アサラト記譜法論まとめ

先日、自身のTwitterにて少し書いたアサラトの記譜法について考えをまとめ、ここに残しておこうと思う。

記譜法を制定する理由とその必要性

まずは何故アサラトの記譜法を定めようと思ったかであるが、大きな理由の一つとして、他の楽器との共通言語を持たせる為に必要だと感じたからである。

アサラトという楽器はその成り立ちから見ても、楽器と玩具(スキルトイ)の狭間にある存在と言えるだろう。
もちろんその認識も間違いではないが、私の個人的希望としてはピアノやヴァイオリン等の西洋楽器と同じ、れっきとした楽器として扱ってほしい(そうあるべきだ)と強く思っている。
ただの玩具として扱われることはなんというか、とてももったいないことではないだろうか。

もっと楽器としての可能性を広げることが出来れば、様々なジャンルの音楽で活躍させることも出来るだろうし、いずれはオーケストラの中で演奏されるようなこともあるかもしれない。
それ程までに楽器としてのポテンシャルを私はアサラトに感じている。

いつの日か、もしも“アサラト協奏曲”が書かれたときに作曲者や指揮者が困ってしまわないように。
アサラトの楽器としての地位の確立。そこから先の進化と発展。その礎となるのが音符を用いた記譜法の標準化であると考えている。


実用的な記譜の方法案

では実際にどの様に楽譜上に音を記していくかというところだが、シンプルな楽器ゆえの悩みどころがいくつか見つかった。

アサラトの発する音としては、球同士がぶつかって生じるアタック音と、球の中に入れた粒から生まれるシェイク音、大きく分けてこの二種類しかない。
しかし、アサラトの演奏には特有のテクニックが数多く存在し、どの奏法で鳴らしたアタック音なのかを一つ一つ分けて記載するとなると相当な労力を要することとなる。
加えて、楽器の特性として不随意的にシェイク音が鳴り続けるという点も少し厄介である。
仮にシェイク音を全て記譜するとなると、楽譜の全てが16分音符で埋めつくされることとなり、非常に視認性の悪い譜面となってしまう。

音符数が多すぎてあまりにも煩雑である。

さらに奏法別に音符を書き分けるという方法についても、そうするメリットよりもデメリットの方が上回るのではないかと思う。
具体的なデメリットとして、複雑化することによってシェイク音の件と同じく視認性が下がってしまうことや、
どのテクニックを用いたとしてもほとんど音高差がつかないので、高低で音符を書き分けたときに直感的に認識し難いといったものが挙げられる。

適度に音符が散らばり見栄えは幾分良くなったが、譜面上の音高と
実際の音高がリンクしないため、むしろ混乱を招く。

これらを踏まえた上で考えた結果、全ての要素を書き表すことを一旦放棄し、ある程度簡略化して記譜することが望ましいという結論に至った。
“ある程度”とはどこまでのことを指すのか?という話になるが、一般の聴衆が音を聴いただけで判別出来るラインが適当かと考える。

熟練のアサラトプレイヤーはクリックした時のアタック音とエアターンの時に出るアタック音とを判別することができるが、そうでない多くの人々にはどちらも同じ「カチッ」という音としか認識することが出来ない。
シェイク音に関しては、例えばフリップフロップの間に流れるシェイク音は音楽的に重要だと考えるので記譜するが、エアターンのアタック音の裏に入るシェイク音は副次的なものとして記譜しない、といったように各々に重みを付け採譜するか否かを決めるようにする。

そうして必要十分な要素のみを抽出し、書き起こすと実にシンプルな譜面が出来上がる。
この方法なら五線譜は必要なく、多くの打楽器と同じように一線譜に記すことが可能である。
実際に自分以外のプレイヤーに使用してもらい、改良を重ねる必要は多分にあるが、ひとまずこの手法をプロトタイプとして自分の中の完成形としたい。

音楽的に必要な音を残し、簡略化した譜面。
片手ずつ別々に記譜することで、左右の音を出すタイミング
の違いやフレーズの隙間等が一目でわかるようになった。


楽譜を活用する上で配慮すべき点

念のため、この方法で作成した楽譜を用いるにあたっての注意点についても言及しておく。

序文にも書いた通り、この記譜法はどちらかというとアサラト以外の楽器演奏者や作編曲者に向けて制定したものであり、
実際にライブやレコーディングでアサラトを演奏する場面や、初心者に対してのレッスンの現場等で使うには不向きであるという点に留意すべきである。

あくまで他の打楽器等との互換性や共通言語を持たせるために使うもの、という認識を忘れずに使用するのが適当だと思われる。
それでも、どうしても演奏やレッスンの場で使用したいと考えるのであれば、記譜する際に省略した要素を文字や記号で再び書き足し、補足することで少しは使いやすくなるかもしれない。


謝辞

最後に、アサラトの記譜法についてお困りの全ての音楽家の皆様へ。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。
拙い文章で読みづらいかとは思いますが、私の考えが少しでもあなたの音楽の役に立つことを願っています。

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