチを仕舞いました。

俳句 夏の盛り

「関東平野夏雲どこへ隠したか」

中心部からは、山が遠い関東平野です。

ふと夏雲は、どこから来るのだろう?

と考えました。

友人は「雲は水蒸気だから、海からでしょ」

断定しました。私は日本海方面から山を

越えて来るのでは、と考えています。

いづれにしても、雲が隠れる山は近くには

見当たりません。

俳句 ひとりで

「七色の冷やし中華よ独りの夜」

馴染みの中華料理店、「さて今日は何を

食べようか」迷っていると・・・

{冷やし中華始めました}のビラが!

そうだこれにしようと、決めました。

独りの夕飯が、明るく成る様な彩りでした。

デザートに杏仁豆腐も頂きました。

俳句 噴水

「噴水は弾む心の高さかも」

大好きな人と公園に居ました。

不意に噴水の水が上がり、景色を

一変させました。普段何気なく

見ていたのに、今日はやけに高く迄

上がった気がしました。

「あっこれって・・・」ふとそう思い、

笑顔になりました。

俳句 茶席の菓子

「四畳半 薄暗きまま 葛の菓子」

うっそうと茂った庭の中の、茶室です。

気持ちの良い暗さで、落ち着きます。

染付の器に、葛菓子が供されました。

「まあ器まで冷えていて、お心入れですね」

こう褒めると「やかましい大川君に出すの

だからね~」との返答でした。

席中に笑いが起こり、一層和やかな気分と

なりました。

俳句 雨季

「雨傘を 選びバスにも 乗り遅れ」

さて今日の天気では、折り畳みの傘では無理だろうか?

かといって長い傘は、邪魔だし・・・

今朝の服装に会う色は、どれだろうか?

迷いに迷って、バスに乗り遅れました。早めに出た

筈なのに、雨で道も混んでいそうで遅刻しそうです。