神社

I have been tested

氷川神社の裏手でとても気分悪そうにしている素敵な浴衣を着た女性がいた。見るからに体調不良で辛そうだったし、夏越大祓を楽しみにきている周囲の人が手を差し伸べてあげそうな気配もなかったので、少し介抱して近くの小さな公園の水飲み場までゆっくり連れて行ってあげました。茅の輪くぐりは長蛇の列になっていたし、真夏の炎天下でずっと立ちっ放しでは、どんなにこまめに水分補給していても熱中症気味になってしまったとしてもおかしくはありません。幸い、その女性はそれほど重篤な状態ではなかったようです。ただ、それだけのことだったのですが、よくよく考えてみたら、これはもしかすると神が何を思ったかわたしのようなものを誤って早まって導いてしまった運命の出会いであったのではないかと思えてきて、また再び散歩に戻ってがんがん歩いていた川沿いの道を踵を返して逆に歩いて、約10分後ぐらいに先ほどの公園の水飲み場まで様子を見に戻ってみたのですが、もうそこにあの女性の姿はありませんでした。去り際にお教えしておいた、ゆっくり休める涼しい場所にちゃんと避難できていたのならばよいのですが。

涼しい場所で座って休めるであろう神社に併設された結婚式場の会館の位置や近くにある公園の水飲み場について説明してゆっくりと連れて行ってあげるとき、渋く綺麗な柄の浴衣でばっちり決めて神社にお参りに来ているのにもかかわらず、軽く熱中症気味で気分が悪く足元も少しフラついており頭も正常に働くなっていたということもあったのでしょうが、なぜか「お寺の方ですか?」なんてこちらに向かって尋ねてきたりしていたのがとてもトンチンカンで可愛らしくおもしろかったので、もうちょっとゆっくりお話ししてみたいななんて少し思っていたりもしたのですけれど。何だかとても残念な結果と相成ってしまいました。川沿いの道を歩きながらあれこれぐだぐだと考え込んでいたりなどしないで、さっさとまたあの場所に戻って、ちゃんと女性の体調が落ち着くまで近くで介抱してあげていればよかったのではなかったか。まったくもって後悔先に立たずである。

わたしはあの神社の神に何か人間としての出来不出来を試されていたりするのではなかろうか。そして、今回のテストは、途中まではそこそこよかったが、全体的には完全に落第点であったのかもしれない。

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