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某新聞 入選歌


「献体の 父の遺骨の 帰る日に

ようやく辛夷 一つ開きぬ」


私の父母は共に献体しました。

母の時は、比較的早く帰って来ました。

父の場合は約二年、時間を要しました。

やっと連絡が有ったのは、風の強い

早春の日でした。

遺骨引き取りの朝、庭の辛夷が一つだけ

咲いていました。毎年この花が、私に

春の到着を知らせてくれました。

「ようやく」との重い一言は、花よりも

父への思いに他なりません。