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実はこう見えてワクワクしてるんです

今月久しぶりに、あるコンサートへ行く予定がある。

しかもコンサート会場は東京だ。大都会にビビり散らかしている私は、行くのが今から少しばかり恐ろしくもある。しかし、それでもやっぱりコンサートは楽しみにしている。

コンサート経験はあまりない方だと思っている。
普通の人がどれくらい行っているのかは知らないからなんとも言えないのだけれどない方だと思う。というかコンサートのノリというのがわからず正直苦手だ。

私が生き甲斐としているミュージカルは劇場では無言が当たり前であるし、むしろ開演中の発声は御法度である。音楽に合わせて身体を左右に振ろうものなら隣の観客に睨まれかねないので、座席に深く座りただじっと前だけを見据えておればいい。時と場合によって拍手や手拍子といった手技を繰り出す。

しかし、コンサートとなると棒立ちやじっと観るでは逆に浮いてしまうのではないだろうか。このご時世になって歓声を出さなくていいというのがせめてもの救いだ。


初めて大きなコンサートに行ったのは専門学校に通っていた頃。同級生からジャニーズのコンサートのお誘いを受けた。

「もし、当たったら一緒に行かない?」

アクティブ系のお誘いは丁重にお断りしがちだが鑑賞系のお誘いは来るもの拒まずで有り難くお受けするようにしている。

無事当選したようで、私は関ジャニ∞のコンサートへ連れていってもらうことになった。その友人は関ジャニの大ファンで、色々と教えてもらった。

ちなみに関ジャニの中で誰が好き?と聞かれたので、私は村上くんと答えた。正直、当時メンバー全員を存じていたか定かではないが村上くんはよくテレビで見ていたしおもしろかった。

私は芸人さんもそうだし、芸人さんや芸能人に限らず一般の人でも、人を傷つけず笑いが取れる人に尊敬の念を抱いている。

私はオチのない関西人なので夫によく「で?」と言われる。関西人の「で?」ほど恐ろしいものはない。
話を戻そう。

ある時はジャニーズショップへ連れて行ってもらった。初めて入るお店だ。あまりの人の多さに並んで店内に入った。一面に写真が飾られていて選んで購入するシステムだったように記憶している。へぇー、知らない世界を知るっておもしろいものだなぁと興味津々に見ていた。友人がお目当ての人の写真を選び終えたので、私も記念にと村上くんの写真を購入した。

ある時はCDを手渡され、聞いて振り覚えてね!と言われた。振りを覚える...はて?という気分だったが何やらコンサートでは一緒に踊るらしい。こういうのが苦手な私は関ジャニ∞の名曲「ズッコケ男道」だけをうろ覚えして燃え尽きた。

そんなこんなで初めてのアイドルのコンサートに行く事なった。

初めて行くドーム、でっかい。
周りを見れば若い女性が多い。当時の私もハタチそこそこなので年齢的に若いは若いが何やら様子が違う。キャピキャピしているというか華やかなのだ。美しく可愛く着飾っている。当時黒い服ばかり着ていた私は一体どんな服装で行ったのか、思い出したくもない。


そしていよいよ始まった人生初のジャニーズのコンサート。今まで点いていた客電が消えると「キャー」という歓声が沸いた。電気が消えただけで歓声が上がる事に驚きつつ、こんな声は皆どこから出ているのかと疑問に思う。

私は未だかつて「キャー」などという言葉を発したことはない。ジェットコースターでも余裕があれば無言、余裕がなければ「わぁ〜」とホームアローンのマコーレカルキンの如く叫ぶ。

残りの人生で「キャー」なんて言う事があるのだろうか...。せっかく女にうまれたからには死ぬまでに1度は反射的に高い声で「キャー」と言ってみたい。と馬鹿な事を書いていると再び脱線してしまった。戻そう。

歌が始まると皆がうちわとペンライトを手にノリノリだ。私はやはりどういう感じでここにいれば良いのか分からない。理由はわかっている。うまくノレないし、うまくノレてない自分を想像すると滑稽で気持ち悪いからだ。私は視線を村上くんに多めに動かしながら友人から借りたペンライトを片手に突っ立って腕を上下に振っていた。

振り付きの楽曲が流れた時は、義務教育で習ったんですか?と言いたくなるくらい皆が同じ踊りをしている。日本国民誰もが踊れるラジオ体操のように、私の周りの人たちは同じ振りを踊っていた。一体感を感じた。私はというと踊る事など諦めてひたすらペンライトを上下に振り続けた。一体感を邪魔する女である。

目まぐるしく進むライブ、さまざまな楽曲に見たことない演出に驚きの特殊効果。私は感嘆の声を漏らした。すごい、ご本人たちのライブ自体もすごいがこの空間がすごい。

関ジャニが近くに来ようものなら、うちわの振りと歓声が増強する。そんなに叫んで歌聞こえてる?大丈夫?と思いながら、もはやアイドルたちではなくファンの人を見る私、いいよなぁ、夢中になる事があるのっていいよな。楽しそうだな君たち。私も畑は違うが夢中になるものがあるから君たちの気持ちがわかる。幸せだよな。うんうんと心の中で呟いた。

側から見たらノリに乗っておらず、楽しそうに見えない佇まいでその空間にいたかもしれないが初めての経験、目に映るものが新鮮で終始ワクワクしていた。

気づけばライブは終了し、頭上から銀テープが降り注いでいた。会場の外に出ると空は暗くなっていた。いくつもの星が瞬いている、そんな風に見えた。


今度のコンサート(ジャニーズではない)はちゃんと全身で楽しもうと思う。よくよく考えると誰も私の事なんか1ミリたりとも見ていないのだから。自意識過剰も甚だしいもんだ。




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