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コトバアソビ集

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タイトルが同音異義または響きが似た言葉の繰り返しになっている短編集。随時追加。
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記事一覧

コトバアソビ集「たなばたのたなぼた」

 折角の日曜日、わずかなバイト代欲しさに話に乗った俺がバカだった。 「すっげー蚊に刺され…

裏木戸 夕暮
2か月前
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コトバアソビ集「とうふとふとうこう」

 僕の近所には駄菓子屋さんがあって、駄菓子屋さんといっても洗剤とか日用品も売っていて、店…

裏木戸 夕暮
3か月前
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コトバアソビ集「斑猫と斑猫」

 斑猫が道標と知ったのは手塚治虫の漫画だった。手塚先生は昆虫が好きで、それでペンネームに…

裏木戸 夕暮
3か月前

コトバアソビ集「アハハの日」(副題:母の日に贈るなギフトセレクション)(掌編小説…

「ありがとうね」  笑顔が頬にひりつく。息子からのプレゼントは北欧ブランドのエプロン。 (…

裏木戸 夕暮
4か月前
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コトバアソビ集「せんせいの繊細な先妻」

「前の妻は繊細な人でね」  私の好きな人はほろ苦く笑う。  私の好き、には一切気づかない。…

裏木戸 夕暮
5か月前
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コトバアソビ集「おかしなおとなのおかしのはなし」

「では皆さん。スポンジの熱が冷めるまでの間、お茶にいたしましょう」  講師の言葉に雰囲気…

裏木戸 夕暮
11か月前
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コトバアソビ集「もぐもぐもぐもぐ」

「お腹いっぱい食べなさい」が口癖の母。 「そうだぞ、成長期なんだから」が口癖の父。  そんな両親の元で紗江子はすくすくと育った。  同居の祖父母も 「足りなかったらおじいちゃん達の分もお食べ」 とおかずを取り分け、もぐもぐと咀嚼する孫のほっぺが膨らんでいたらそれだけで寿命が伸びると言わんばかり。  紗江子は愛情をたっぷり受けて幸せだった。  豪華客船が難破して無人島に辿り着くまでは。    夏休みに父親が計画した家族旅行は <ゆったりグルメ廻遊プラン。クルーズを楽しみながら家

コトバアソビ集「はこにわにはにわのことり」

 さる屋敷の園丁に剛造という男が居た。勤めて50年。もう年寄りだ。  若い頃は大きな松の木…

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コトバアソビ集「しずくくずし」

 眠れない夜に何をなさいます?  読書ですか。よろしいですね。  羊の数を数えますか。はて…

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コトバアソビ集「凩と凧」

 久しぶりに地元に帰った裕一は、昔遊んだ河原へ来ていた。  草が繁る斜面を段ボールで滑っ…

コトバアソビ集「ご大層な誤配送」(原作:作者不詳『とりかへばや物語』)

 山田真琴は自分のことが好きではない。  地味な外見と地味な性格と、並程度の頭と不器用さ…

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コトバアソビ集「似非エッセイ」

「エッセイ?」 「これ位のスペースなんですけど」  訪ねてきた女性がテーブルに記事を広げる…

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コトバアソビ集「このこはこのこ」

 息子から届いた段ボールを見て、老母はため息をついた。 「・・有難いんだけどね・・」  ポ…

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コトバアソビ集「こゝろはここ」(原作:夏目漱石『こゝろ』)

「行ってきまー、あっ体操服忘れたー!」 「おかーさーん、ごめん今日友達と学食行くんだった。お弁当置いてくね」 「えー?折角作ったのに。早く言ってよ」 「俺ももう出る。今日は飲み会で遅いからな」 「分かった。夕飯はいらないね」 「食べられないかも知れないから用意しておいてくれ。簡単なものでいい」 (簡単って言っても、お茶漬けだと怒るのよね) 「分かった」  小学生と高校生の子どもに、会社員の夫。  三人を見送った後、静香はパートへ向かう支度をする。毎朝が戦争だ。 「お弁当が余分