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短歌

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2021年3月の記事一覧

連作 短歌 別れ

連作 短歌 別れ

「春を恨み 別れを嘆く 学校に

秘めたる恋の いくつかは消え」

この日が来るのが怖かったのです。

もしかして、もう二度とあの人に

会えないかも知れません。

それでも告げる勇気が無く、胸に

育てた小さな思いは消えて行きます。

うれしくない春が有るのを、知りました。

人との別れが、こんなにもつらいと

理解しました。

連作 短歌 別れ

連作 短歌 別れ

「いくつもの 別れ重ねて ようやくに

大人となるか 春の学び舎」

小・中・高・と何度もいくつも別れを

重ねて来ました。

友人と仲間と、先生と恩師と、別れる度に

心も体も大人に近づいて行くのですね。

「卒業の 乾杯は未だ ジュースのみ

若人達には明るき別れ」

まだ酒類を飲めない若者達。

でもまるでアルコールが入った様に、

全員が陽気な謝恩会。

別れの感傷に浸っているのは、

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連作 短歌 別れ

連作 短歌 別れ

「憧れは ただ憧れに 過ぎしまま

心に重く印{シルシ}を残す」

憧れを胸に秘めたまま、結して口に

しませんでした。たとえ親友にさえ、

打ち明けないで来ました。

それ故、大きく・重く・心に残ります。

何時になったら憧れは、消えて行くのでしょうか?

「進学先 決まらぬ友を 思いつつ

卒業式の 練習をする」

親友が大学受験に失敗しました。

予備校に行くか、家業に従事するか、

迷って

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某新聞 入選歌

某新聞 入選歌

「献体の 父の遺骨の 帰る日に

ようやく辛夷 一つ開きぬ」

私の父母は共に献体しました。

母の時は、比較的早く帰って来ました。

父の場合は約二年、時間を要しました。

やっと連絡が有ったのは、風の強い

早春の日でした。

遺骨引き取りの朝、庭の辛夷が一つだけ

咲いていました。毎年この花が、私に

春の到着を知らせてくれました。

「ようやく」との重い一言は、花よりも

父への思いに他な

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