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俳句

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2021年5月の記事一覧

俳句 恩師

「花つつじ白シャツの師は懐かしく」

存外真面目で成績も良かった私は

「先生のペット」と陰口を叩かれていました。

しかし人気者の私は、ファンも多くそんな

噂は気にもかけませんでした。

高校二年生、古文の先生が担任となりました。

素晴らしい先生で、のちに大学の教授と

なられました。平安後期文学が専門でした。

腕まくりした先生が「大川君、この歌の下の

句を言ってごらんなさい」と今でも聞

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俳句 散歩

「薔薇垣を選んで歩く散歩道」

次の角を右に曲がると、白いバラが。

さらに先へ進むと、オレンジのバラ。

頭の中のバラ地図に従い、歩いて行きます。

この時季は散歩の道筋に、うれしい迷いが

生じます。

夫々のお宅の日頃の御手入れ・ご苦労・を

思いながら、バラ垣に沿って歩く幸せ!

俳句 そ・う・び

俳句 そ・う・び

「寄せる思い余りに多きバラの花」

世の人々に愛されるバラの花。色も姿も

多種多様です。

沢山に人の思い出にまつわる、花かも

知れません。中学の三年間、バラを夢中で

育てました。虫にも病気にも弱く、肥料を

欲しがる・まったく手の掛かる植物でした。

それ故なおさら、咲けばうれしくて!

俳句 卯の花

「三更の白も怪しき花空木」

三更とは、今で言えば深夜23から25時。

旧子の刻です。

深夜の深い闇に浮かんだ、白い花。「あっ」

思わず声を出すほど、不気味な美しさでした。

花空木{卯の花}は、一塊で咲くので、より

大きな白い影となります。

俳句 若者

「若者のくるぶし見えて夏の風」

気温は真夏日に近いでしょうか?

目の前を過ぎる若者は、元気よく速足で

歩いています。時折パンツの裾から見える

くるぶしまで、輝いています。

綺麗な色のスニーカーに、良く映ります。

若いと言う事は、何もかも美しいのですね。

俳句 夏の日に

「初夏の学生の腕未だ白き」

いち早く学生服を脱いで、半袖シャツに

なりました。まだ腕も白く、不安げな

表情と感じました。

四月に入学したばかりの、子でしょうか?

腕の白さが消える頃、待望の夏休みです。

この夏、若者は少し大人に近づくかも

知れません。

俳句 京都

「単衣着て軽ろき足取り京畳」

関東から京都へ勉強に行き、畳の

大きさに戸惑いました。U流は一畳を

四歩で歩きます。

しかし関東間{京の人には、田舎間と言われた}

での稽古に慣れた体です。やや大股で歩かないと、

縁を越えられません。それでも着る物が単衣に

なると、裾捌きは楽になりました。

暑がりの私は、季節でなく気温で着る物を

決めていました。25度近い日は、断然単衣ですよ!

俳句 お庭は

「どこまでが垣根か庭の花躑躅」

お隣の方も、花が大好きで手入れにも

熱心なお宅です。

赤紫のつつじを、垣根になさっています。

その前に白と黄色のつつじも、植えています。

この季節はつつじに囲まれた家に、変わるの

です。ご主人曰く「つつじは手がかからなく、

良いですよ」「花持ちも長くて、色数もあるし」

自慢げに語られました。

俳句 園児

「園児らの日除け帽子は同じ色」

近所の公園へ、保育園の子供達が

遊びに来ていました。今の日除け帽子、

後ろの首部分まで覆いが付いています。

我々の子供時代は、日焼けなど気にしないで

外で遊んでいました。

少しづつ地球も気候も病んで来たのでしょう。

これからの子育ては、さぞかし苦労が多いのでは?

心配でなりません。

俳句 河岸にて

「見ゆる限りすべてひれ伏す青嵐」

東京の最北端、荒川の岸に来ました。

堤から下を見ると、岸辺の草々に強い

風が吹きつけています。

「大いなる自然に、ひれ伏す姿だね」と

言ったら、同行の友人は「オーバーな!」

笑いました。しかし石畳から下を見たら、

やはりなびくより{ひれ伏す}が相応しく

思えました。

俳句 夏の山

「夏山は縄文弥生見ていたか」

深い森を抱いた、夏の山。

太古から、そこに存在していた筈です。

{この山は縄文弥生の人々を見て来た

だろうか?}おかしな疑問を抱きました。

そんな考えも生まれる、緑の濃い夏山の

姿です。

俳句 衣替え

「古箪笥引手は銀の衣替え」

大切な和服、紋付や茶席に着る品は

伝来の古く大きな箪笥へ収納しています。

衣替えの季節なので、取り出し易い様に

上下の品を交代。単衣・薄物を上段に

しました。

ついでに銀磨きで、引手・金具も綺麗に

手入れしました。

俳句 暑さを・・

「薄暑ゆえ地下鉄に乗る一駅を」

原宿から表参道。わづかな距離なので、

いつもならウインドウを見ながら

ぶらぶら歩きます。しかし今日は

和服です。強い日差しの熱を、羽織が

吸っています。

千代田線で明治神宮前から、表参道迄

一駅乗る事に決めました。どうやら体は

正直で、ますます暑さに弱くなりました。

俳句 空を

「着替えせず虹を待たせるベランダへ」

携帯が鳴って「先生のお好きな虹が、

東の空にでています」弟子からのうれしい

報告です。

慌てて家に入り、着物姿のままベランダへ

出ました。久しぶりの大きな虹でした。

うれしくて姿が薄くなる迄、見つめました。

同じく虹が好きだった人を思い、少し

寂しくなりました。